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『よろしい、お姉さんに任せなさい(*゜▽゜*)』

「それよりもさー、見てくれよこれ」

麗奈に見えるように、軟弱になった手を前に伸ばすと、麗奈がぷにぷにと二の腕を揉む。


『完全に女の子だね(*´Д`*)私がセットした髪型も合わせて可愛いよ(//∇//)』

そう言う答えを求めているわけじゃねえよ。

元々筋肉量が多い訳では無いが、怪我する前は触るとわかる筋肉が確かに付いていた。細マッチョだったはず。

それが見るも無惨に、ぷにぷにになってしまった、俺は悲しいのだ。


髪型は、毎朝麗奈がご機嫌にアレンジして遊んでいるのでそのままにしている。

今日はサイド編み込みアレンジなる物を施された。


ちなみに麗奈も自分で同じ物をこさえている。姉妹お揃いヘアアレンジだそうだ。俺は男だから妹では無い。


「可愛いよりカッコいいになりたいんだけどな」


『君は可愛いでいいんだよ〜(´∀`)真面目な時は凄くカッコよくなるんだから』


ほっそりとした自分の手足を見つめる。

「でもさ、こんなんじゃ何があった時……守れないだろ」


何も起こらない、事が一番だ、むしろ何も起こらないのが普通。

けれども自分たち自身が複雑な家庭環境なので何も無いとは限らない。それに俺は問題ごとに首を突っ込んでしまう性格なので、戦闘力の下がりすぎも困る。


まあ、葉月姉ちゃんと習って居た武術は、女性でも使える、柔拳よりの武術だったので、技術に関しては問題無い。

それでも決定打にかける。やっぱ少しは筋力をつけるか。


『琥珀がいるよ?(*´◒`*)』


「琥珀さんもいつでも来れるとは限らないだろ。それになんつうか……家族は俺が守りたい」


『ふふっ、照れてる!可愛い!』

「うるせえよ、とにかく、先ずは松葉杖無しで歩けるように特訓だな」


『お姉さんにできる事があったら言ってね。協力する』

「おう、ありがとうな」

手慣れた手つきで麗奈の頭を撫でる。麗奈も俺の肩に頭をコトンと傾け、受け入れる。


「いちゃついてる春日さーん!お会計ですよー」

ここが病院で、噂好きの会計さんが居る事を忘れていた……。

気まずくなった俺は、居た堪れない空気に包まれたまま、そそくさと会計を終わらせて外に出るのであった。




「恥ずかしいー!今日が最後でよかった!」

リハビリに来るように言われたが、断固として自宅でリハビリをすると言って出てきた。

なので松葉杖を返しに行くのを除いては今日が最後だ。


病院前のロータリーのベンチで買い物の為病院を離れている姉ちゃんと涼夏が来るのを待たなくては行けないのだが、今更になって急いで出てきた事を後悔する。


季節は春から夏へと移り変わる6月ごろ、そこまででは無いが空から突き刺さる太陽の光がじんわりと汗を掻くくらいには暑い。

隣に腰掛けた麗奈は日除けの帽子を被っているので強い日差しを物ともせず涼しい顔をしている。


「暑いな……何か飲むか?」

『暑いねー、私が買ってくるよ。何がいい?』

まだ歩けないのでありがたい。自分の財布を麗奈に渡し、遠目に自販機を凝視する。

これだけ暑いと、炭酸系がいいな。

でも糖分を摂取しようとすると、体型維持に厳しい麗奈がうるさい。


「お茶にしようかな。麗奈も好きなの買って」


コクリと頷いて自販機へと歩いて行った。


まずは自販機で俺のお茶を買い、自分の飲みたい物を悩んでいるのだろう、指が行ったり来たりしている。

ボケーっと麗奈の後ろ姿を眺めていると、俺の目の前を1人の女子高生がドタバタと駆け抜けて行った。部活帰りだろうか、制服を見るに同じ高校だ。


通過する瞬間、パタン……と何かが落ちる音がしたので、地面に目を向けてみると、生徒手帳が落ちている。


「おーい!生徒手帳落としたぞー!」

大声で呼び止めてみたものの、爆速で走る彼女に俺の声が届く事は無く、遂に視界から消えてしまった。

この場に、すずえもんが居たら簡単に追いつけるのに……。


まあ、同じ学校なら、明日直接渡してやればいいか。

にしても生徒手帳を落とすなんて、不用心だな。

住所すら載って居ないが、顔写真と名前、生年月日が載ってるから、拾ったのが悪党なら悪用されなくも無い。


落ちている生徒手帳を拾い上げ、名前を確認する為中身を開く。


石田由美、写真は、垂れ目で厚い唇が少し大人びて見えるが生年月日を見るに一年生か。

当然ながら会ったことはない。

「………………ぁぃ」


目の前に蓋の開けられた、は〜いお茶と財布が差し出された。

「ありがとう。麗奈この子知ってるか?」

それを受け取りながら拾った生徒手帳を手渡す、あれ?少し中身が減ってる気がするが気のせいだろうか。

お茶で喉を潤す、暑い日に飲むお茶は格別だ。


『私は知らないかな。帰ったら涼夏ちゃんに聞いてみよ(о´∀`о)』


「そうだな、あいつなら顔が広いから知ってるかも」

『うんうん、お姉さんもお茶飲むからちょーだい』

「はいよ」

「………………あぃあと」

麗奈がは〜いお茶を受け取って飲む。

美味そうに喉を鳴らしてゴクゴクと……ん?


「間接キスじゃねえか!!」

「っぷは!」

「ぷはじゃないよ、自分の買わなかったのかよ!」

『うん、欲しいの無いし、お金勿体無いから貰えばいいかなって思って(*´꒳`*)』


それを言われたら何も言えない俺だった。


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