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35頁

すっかり魔王扱いが定着した沙織さんであった笑笑

可愛いのに!

35

 違う。そうじゃない。でも少しでも葵さんの心が軽くなるならいくらでも俺に怒りをぶつけてくれていい。

 語るように言ったのは俺。だから俺に出来るのは受け止めて共感することだけだから


 その結果葵さんに嫌われようと、俺は俺に出来るやり方で、葵さんをこの地獄から救う。

 葵さんにこんな思いを味合わせた、あいつらをのうのうと生かしておいていいわけが無い。


 有言実行しろよ。俺には身近に居る人だけでも、幸せになって欲しいって願いがある。

 

「さっきも言ったけど嫌じゃねえ。ただ、葵さんが受けた暴力が自分に降り掛かったものだと考えたら涙が止まんねえんだよ」



「……そんな綺麗ごと!」


 バチン!炸裂音と共に、視界が揺らぐ。

 葵さんに頬を打たれた。

 

 俺の願いは所詮、綺麗ごと。だけど願いを現実にするには行動が必要だ。

 嫌われるのが怖くて動かないでいるのは、俺の信念と違う。


「あ、ごめん、なさい……ごめんなさい」


「直ぐに謝るくらいなら最初からビンタは勘弁してくれよ。姉ちゃんにの顔が崩れちまう」

 冗談を言いながら、葵さんを壊してしまわないように優しく抱きしめた。

 

「別に俺のことは信じてくれなくても良い」


 少しだけ、冷静さを取り戻したのだろう。ハッと俺の顔を見て、悲しげに眉をクシャっと下げた。

 


「嫌だ……見捨てないで、ごめんね」


 違う。結果だけを持ってくるから、その時判断してくれればいい。

 結局それでしか、下心が無いこととか諸々示せねえから。

 俺が男である以上、恐怖の象徴でしかないだろ。俺も経験があるからわかる。

 

「見捨てねえよ。俺の方こそ勘違いさせてごめん。男だから近寄られると嫌かなって思ったんだ」

「そんなことない」

 握った手を離し、腕で涙を拭う。顔にグッと力を入れる。

 これ以上泣かねえ。


「そうか?俺も男に襲われそうになった事あるけど、今でもたまに怖いぞ」


「あいつから電話が来るまでは、本当に忘れてたの」


 俺はポケットからハンカチを取り出して葵さんに差し出した。

 葵さんのそれは意図的に記憶を封印していただけなのでは。

 

「これで顔拭いて」


「……ありがとうね」


 俺からハンカチを受け取り、葵さんは匂いを嗅ぐように鼻に近づけた。


「スン、落ち着く」


 あ、これ、俺が姉ちゃんに似てるから近づいても怖くないやつ?麗奈と同じ?

 暗い雰囲気が一転したから別にいいんだけど。


「俺は涙を拭くように言ったはずだぞ」


「あ、ごめんね?引いた?」


「もう慣れた」


 麗奈も沙織さんも千秋も唯もやりそうだから慣れた。

 誰か普通の女性は居ないのか。身の回りの変態率が高すぎる。

 涼夏だ。涼夏を呼べ。後琥珀さん……は素質ありだからダメ。


「私ね。匂いフェチなの。麗奈ちゃんの匂いは落ち着く。だから悠太くんの匂いはどうかなって。嫌?」


「葵さんが良いなら別に構わねえけど」

 

 今日はまだ使ってないから衛生的にも問題は無いだろ。

 

「俺が終わらせっから。大丈夫。二度と葵さんの目の前には現れねえようにコテンパンにする」


「でも、アイツら、地元のヤクザとも繋がりあるって言ってたわよ?」


 葵さんの心配も分かる。葵さんはまだ、俺がどんな人間か麗奈から知らされてる程度の情報しか持っておらず、俺に一蓮托生の魔王が味方にいることを知らない。


「目には目を歯には歯を。ヤクザには魔王をぶつけるよ」


「魔王?……聞かない方が良さそうだね」


 魔王?と聞かれてにんまり笑う俺に、知らぬが仏と控えめな葵さん。

 沙織さんの方が少し年下だけど、名前を言ったら分かったりして。


「良い人だよ。癖がつえーけど。勝手に麗奈と俺をモチーフにした小説書いてるし」

 

「女性の方?」


「そうだけど」


「紹介して!」


 なんと、この人もあの小説に興味がお有りのようだ。

 だけどあの小説俺としては些か見られたくねえんだよな。


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