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 麗奈もいくつもの仮面を使い分けたりしてるの?だとしたらいつも同じ顔だけ見てるから怖い。

 いや、きっとそれは、人付き合いによって形成されていく身を守る為の仮面や、円滑に物事を進める為の仮面だったりを重ねていくのだろう。


 女の世界は男が思ってるよりずっと怖いってSNSで見た事もある。

 麗奈は俺以外の男性を寄せ付けない高嶺の花だって涼夏から聞いた事もあったな。


 じゃあこいつは学校の友達に合わせるため、学校ではギャルチックな格好をしてたり?


 そして流されるがままに変な男に騙されて……ええい!そんなのはこの俺が許さん!


「ギャルのお友達と付き合うのはやめなさい!」


「いませんけど」


「は?」


「友達、いませんけど」


 ツンとした態度の千秋。やべぇ、地雷を踏んだかも。


「そうか」


 ぶっちゃけ俺も友達と言える友達は涼夏しかいなかったから、友達がいない事について言及する気は無い。

 千秋が寂しいと言うなら俺がいる。麗奈もいる。あいつらがいる。


 同年代の友達の1人くらいはいて欲しいけど、無理する必要はない。


『千秋は寂しくないの?』


 千秋が唇を噛み締め、スカートを握りしめた。


「寂しいですよ。でも、夢の話をしたら皆私を避けるようになりました。着いたあだ名は死神ですよ?私が殺してる訳じゃないのに」


『悔しいよね。悲しいよね。自分が何かしたわけじゃないのに、避けられて、貶されて』


 麗奈はそれらの感情と向き合わざるを得ず、俺は逃げちまった。

 逃げが悪い事だとは思わない。こっちに戻ってきた時。涼夏が言ってくれたように、当人が生きていてくれている方が重要だから。


 麗奈と目配せをする。


『お姉さんは琥珀が現れるまで、ずっと理不尽な視線に晒されてきた。どうでもよかったけど、心は傷付く。でも、千秋は大丈夫。お姉さんと悠太が守ってあげる』


 麗奈が俺にしてくれるように、千秋を抱きしめた。


「……暖かいです」


「それ、本当は俺専用だからな。今日は特別だぞ」


 言うつもりは無いのに、口から出ちまった。


「嫉妬してるんですか?」


「してねーやい」


 してる。滅茶苦茶してる。だが男の嫉妬はなんて醜いだろ。しかもガキに嫉妬するなんて大人気ない。


「ふふっ。麗奈お姉ちゃん暖かいです」


 麗奈の胸に顔を向け、グリグリと押し付ける。

 見せつけやがって。腹立つー。


『君にはお姉さんの唇あげたでしょ。お兄ちゃんなんだから我慢しなさい』


 思い出されるは麗奈にほぼ無理矢理唇を奪われた日のこと。

 不用意なこと言って怒らせて、大人なキスで黙らされた。

 頬にかかる吐息。長いまつ毛。 桃色の柔らかい唇の感触……。


「お、おう!俺はお兄ちゃんだからな!今日の所は譲ってやるぜ」


 年上ばかりの生活。弟ととして産まれてきたから当然だ。そんな中急に出来た妹に大歓喜の俺。


 だけど、キスを思い出して悶々とする複雑な気持ちだ。


「お客様。あまり大きな声で騒がれますと、他のお客様も居ますので」


 しまった。騒ぎすぎた。

 

「すみません。服を買ったら帰りますんで」


 素直に謝る。葵さんは幸いにも怒ってなくて、むしろ混ざりたそうに見える。

「ええ。結構はしゃがれてたみたいなので、お気をつけくださいね」


「うっす。すみません」


 再度謝ると、葵さんは一礼して接客に戻って行った。


「私はこれにします」


「結局それにすんのかよ」


 千秋が選んだ服は俺が最初に選んだやつだった。


「悠太が折角選んでくれて嬉しかったので私に似合うでしょう」


 それとこれとは話は別だが、千秋が良いならいいか。


『君はどの洋服にする?』


「俺は靴屋で厚底ブーツにする」


『いらない』


「へ?」


『君は身長なんて盛る必要が無い。よって千秋と同じ服にします』


「ワンピースなんて着れるかよ!!蹴り技が打てねえだろうが!」


 蹴り足でスカートがめくれ上がって中身がボロンする未来が容易く想像つく。

 俺は清楚より、もっとスポーティな格好が好みで、もっと言うと女じゃねえ。

 

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