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「菜月は料理できるようになったのか?これから悠太と2人で暮らして行くんだろう?」


「ふふん!仕事が早い日は私が作りますよ!やっぱ育ち盛りの弟には、お姉ちゃんの愛情がたっぷり詰まった手料理を食べさせてあげたいじゃない!?」


 姉ちゃんの料理。考えるだけでゾッとするぜ。

愛情のたっぷり詰まった謎の物体Xが出来上がるんだからな。


 でも、もしかしたら、万が一、一か八か、血の滲む努力をして料理ができるようになったのかも知れない。

だとしたら涙無しには語れない。


「おー!あの菜月が作れるようになったのか!すげえな!」


雪兄が手放しで賞賛している。もしあれだったら毒味は雪兄がしてくれると助かる。俺の命が。


「え?私最初から料理できてたよね?」


 そうか。姉ちゃんはバカ舌だったのか。絶対に料理はさせない。何がなんでも俺が作る。

 それか雪兄に毒味をしてもらってからにしよう。


 俺は死にたがってる。それでも毒殺は勘弁してほしい。姉ちゃんを犯罪者にするわけにはいかない。


「姉ちゃん、料理は俺がするよ」


「えー!私が作ってあげたいのにー!」


 姉ちゃんが頬を膨らませて可愛らしく顔をかしげる。

 可愛い。違う。止めないと姉ちゃんが殺人犯になっちまう。


この可愛い顔で毒物を持ってくるんだぜ?世の中の男はコロッと食べてコロッとお陀仏。とぶぜ。


「ほ、ほら悠くんも、なっちゃんの事大好きだから愛情のこもった料理を逆に食べさせてあげたいんじゃないかなぁ?」


 ナイスだ涼夏。

 命と法律のためなら、シスコン認定は否定せず甘んじて受け入れよう。

 俺はシスコンだ。姉ちゃんを愛している。だから姉ちゃん。料理は止めて俺の料理を食べよう。

 そうしたらみんな生き延びられる。


「んー、でも早い時くらい作ってあげたいじゃーん!」


 簡単には考えを変えてくれないか……。

け、けど、まだ雪兄がいるぞ。さあ、姉ちゃんを傷つける事無く諦めてくれる一言を今こそ。


「菜月お前……あれから一切料理してないなら、それは料理じゃない、人体実験だ。やめておけ、俺も親友が犯罪者になるのは心苦しい!」


 そうだ、この人いざと言う時は良いこと言うのに、普段はデリカシーが無いんだった。


「え!?悠太!私の料理って人を殺すほどだったの!?」


 馬鹿正直にど真ん中、ストレートな言葉を投げかけられ、姉ちゃんが焦りながら俺に聞いてくる、その瞳はうっすら潤んでいる。


「姉ちゃんは……ごめん傷つけたく無くて言わなかったけど、料理は今はまだ、得意じゃ無いね」


 敢えて今はまだ、と言ったのは将来に期待を、とフォローを入れたつもりだ。


「いや、あれだけ練習して無理だったんだ、俺食材を無」

「それでも!悠くんが愛するなっちゃんの為に料理を作ってあげたいのは本当だもんね!」


 お前はもう喋るな、と言いたげに雪兄の言葉を遮り、涼夏がカットイン。

 再び神フォロー。俺、さっきの事も含めてお前だけは信用しても良いとさえ思えてきたよ。


「そっかぁ、悠太はお姉ちゃんの事大好きだからなー!仕方ないかぁ…にへへ」

 可愛いな、この姉。

「…おう、それにさ、今はまだ得意じゃ無いんだったら、雪兄に試食してもらいながら、また教われば良いんじゃ無いかな?」

 げって顔すんな。

 雪兄…姉ちゃんを傷つけた罰はきっちり受けてもらうぞ。


「悠太、俺にし」「そうだね!それが良いよ!雪兄は料理のプロだからね!間違いないよ!」


 涼夏が姉ちゃんからは見えない位置で雪兄に向けて拳を握る。

向けられてる本人は何故涼夏がキレかかっているか分かってなさそうだが。


「そ、そうだな!お兄さん頑張っちゃうぞー!」

 涼夏の般若の様な殺気は感じた様で、余計な事は言わず、死刑宣告を受け入れたようだ。


「じゃあ雪人先生にまた教わろうかな、でね!お料理上手になったら、一番に悠太に食べさせてあげるねっ、約束ー」


 満面の笑みで、小指を差し出して、ゆびきりげんまんーと言う姉に同じ様に小指を差し出して応じた。

安心してまた料理を食べ続ける俺たちであった。


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