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『そうだよねー、男の子だもんねー』

「このぉ」

明らかに馬鹿にしている麗奈の態度に、少しムッとしてしまう。

『お姉さんはよくわからないけど君は男の子だから、入院生活で溜まってるの?』

が次の瞬間には固まってしまった。

このお姉さんは何を言ってらっしゃるのでしょうか?

ちくしょう海の野郎、余計な事を言いやがって。

元々性欲は薄い方だが、流石に麗奈みたいな美女にそんな事を言われると…悠太の悠太が元気になってしまう。

駄目だ、抑えろ。多分このお姉さんは本当にわからずに聞いているんだ。

エロ本が卑猥だと分かっていても中身は知らないんだきっと。


「ストレスなら溜まってないよ」

苦しい言い訳だが麗奈相手なら通るだろ。


『でもストレスなら女の子でも溜まるよね……溜まるって何?怪しいなぁ、何か隠してるね』

通るわけがなかった。

素直に言ったら手伝って貰えるのだろうか……危ない、付き合っても居ないんだからそんな事駄目だ。

そもそも麗奈は男性恐怖症だから、そう言った事を説明したら俺から離れていってしまうに違いない、どう誤魔化す?

「さあ、俺もわからないな」

うん、お馬鹿なふりをしておこう。

…………………………

『なんてね、保健体育くらい受けてるからわかるよ(΄◉◞౪◟◉`)』

なんだその顔文字、馬鹿にしやがって。

俺だって男なんだぞ?そっち方面で煽るとか俺以外だったら襲われてるぞ?わからせてやろうか?


……とは思っても麗奈の信頼は失いたくないな。

きっとこれもさっき海の卑猥な本を受け取ろうとした仕返しだ。

こうやって色々仕掛けてくるのも、多分俺を信用してくれているから安心してじゃれているのだ。


「麗奈、俺を試すのはやめてくれ、俺は男だけど麗奈を襲ったりしないから」

麗奈の頭に手を伸ばし、優しく撫でると麗奈も抵抗する事なくそれを受け入れる。

『ごめんね、仕返しのつもりだったけどやりすぎた(>_<)』

きっと、はじめての男の友達相手にどこまで弄って大丈夫か、安心感を得る為に石橋を叩いて渡る感覚で試しているのだろう。


「気にするな、麗奈が意外とむっつりだって分かって、麗奈の事を一つ知れて嬉しいぞ」


『自分だってむっつりのくせに!お姉さんを揶揄うな( *`ω´)』

隠していたつもりだったがバレてたか。




病院の昼ご飯を食べ、麗奈とまったりとしていると、退職の手続きが終わったであろう山本さんが病室へとやってきた。

「こんにちはー、沙織さんですよー」

『こんにちは(^ ^)』

「こんちゃー、お疲れ様です」

良かった、今日は暴走モードにはなってないみたいだ。

「山本さん、相談があるんですが…」

善は急げだ、暴走モードに入る前に相談しておく事にした。

「何ですか?性転換ならお断りですよ!付いてるのがいいのです!」

何もおかしな事は言ってないのに一瞬で暴走モードに入るなこの人、引き戻せるかな。

「真剣な相談です」

「なるほど、聞きましょう」

真面目な顔で返すと、なんとか戻ってきてくれたが少しにやけ顔を抑えられていない。

きっと煩悩で頭の中がいっぱいなんだな。

「まず静香の家の借金の件はどこまで知ってますか?」


「そうですねぇ、うちで債券回収して取り立ててたみたいなので、ある程度は知ってますけど……親が宝井さんを置いて逃げちゃった所までですかね」


そこまで知ってるなら話が早い。


「実は、借金が無くなったと知ったら…親が戻ってきそうなんですよね…」


「普通の親なら喜ぶべきですが、そうではないと…」


「そうです、きっとまた借金を作って逃げるか、戻ってきて静香を虐待しそうなんですよね」


「なるほど、だからヤクザの私になんとかして欲しいと…そう言う事ですね?」


「はい、できれば誰も手を汚さず、殺さずに終わらせたいんですけど…難しいですよね?」


「いえ、うちとしても2000万は大金なので回収できるなら本人から回収したいのでいいですよ、それに宝井さんも生きていくのにお金が必要でしょう……私がなんとかします」


「ありがとうございます、俺も筋違いな事はしたくないので当日は立ち会いたいので、退院したら決行で大丈夫ですか?」


「わかりました、それにしても…君は堅気にしておくには惜しい人材ですね!目的の為にヤクザを頼るなんて普通の人ならしませんよ?」

可愛くウインクを決める山本さんに、俺はぶっちゃけ驚いている。

話がスムーズに纏まるのは良いことだけど順調すぎて怖いのが本音だ。


「目的の為なら手段は選ぶなって姉ちゃんの教えなんで……」


俺が言うと山本さんは口に手をやり苦笑している。


「悠太くんのお姉さんは生きてたらきっと大物になっていたでしょうね!」

葉月姉ちゃんは生前琥珀さんと同じヒーロー気質の人間で、そのうえ才色兼備で、俺と言う存在以外に弱点はなかった。

弟ながらに思う、生きていたら世界に影響を与えるような偉大な人物になっていただろうな。


「ええ、姉は偉大でした、1人でなんでも解決してしまうほどに、俺は今も姉の影を追いかけてしまうくらいに……」

そんな姉にずっと憧れていた、姉の様に困った人に手を貸せる人間になりたい、その一心で姉と同じ習い事を始めたり、勉強だって頑張った。

でも姉ちゃんが亡くなった時、目標を見失った……涼夏や麗奈は俺をヒーローと言ってくれたが、今の俺は差し詰めヒーロー崩れと言った所だろう。


『君は君だよ、そんな顔しないで』

姉ちゃんのことを思い出していつのまにか暗い顔をしていたようだ。

麗奈が無表情だが…心配な様子で俺の顔を覗き込んでいるので、手を伸ばして髪をくしゃっと撫でてやる。

「そうですよ、お姉さんはお姉さん、悠太くんは悠太くんで頼りになる仲間が周りにいるんです!1人で駄目なら頼ればいいんですよ!私だっていますよ!」


『そうだよ!荒事では力になれないけどお姉さんだっているよ(*゜▽゜*)琥珀も居る!』


巻き込んでしまうのは気が引けるし、葉月姉ちゃんの時みたいな事になってしまったら顔向けできない。

だから大事な場面で人を頼る事は悪手だ、そう思って生きてきた。


「悠太くんはもっと周りの人を信用するべきです」

山本さんがビシッと人差し指を向け俺をまっすぐみてそう言った。

涼夏は信用に足るからなんでも話している…つもりだ。


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