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玉の痛みも治ってきた頃、冷静になって流石に静香も悪いと思ったのか、リビングへと戻ってきた。

痛みが引いても尚なんとも言えない気持ち悪さを引きずっている俺を見て光悦とした表情を浮かべている。

なんだ?山本さんや麗奈とは違った変態か?

「ふふふ、弱点を抑えて悶えてる、可愛い」


前言撤回、こいつは全く悪いとは思っていない。どんな感じか様子を見にきただけだ。


「てめぇ、さっきは良くもやりやがったな……!」


下腹部を抑えながらアニメに出てくる三下のようなセリフを吐く俺、情けないことこの上ない。

男性という生物を見下す静香に腹を立て、下腹部から手を離し、何かしらの制裁を与えようと男らしく立ち上がるが……痛みが蘇り内股になってしまう、い、いてぇ……ぐぬぬ。


「涙目で内股になってる、はぁ……はぁ」


「もう女だろうが容赦はしねえ……表に出ろ」


『抑えて抑えて( ̄◇ ̄;)セクハラのことはごめんなさいしよ?あんまりはしゃぐとまた入院しなきゃいけなくなるよ、静香ちゃんもやり過ぎだよ……』


す一触即発の俺達の間に手を広げた癒し系麗奈が仲裁に入った、これには俺も止まらざるを得なくなり、アドレナリンの分泌が止まって冷静になった俺はある事に気がついた。


「いってえええええ!」


怒りのあまり松葉杖を忘れて、ギブスを嵌めた足を踏みしめ、立っていたのだ。

慌ててソファーに腰を下ろす、ジンジンする……。半分以上は自業自得だが踏んだり蹴ったりだ。

「大丈夫?あの……さっきはごめんなさい」


俺の魂の叫びによりようやく正気を取り戻した静香が謝罪をする。遅いよ!

「いや……俺の方こそ悪かった、ごめん」


頭が冷えて正常な判断を下せるようになった今ならわかる。

どちらかと言うと静香が本気で女性にしか興味が無かったとして、暗に男からそう言う目で見られてるんだぞと言ってしまった俺の自業自得だ。


『じゃあ仲直りだね(*゜▽゜*)仲直りの握手して』

子供か!っとツッコミたくなるが、こう言うところは真姫ちゃんの姉をやっていただけあって姉力に溢れてるんだな。

「麗奈さんが言うなら仕方ない、はい」

感心していると、静香が手を差し出してきた……するの?握手、恥ずかしいんだけど。


だがこちらを仲直りの握手を期待した目(無表情)で見つめてくる麗奈の気持ちを無碍にすることはできない。


「お、おう」

や、やわらけえ……違う、これはただの握手だ、意識をするな、また揶揄われるぞ。


「悠太くん本当に男の子?小さくて柔らかい……女の子の手みたいね」


そんな、この俺の喧嘩に明け暮れて血に濡れた男らしい手が女の子みたい……だと?

『女の子みたいだよねー、その手で頭を撫でられると気持ちいいよ(*゜▽゜*)』


そうだったのか、男らしいと思ってたのは俺だけだったのか……。

て言うか静香はいつまで俺の手をにぎにぎしているんだ。


握手していた手を引っ込めると、心底名残惜しそうな顔をしている。

「くっ、筋トレして男らしい肉体になってやる!」


やけくそ気味な発言だ。でも体が完全に治ったらすぐさま筋トレを開始するつもりだ。

これ以上女の子女の子と持て囃されて可愛がられるのは嫌だ。


静香の顔がうわぁ、と言いたげに歪む、麗奈も若干表情筋が意味ありげにピクピクと動いている。麗奈はわかるけど静香はなんで?


「良く考え直しなさい。貴方の顔、身長で体だけムキムキになったらどうなるか……」

ガチ説教である。

想像してみよう。姉ちゃん達に似て、認めたくはないが、全くもって受け入れ難いこの可愛い顔に、母親譲りの低身長がムキムキのゴリマッチョ……おえ。

『やめよ?お姉さん流石に約束を守れないかもしれない……( ;∀;)』

「約束がどんな事かは知らないけど悪い事は言わない、筋トレはやめよう、視界に入れるのも危ぶまれる」

そんなにか、ちょっとショック……。


「わ、わかった、筋トレはやめておくよ」

「それがいい。悠太くんはそのままでいい」

『君は君のままでいいんだよ(*゜▽゜*)』

こうして俺の決心は脆く、砕け散った。

神様、何で親父似の男らしい顔に生んでくれなかったんだ。

それはそれで嫌悪とまではいかないが、嫌な気持ちになりそう、神様、やっぱありがとう。


そんなやり取りを続けているとガチャリと玄関の方で扉が開く音が聞こえた。


壁にかけられた時計を確認すると時刻は16時、きっと涼夏だろう、だがおかしい。

足音が一人分ではなく、複数人分聞こえる。


「たっだいまー!」

リビングの扉がバン!と勢いよく開かれ、涼夏が入ってきた。

「お前のお家はお隣です、この場合お邪魔しますが正解だ、さあ玄関からやり直しだ」


と言ってやると、可愛く舌をべーっと突き出し、非難の目を向けてくる始末だ。

全く、あざといと言うかなんというか、男の俺がやったら……持て囃されるか、まあ涼夏も可愛いので似合っている。

「優しくて可愛くて悠くんのお世話をしてくれて困ったら助けてくれる可愛い幼馴染になんて口の聞きかたなのっ?」

さりげなく2回も可愛くてって言ってる、事実だけどイラつく。


「おう、それを言われたらなんも言えないわ、悪かった」


素直に謝ってやると、ふふん、と鼻を鳴らして嬉しそうにしている。

「わかれば良いのです!今日は美鈴と唯がお見舞いに来てくれたよー入って入って!」


「お邪魔します、春日くん、静香もお久しぶりね、調子はどうかしら?」

「邪魔するわねっ、静香元気してた?悠太はちょっと顔を貸してくれる?」

涼夏に言われ、律儀にも廊下で待っていた2人が挨拶をしてリビングに入ってきた、複数人聞こえた足音は2人だったのか。

美鈴がお見舞いしに来たのはグーパンチだろ、わかるぞ、涼夏に心配かけたから報復に来たんだろ。現に涼夏の後ろに隠れて手をパキパキと鳴らしている。

「2人とも久しぶり、元気」


言葉少なく返す静香を横目に、どうやって美鈴をやり過ごすか湧き出る脂汗をシャツの袖で拭いながら考える。

「ああ、見ての通りだ、美鈴も唯もお見舞いに来てくれてありがとう、そうだ麗奈は美鈴と唯に会うのは初めてだろ!?クラスメイトで友達なんだ!俺達の友達だから麗奈とも友達だな!」


『本当?(*゜▽゜*)また友達が増えた!秋山麗奈だよ、美鈴ちゃん唯ちゃんよろしくね!』

とりあえず麗奈を紹介する事で一旦その場凌ぎだ。


「あら、涼夏から聞いていたのだけど本当に秋山先輩がいるのね、佐藤唯です、よろしくお願いします」


「か、可愛い……!悠太とは友達じゃないけど佐々木美鈴です、よろしくお願いします」




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