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53頁


 半分こを提案したら耳打ちで罵倒された。


 確かに彼女の前で妹と半分こしてたらドン引きだ。身内ノリがすぎた。

 この人たちの前なら多分、半分こしてても、何も言われないだろうが、千秋に感謝だ。


「わりぃな。じゃあミートドリアにする。お前は?」


「私も同じものにします」


 2人揃ってメニュー見てないけど、あるだろ。洋食屋さんだから。

 納得して、しばらく待つ。


「ねぇねぇ。悠太くん。私ハンバーグにしようと思うんだけど、半分こしない?」


 千秋との会話を聞いて、機転を効かせてくれたのだろう。葵さんが提案してくれた。


「良いっすよ。ハンバーグも食べて見たかったし」


 葵さんの演技に、それっぽく返せた。

 何故なら俺が昔食べたいものが2種類あった時、姉ちゃんに使っていた手だから、食べ物の共有くらいは大した事ない。

 それに半分こと言えば、家族。もしくは恋人っぽい行為じゃないか?


「俺、ミートドリアにしようと思ってたけど、葵さんは何か食いたいのある?」


 そう。姉ちゃんが俺にしてくれた事をすれば、相対的に彼氏っぽくなるはずだ。


「ドリアいいね。一口貰ってもいい?」


「もちろん。恋人じゃん?俺たち」


「ありがとっ。雅と美雪も決まった?」


「ええ」

「いいよー!決まった!」


 2人が返し、葵さんが店員さんの呼び出しボタンを押して、注文をした。




 料理を待ってる間も質問漬けだった。

 葵さんに対しての第一印象。今の印象。

 どちらから告白した。デートはどこに行った。

 チューはしたのか。その先はとか。

 割と千秋の前では教育に悪くて話せないようなことも聞いてきたが、何故か一番ノリノリで雅さん達の援護射撃をしていたのが千秋だった。


 初めての印象は、ぶっちゃけ俺は、麗奈の付属物として店に行っただけだから、センスのいい店員さんだなと思っただけ。

 

 ただそれじゃ味気ないから、今の印象も交えて、如何に葵さんが女性として魅力的であるかを伝えた。


 その先の質問も、昨日のデートの話を盛り、つつがなく答えた。


 これで紛うことなきカレカノだ。どこをとっても疑いようがない。


「美味しそー!」

 美雪さんの叫びだ。目の前に置かれているビーフシチューに目を輝かせている。

 美雪さんは大食らいタイプじゃなくて美食家タイプのようだ。


「美味しそうね」


 そんな美雪さんに、雅さんが同意し、目を細めて優しく微笑みかけた。


 俺の中の百合センサーがガンガンに反応してやがる。


「雅ちゃんのオムライスも美味しそーだね!」


「ふふ。一口食べる?」


「ありがとう!じゃあ早速食べよ!」


「そうね。頂きましょ」


 いただきますをしてから食事が始まった。


 ドリアを一口分。スプーンで持ち上げる。チーズが伸びる。

 見るからに熱そうだ。

「ふー、ふー」


 息を吹きかけてから、口に運ぶ。熱い。熱いけど美味い。表面の焦がしたチーズから香ばしい味わいを想像してたが優しいお味だ。

 なんか、母ちゃんの手料理ってこんな感じなんだろうな。


 隣を見れば、千秋が、口の中で、ドリアの熱を逃がそうと、涙目になりながらハフハフしている。


 水を飲もうとコップに手を伸ばしたが、空っぽだったので急いで水を注いでやった。

「ごくっ。ごくっ。熱かったですぅ」


 千秋は赤くなった舌をべっと出した。


「冷まさねえと熱いに決まってんだろ。お嬢ちゃん、ドリアは初めてかい?」


「雪人は和中ばかりで、こう言うのはあまり作りませんからね」


 雪兄の家に住み始める前の、実家の話しを出さないあたり、家族の話題には触れてくるなってことだろう。


「言えば作ってくれるだろ」


 作り方を知らなければ調べてでも作ってくれる。

 んで、美味しい!って褒めれば、そのまま店のメニューに追加だ。

「居候の身で注文を付けたら厚かましくないですか?」


「気にすんなよ。まだガキなんだから。雪兄なら喜んで作ってくれるぞ」


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