52頁
毎日更新1日途絶えさせてごめんねえ:( ;´꒳`;)
52
「まってー!まだ選んでないのー!」
そりゃそうだ。席に着いてから話に夢中で誰もメニューを開いてない。
「急かしてないんで、ゆっくり選んでください」
「ふふ。ありがと」
葵さんがメニュー表を2つ取って、1つを雅さんに手渡す。
もうひとつを千秋に渡そうとしたが、千秋は拒否した。
「はい千秋ちゃん。メニューだよ。好きなの食べてー」
「私は大丈夫です。悠太と同じやつにしますので」
「千秋ちゃんはお兄ちゃんが大好きなんだね」
雅さんが言った。
「はい!割りと大好きです!」
割とってなんだよ。食いつくように返事した癖に、そこ恥ずかしがるところか?
「あらあら。その可愛い反応は、ライバル登場ね。葵」
「そうなのよー。ちなみに、悠太くんのお姉ちゃんも私のライバルなの」
雅さんはニヤニヤしながら葵さんを茶化せば、葵さんはもう1人のライバルの存在を明かす。
「どれだけ競争率が高いのよ。彼」
「でしょ?会ったことは無いけど、幼馴染ちゃんとか、同級生とか。ヤクザのお姉さんとか。色んな女の子からモテてるのよ」
「……良く勝ち取ったわね」
あっけらかんとライバルの人数を明かす葵さんに、驚愕を隠せない雅さん。
美雪さんはメニューと睨めっこだ。この人からは涼夏と似たような雰囲気を感じる。
「運が良かったのよ」
その時、葵さんが一瞬だけ暗い表情を見せた。
友達に嘘をついてる後ろめたさ。そんなものを感じる。
「運じゃないでしょ。葵は綺麗だもの。葵に落とせない男なんていないわよ」
「彼氏の前でそんなこと言います?葵さん美人なんで俺不安になるんすけど!」
だから俺も彼氏として振る舞う。今日限定彼氏。嘘だけども嘘じゃねえんだから。
「あら、自信ないの?」
「まだ俺ガキなんで。葵さんのような大人の女性に相手して貰えるだけで幸せっつーか。そのうちフラれちゃうんじゃないすかね」
ガキだからふった。なんていつかの時のための免罪符を葵さんに残しておく。
「ふふ。愛されてるじゃない」
「まあ。ね、目移りなんてしようがないくらい私も好きだよ。悠太くんのこと」
そんな気持ちひとつもないだろうに、凄く気持ちのこもった言い方だ。
演技上手すぎて胸キュンしちったぜ。
胸キュンと同時に唇を噛む。俺のお姉さんを自称する麗奈に対する裏切ってしまった気がしたから。
俺ってそんな恋多き人間だったっけ。
否。これは推し活的なトキメキだ。多分。
そう。葉月姉ちゃんの英才教育を受けてきた俺は、歳上の女性に胸キュンするように脳に刻み込まれている。
だから、美人で仕事の出来る歳上の葵さんは、充分推しになり得るのだ。
自分に言い訳して何になるんだよ。大丈夫。俺は麗奈のこと、大好き。
「なんだよその目は」
千秋が俺をジト目で見ていた。
「麗奈お姉ちゃんにチクっておきますね」
俺の胸キュンがバレていた。だと?
「まて」
くっ。誤解だとは雅さんと美雪さんの手前、言えねえ。
最近涼夏の提案受け入れただけで、元来俺は一途なんだよ。
いや、ここで反応するから、疚しい考えがあるように思えてしまうのではないか。
仮に胸キュンしたとしても、俺は間違えたりはしない。そうだ。これが正解だ。
「ふっ、なんとでも言え」
大人として余裕の態度を見せてやる。
「むぅ。正解を見つけましたか。まあいいです。悠太は何を食べるんですか?」
「ん。ナポリタン」
「服が汚れるからダメです」
「ミートスパ」
「服が汚れるからダメです」
「カレーうどん」
「洋食屋さんですよ?無いです」
「好きな物食わせろ」
「絶対汚させるなってお姉ちゃんから言われてるので」
俺は言われてないあたり、行動を読まれていたのだろう。麗奈恐るべし。
「じゃあグラタンでも食う?あとハンバーグ。どうせお前1人前食えねえだろ」
「彼女の前で妹と半分こする気ですか?馬鹿なんですか?」
 




