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感想、誰でも描けるようにしました。よかったらお願いします。
「ああ、悪いな。頼むよ」
「りょーかい!!じゃあ何があったか聞かせて貰ってもいーい?」
「おう」
涼夏に応急処置をしてもらいながら、公園で起きたことを事細かく説明した。
暴漢に襲われそうだった秋山さんを助けたこと。その人の雰囲気が姉ちゃんに似ていたこと。
人殺しになりかけたこと、秋山さんに止めて貰ったこと。
包み隠さずに打ち明けた。
「なるほどね〜、よく頑張った!」
「ムカついただけだよ」
そう。嫌な思い出がフラッシュバックしてムカついただけ。
別に助けようと思ったわけじゃない。
「それでもだよ、悠くんが動けなかったら秋山先輩が襲われてたかもしれないんだよ?」
「……」
「でも秋山先輩に失礼な事言ったのは間違いないから、また会う事があったら謝ろ?」
またなんてあるのだろうか。より一層あの公園は避けて通るだろうし、俺も向こうも。
「あえたらな」
「そのうち会えるよ」
そう言って、むふふと笑う涼夏。
この顔は何かイタズラを隠してる時の顔だ。
「なんでそんな確信めいてんの?お前何か隠してるだろ」
「ふっふっふーそれはどうでしょう〜」
友達だったりして。インターフォンがなって、出てみたら目の前にはあの人が!とかってなったら……別にどうもしねえ、謝るだけだ。
「つーか、お前は俺の母親かよ」
「似たような者でしょ!悠くん昔から問題ばかり起こすんだもん!ほっとけないよ」
「悪かったな」
「あははー、それよりさ!あの麗奈さんが助けてもらったとは言え引き留めてまで話しかけるくらいだから、本当に女の子に見えたのかもねっあはは!」
こいつ…一言余計なんだよな。俺、この顔コンプレックスなんだよ。
腰まで伸びた髪と中性的な顔は、葉月姉ちゃんそっくりだ。
姉との繋がりを感じられる唯一の部分が、このコンプレックスな顔とは、皮肉な話だ。
「うるせぇ、女顔は自覚がある……その麗奈さんって人、有名人?」
「うん、麗奈さんは二年生の先輩なんだけどね、綺麗で高嶺の花って有名なんだけど男嫌いで、イケメンが話しかけても無視、誰も近寄れないんだよ!」
綺麗で異性を寄せつけない雰囲気、逆に言い寄る男が多そうで苦労してそうだ。
それが私と同じって言った言葉の心理?いや、あの目は違う。確かに悲しみを知ってる目だった。
「そうか、まぁ、男だとは伝えてあるから次に謝ってそれで終わりだな」
「もしかしたら仲良くなれるかもしれないよ!」
「あのな、トラウマってそんな簡単に乗り越えられるものじゃないんだぞ?謝ることすら避けられる自信がある」
そんな簡単に治ったら俺はここまで腐ってねえ。
「じゃあ、見た目だけでも謝るときまではそのままにしとかないとねっ」
つまり俺は女顔で髪も長いから女の子のフリをすれば平気だと。カチンときた。
「ぐわっ何するのさー」
くふふっと口に手を当てて笑う涼夏に、今度は構わず左手でチョップを食らわした。
「あうー、痛いよぉ」とおでこを抑える涼夏。
それはそうだ。6割本気出したから。
「お前はさっきから一言余計なんだよ」
話していると玄関の扉が開く音がした。
「たっだいま〜悠太はいい子にしてたー?」
どうやら姉ちゃんが帰って来たようだ。開けっ放しにしたリビングの扉から姉ちゃんが顔を覗かせた。
「あら、涼夏の方が早かったのねー」
「おかえり姉」「なっちゃーん!悠くんがぶったー!…ふえーん!」
わかりやっすい泣き真似をしながら俺の言葉を遮りやがった。
涼夏は姉ちゃんに抱きついて、演技力のなさが露呈しないように顔を胸に埋める。
どうせ、ニヤついてんだろ、こいつ。
「こーら悠太って……その顔と右手どうしたの!?何かあったの!?」
やべぇ、何て答えよう、素直に言ったら怒られる。
「それはね、転んだ拍子に悠くんが私の豊満なお胸に触れたから思わず、やっちゃった。てへぺろ!でも、ほら、不可抗力だからそれはお互いごめんなさいして解決しましたであります!」
ねっ!と泣き真似をやめた涼夏が俺にだけわかるようにウィンクしてきた。
たしかに、涼夏が知ってるなら姉ちゃんにまで心配をかける必要はない。
それに、涼夏の無い胸に触れたのは嘘としても、顔は涼夏にやられたのは嘘では無い。
「そ、それなら、いいのかなぁ?」
「うん!もーまんたい!ささ、着替えてお買い物いきましょ!お腹も空いたし!途中でご飯も食べましょー!」
姉ちゃんが混乱しているうちに涼夏は姉ちゃんの背中を押してリビングを出ていった。
なるほど、確かに涼夏には誤魔化さずに話した方が、言い訳苦しい時に助けて貰えるかもしれない。
だから今は涼夏に甘えておこう……なんつうか、俺甘えっぱなしだ。ちくしょう。