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 口に出すと余計に罪悪感が湧いてきた。


「私だって本命でしょ?」


 気まずくなり、頬をかく。

 そもそも一人以上、本命がいる時点でおかしいんだけどな。


「おう、もちろんだ。けどよ、またキモイかもしれねえけど、心臓の音聞かせてくれるのって麗奈だけじゃん?」


 俺を心配してくれてのことだけど。俺もそれで落ち着く。


「なら、感触を楽しめば良いんじゃない?」


 涼夏は頬を赤く染めた。慈愛に満ちた目で、俺を見ている。


「それこそ、キモイんじゃねえのかよ」


「細かいことは気にしない気にしない、私たちは幼なじみなんだからお風呂だって一緒に入った中でしょ」


 涼夏はとんでもねえ自分勝手だ。

 天真爛漫で眩しい笑顔が可愛いのに、たまに小悪魔的で、どこまでも俺の心をかき乱してくる。


「うわぁあっ」


 俺は涼夏の背中に手を回し、抱きしめるふりをして、体を回す。

 しゃがんでいた涼夏はバランスを取れなかった。俺の横に寝転がした。


「どうしたの!?急にっ、我慢たまんなくなったの!?」


「昔みてえに、しよーと思ってな」


「よそ行きの服だったら殴ってるとこだよ。お洋服汚すとお母さんに怒られるんだから!」


 昔と違って、女の子してるもんな。


「俺も帰ったら怒られるの覚悟しねえと」


 女の子の格好してるもんな。

 しかも一番最初に買った、麗奈とお揃いの曰く『君の戦闘服』ボロボロだ。

 血が着いちゃってて、ところどころ破けて乱暴された人みたいだ。


「しょうがないよ。琥珀さん相手したんだもん、麗奈さんと千秋ちゃんと、葵さんのところに、きゃるんきゃるんの可愛い服買いに行こ?」


「別に男物でもいいだろ。なんならジャージでもいいよ」


「ダメだよ!可愛いうちに可愛い服着て置かないと!悠くんもいつかは大人になっちゃうんだから!」


 捲し立てられたが、未来の俺がどうなってるかなんて想像がつかない。

 ここまでガッツリ母ちゃんに似てきた顔が、急に親父寄りになっていくとか。


 そうなったら嬉しいな。親父は嫌いだけど、あの顔は羨ましい。


「そう!灯お姉ちゃん似の美魔女に!」


「今のまんま変わってねえじゃねえか」

 

 御歳40いくつにもなる我が母上こと春日灯は、どうやら高校を卒業すると共に、体の成長の一切が止まったらしい。

 身長は俺と同じサイズ、顔も同じ、つまり俺が2人いるようなもんだろ。


「えー、でも灯お姉ちゃんめちゃ色っぽいけどな〜」


 身内贔屓だけど、女子大生でも通じそうな、母ちゃんのシルエットを思い浮かべる。

 

「お前は俺にそうなって欲しいの?」


「んー、理想はね、身長が伸びて、麗奈さんと私を手玉に取ってくれる高身長の、お姉さん」


「お姉さんなのは確定なのかよ」


「ぶっちゃけ……灯お姉ちゃんみたいになって、麗奈さんからぐちゃぐちゃに鳴かされる悠くんも見たい!抱くと言うよりは抱かれる側!?んふふっ!今のうちに試してみない!?あー、寝取られてるみたいでゾクゾクしちゃうかもっ」


「ぶっちゃけ過ぎだろ。キモイぞ」


「良いじゃ〜ん、減るもんじゃないんだから、ねっ、ねっ」


 頬をツンツンとつつかれてうざい。


「まあ、良いけどさ」


「うっはぁ!約束だかんね!この件片付けて落ち着いたら見せてね」


「抱きしめられるくらいしょっちゅうだろ、勝手に見ろよ」


「ふへ、そうするね……となると」

 

 なんか含みのある醜悪な笑いだ。そして、ごにょごにょと俺に聞こえない声で、一人作戦会議を始めた。

 多分ろくな奴じゃない、俺がそういうのに疎いのをいい事に、ちくしょう。


「はぁ」

 一つ溜め息をつく。

 なんにせよ、これで敵味方がはっきり分かれた。

 姉ちゃん、琥珀さん、立石さんの3人、居場所も分かってる。

 一人一人が強すぎる気もするが、なんとかなるだろ。

 こっちには最終兵器『さおりん』も、雪兄もいるんだから。


 

 

 

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