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 もっと普通なラブコメチックな出会い方してたかも。

 ないか。俺めちゃくちゃ心が荒れてたから。


「だね。お姉さんは悠太の心を掴んで離さないよ」


「はは、俺はむしろ麗奈が美人過ぎて、他のやつに言い寄られないか心配だよ」


「ないね。年上クールなお姉さんは、金髪男の娘に、むCHU〜♡だから、ごほっ、ごほ」


「喋りすぎ、大丈夫か?」


 最後の方は声が掠れてた。そんなになるまで話してくれることは嬉しいけど、心配だ。


 麗奈は『う゛うん』と喉を鳴らして、スマホを取り出した。


『大丈夫。少しずつ慣らしてく』


「それがいいな。無理して早まるもんでもない」


『君の疲れは?お姉さんのちゅうで、少しは解消できた?』


「逆に緊張したぞ」


『なら、一番効くのは心音かな?』


「あれは落ち着くな。暖かくて、麗奈がそこにいることを一番実感できるぜ」


『君にはお姉さんの全部をあげるって言ったの、覚えてる?』


「覚えてるけど、どした?」


 答えて、質問を返すと麗奈は冷静にスマホとにらめっこを始めた。

 いつもは速筆なのに、少し時間が掛かってる。多分中々の長文が返ってくる。


『いっそ。お姉さんのこと抱いてみる?』


 軽々しくいうな、言いかけて口を閉じる。

 麗奈のオレンジがかった黄色の瞳が、腹を括った真剣そのもの。文章を打つのにかかった時間も、本気の気持ちの現れだ。


『君に一番近しい女性。とてもワガママで君に嫌なこともさせるお姉さんを支配して、君の好きなことをさせる。どう?』


 どうって大真面目に聞かれても、大半にこいつの願望が混ざってる。


「お前は俺に支配されたいの?」


 日頃の行いからして、麗奈は俺を支配したい側じゃねえのかよ。


『お姉さんはどっちもあり。君は?』


「俺は――」


 恋人になりたいって気持ちはある。恋人になって順調に愛を育んでいけば、えっちなことをする時も来る。

 

 でもそれって漠然と起こりうる未来を受け入れるだけであって、恋人になった先の願いなんて考えてもみなかった。

 


 麗奈を一方的支配してもいいって考えたら。

「やっべぇ、支配するのすっげえ興奮するかも」


『でしょ。えっちなことをすると、ストレスも疲れもふっとぶらしい。だから、どうせ眠れないなら今夜、お姉さんを好きにする?』


「んや、どうせなら、しがらみを全部取っ払った後に、晴れ晴れとした気持ちで、付き合ってからしたい」


『どうして?君にならお姉さんは何をされても良いのに』


「俺は麗奈のこと、めちゃくちゃ抱きたい。ぶっちゃけると美人な顔を台無しにしてやりてぇ」


 我ながらめちゃくちゃな事言ってんな。


「でもさ、支配されようと支配しようと、普通のえっちだろうと、愛の確かめ合いだろ?俺のストレスをお前にぶつけるのは違う」


『でも、お母さんは、ストレスと快楽に負けて、散々愛を確かめ合ったお父さんを捨てて出ていったよ』


 麗奈が真姫ちゃん以外の家族のことを話すのは初めてだ。


「わりぃ、俺を信じてくれって言葉しか浮かばねえわ」


『君のことを信じたい。信じてる。でも、私にはお母さんの血が流れてる。裏切り者の血が、だから、えっちがそんなに気持ち良くて、全てを手放してもいいって思えるのなら、お姉さんは君を最初で最後の人にしたい』


「おう、つーかお前にとって俺は裏切り者じゃねえのか。涼夏もお前も、両方取ろうってのに」


『ふふふ(*´艸`)良いの。みんなで幸せになるためには、最善手で、お姉さんは涼夏のことも大事、沙織のことも、菜月のことも、沙織は最悪君がいなくても強く生きていけるけど、涼夏は違う』


「俺はお前に愛人なんて認めないぞ。俺も充分ワガママだな」


『お姉さん、もっと雁字搦めにして傍に置いていて、君以外を受け入れないから(´ー`*)ウンウン』


 なんつーか、イケメンっつーか、男前じゃん。


「共依存の賜物だな、安心していいぞ。俺もお前が傍にいないと安心できねえから」


『お姉さんが真美子に共依存を責められた時、普通だろって思ったでしょ』


 バレてたか。


「まあ、俺たちにとってそれが普通だからな」


 満足いく言葉を返せたようで、麗奈はふっと笑みを浮かべてスマホをしまうと、俺の肩に頭を乗せてきた。

 ずっとこの時間が続けばいい。


「あのー、イチャイチャ中ごめんね。そろそろ話し終わったー?」


 唐突に涼夏の声が聞こえて、二人して飛び跳ねた。

 振り返る。涼夏が軽蔑の色を浮かべた目で、その後ろに、余所行きのオシャレをした小笠原先生が、立っている。


「どこから聞こえてた!?」


「えっとねえ。支配したいとか……そのへん」


「聞いてたなら声かけろよ」


「二人の世界作っちゃってるんだもん!無理だよー!」


「でも、ちゃんと付き合うまでは、その……えっち……なことはしないって、先生とても誠実で、いいと思う」


 小笠原先生は、笑みを引き攣らせながら、グッドサインを送ってきた。


やっべぇ、外でこんな話して、俺たちも路地裏で致してたカップルと変わんねえじゃん!


「ていうかー!涼夏ちゃんに先生探しさせといてさ!二人でイチャイチャとか信じらんないよ!なんで混ぜてくれないのさ!」


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