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「それで、何で支払えば良いんですか?」


『あのですね。少し申し上げにくいのですが〜』


「何?なんでも言ってくれよ。俺、多分何千万単位で借りがあるから」


 そもそも内藤の件で山本組が支払った金を一円たりとも支払ってねえ。

 まあ、彼らの身をもって利益を出してるみたいだけど。


『言いましたね!なんでもって!それなら……………………悠太くんの靴下をください』


「ん、別に良いけど」


『えええ!!!マジ!?いいの!?夢じゃない!?マジやっべ!あっは!今から頂きに伺ってもいいですか〜?』


 興奮しすぎてキャラが崩れてる。なんか怖くなってきた。


「今日は涼夏の家に泊まるんで」


『なんだぁ……残念です。でも、女の子の家にお泊まりしてるのに私と話してて良いんですか〜?』


「今風呂行ってるから丁度良いなって思って」


『話し相手になる女性が欲しかったと。選んで貰えたのは嬉しいですが、少しばかり涼夏さんに嫉妬です〜』


「麗奈も一緒だからそんなんじゃないっすよ。ほら、あまり人に聞かせる話でもねえし」


『両手に花じゃないですか!これからさんぴー!?前後から無い胸サンドイッチですか!?肋のゴツゴツした感じとほのかに柔らかな感触に挟まれるつもりってか!?かーーっ!悠太くんもないので誰が女の子だかわかりませんね!』


「それ以上はやめておけ。その話題にやつらは敏感だ。聞かれたら魔王と言えど…………つーか、俺の要件分かってたよね。そんな色のある話じゃねえことくらいわかるでしょ」


『ふふふ、楽しくて論点がズレちゃいましたね〜。うーん、拷問もしましたけど〜、実のある話はありませんでした。知ってることは名前だけ。顔も知らなければ、所在もわからない。指の1本でもへし折ってあげようかと思いましたよ〜』


 ソファーに脱力しながらドカッと座り込んだ。力が抜けちまった。

 くそが。知ってるふうな口ぶりだったのに。少しは菜月姉ちゃんを出し抜けるかもって思ったのに、期待はずれかよ。


 まずいなあ、姉ちゃんと立石さんがどこまでの情報を持ってるかわからない。

 ただ、会社の情報網とか、俺以上に使えるものを使って俺の先を進んでそうだ。

 下唇を噛み締める。やっぱ金の力は偉大だよな。


『ただ、ひとつだけ、言えるのは、悠太くん、命を狙われていたのは君みたいですよ』


「俺?」


『ええ、4年前の事件で葉月さんが殺されたのは、イレギュラーだったみたいです〜』


 少しだけ心が軽くなる。と一緒に、心がズシンと重くなった。

 次に湧いてきたのは怒り。ぶつけどころのない怒りが腹の底から湧いてきて、ついスマホを握った手が震える。

 俺を狙ってたんなら俺が一人で歩いてる時を狙えよ。

 姉ちゃんと、真姫ちゃんが巻き込まれることもなかった。


 

「……ふざけやがって」


『本当に。ターゲットの暗殺に失敗して、二人も無関係の人間を殺して、本当にプロなんですかねぇ』


「少なくとも、警察から逃げ延びてるってことはプロなんじゃねえの?葉月姉ちゃんが格闘戦に長けてるって教えられてなかったとか。だとしたら突発的な依頼だった可能性もあるんじゃね?」


『あるいは、失敗のケジメとして……もうこの世にいない。なんてこともあるかもしれませんよ。可能性のひとつですけど〜』


「それでも、依頼を投げた人間は生きてる」


『ですねぇ。今度は準備を念入りにして、悠太くんの命を狙いに来るかもしれませんねえ』


「おーこわ!気軽に夜道も歩けねえな」


『本当に怖がってますかぁ?』


「ちっとも。俺に何かあったらただじゃ置かなそうな人と電話してるから怖くないね」


『ええ、総力を注いで見つけ出しますよ。追い詰めて追い詰めて、ベッドの下でガタガタ震えながら恐怖に慄くゲス野郎を引きずり出して、おはじきを口の中に突っ込んで、笑いながら引き金を引くでしょう〜』


 エグめの報復をするって口にしてる割には、なんか楽しそうだぞ。

 こういうところが魔王なんだよ。


『実際、悠太くんに死なれたら私も冷静でいられる自信がありません』


「じゃあ何がなんでも生きなきゃいけないっすね。沙織さん」


『当たり前じゃないですか〜。悠太くんのような男の娘……生きる奇跡は早々出会えないんですから、死なないで下さいよ?』


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