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「……はぁ」

俺の返答に呆れ顔をして溜息までつきやがった。

「あのヤクザさんがいる時点で女性だけじゃないし、悠くん怪我してるからどっちにしろ油断すると思うよ?」

馬鹿なの?と続けて言いたそうな幼馴染。こいつ覚えてろよ。

昔俺達と男子の遊びに混ざりたくて、悪ガキに唆されて男の証として一緒に立ちションをしようとしてた事をバラしてやる。

勿論その悪ガキは俺が後でフルボッコにした。

「うっせえ、ほっとけ」


ふいっと顔を背ける。

そのまま少し歩くと、海の自宅が見えて来た。

門は開けられたまま、玄関横の壁がチェーンソーでバリバリに破られているので間違いない。

……平日の昼間とはいえ、警察呼んでやれよ。


「お嬢達はここで待っててください。伏見が中を確認して来ます」

そう言って伏見さんが門を超え、玄関横の穴から中へと入っていった。

海、無事でいてくれよ。おふざけ集団といえど、流石に全員が緊張した面持ちのまま、伏見さんの報告を待って居ると、麗奈が何かを発見したのか、スマホを取り出して文章を書いている。

『静香ちゃんの家って隣だよね、ほらあれ』

麗奈が指差した先には8人乗り用の白いバンが鎮座している。

「あれ静香の家だよ悠くん、もしかして2人だけじゃ無いのかな」


涼夏が不安そうに言う。

「何人居ても平気だ、山本さんと伏見さんもいるし琥珀さんもくる」

その琥珀さんが未だ現れていないのは不安ではあるが。

「他人任せじゃん!でもそうだね……みんな強いもんねっ」


足が折れてるから今日くらい他人任せでも許して欲しい。

「そうですよー!私がいれば例えチンピラが100人いても瞬殺ですよー!」

山本さんが、任せとけと言わんばかりに胸を張って、自分でとんと叩く。

見た目だけで見たら眼鏡をかけた可愛らしい女性なのに、この人なら平然と成し遂げてしまいそうで怖いところではある。


そんな馬鹿なやりとりを続けていると、偵察を終えた伏見さんが戻って来た。両親は静香の家か。

「お嬢、誰も居ませんでした。恐らく宝井様の家かと」

「わかりました、じゃあ伏見は窓を割って突入してください。私達は玄関から行きますよ」

山本さんが眼鏡を外し、今までふざけていたのが嘘のように、山本さんの表情が引き締まった。

「玄関の鍵はどうするんすか?」

「こんな事する連中ですよ、防犯の意識なんかあるわけありません。仮に開いてなくても伏見なら大丈夫です、閉まっていた場合逃げて来たところを挟み撃ちです」

あまりにも自信満々に言う山本さんに、不安を覚えなくもないが、この人が大丈夫と言うからには大丈夫なのだろう。


「お嬢、伏見行って参ります」

「頼みましたよ、お前が窓を割ったら私達も突入します」

コクリと頷き、伏見さんが静香の家の塀を越え、そろりそろりと気づかれないように、大引きのデカい窓へと近づいていく。


俺達も遅れを取らないように、玄関で待機していると、暫くの静寂の後、ガッシャーンと窓が割れる音が聞こえ、中から男女の怒声が響き渡った。作戦開始だ。

「私達も行きますよ!」

山本さんが言った通り鍵までは閉めていなかったようで、玄関のドアはすんなり開き、山本さんが走って中へと入っていった。

俺達も追うようにして喧騒が聞こえるリビングへと迷わず入ると、壁に服を釘で打ち付けられ、


磔にされてグッタリしている海と、伏見さんにやられて倒れている男が2人目に入った。

男たちが10人ほど、山本さんと伏見さんを取り囲んでいる。

その奥で笑ってこちらを見ている男女が2人、こいつらか。

「てめえ、山本組の一人娘の沙織と若頭の伏見だよなあ」

山本さんたちを取り囲んでいる男達の中の1人が言う。

「そう言う貴女は倉田組の若頭さんじゃありませんか、こんな所で何してるんです?暇なんですか?」

山本さんも人数に怯む事なく笑顔で挑発して返事を返す。


「俺たちはこいつら夫婦からよぉ、娘を金で買ったんだよ、だからお前らは関係無いの、おわかり?」


「腐ってますね、残念ですけどそこの両親と娘さんはうちで身柄を預かりますよ、なので素直に退いてくれるとこちらとしても助かります」


「おいおい……いつから正義の味方になったんだ?俺たちは所詮ヤクザ、悪いことしてなんぼだろ?それにこの人数差……争えばお前らが不利だ。しかもお前が連れてるのは見るからに弱そうな女3人、うち1人は怪我人、その女達も見るからに上玉だな、伏見をぶっ殺して商品にしてやろうか?」

伏見さんの額に青筋が走り、拳を握っている、今にも飛び出しそうな勢いだ。

だが、山本さんがそれを静止している。


くっだらねえ。

ヤクザ同士のやりとりを遮るように前へと足を進める。

「なんだ?嬢ちゃん、自分からこっちに来るなんてよ、怪我してるから手を上げないでってか!ハハッ!おい山本ぉ!お前も抵抗せず素直になるってんならぶふぉ!」

バキッと音を立てて、敵の若頭の頭が床に叩きつけられた。

そう、俺は戦力として見ていない敵の若頭の頭を、松葉杖で思い切りぶん殴った。


油断したな、先手必勝。

「あーあ、松葉杖折れちまった……お前はよ、命のやり取りをする覚悟できてんのかよ、お喋りしに来てんじゃねえんだ。油断してんじゃねえよ」


時間が止まっているように、誰もが唖然としてこちらを見つめる中、倒れて気絶している若頭の顔に唾を吐き捨てる。

こっちは覚悟して挑んでんだよ。

「頭ぁあ!てめえぶっ殺してやる!!」

「悠太君!ナイスですよ!行きなさい伏見!」

「合点ですお嬢!」

「先に伏見をやるぞ!どうせそいつは動けねえ!」

俺の声を皮切りにヤクザ達が動き出すが視線の全てがこちらに向いている為、山本さんが怒る野獣(伏見さん)を放ち、またヤクザ同士の争いとなった。


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