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ずっとそばに居てくれるであろう麗奈と協力してくれるであろう涼夏には今回抱えることになってしまったトラウマを打ち明けるべきだろうか。

でもずっと心配してくれている涼夏に新たな心配をかけてしまうのも申し訳ない。


「麗奈、聞いてほしい」

迷った俺は、入院中ずっと側に居てくれると言ってくれた麗奈に相談する事にした。


麗奈は俺に匂いを嗅がせようと近づけていた頭を離し、俺から離れてスマホを取り出した。


『どうしたの?』


「俺、男性恐怖症になっちまった……」


男性恐怖症っと口にするだけで、昨日の事を軽く思い出し、悔しくてぎゅっと拳を握り締めると、その上から麗奈の温かい手が重なる。


『大丈夫だよ、入院生活中はもう君の側を離れないからね、大丈夫』


心無しか無表情の麗奈の顔が柔らかく見え、グッと目頭が熱くなる。

沸々と湧き出るように涙が込み上げてきてくるが、必死に堪える。

『君は私に約束してくれたから、お姉さんも君に約束するよ、入院中どころか、退院しても君と共にいる、涼夏もいる。だから大丈夫』


でもそれだと2人が居ないと俺は活動出来なくなってしまうし、2人を俺に縛り付けることになってしまう。


「いつ治るのかも分からないのに……もしかしたら一生治らないかも知れないのに……なんで…!」


『約束してくれたから、一生治らなかったら一生一緒に居たら良いよ、在宅ワークとかならできるでしょ』

無表情だが、迷いのない目で俺の目を見つめている。

「でも、麗奈にも自分の人生が……」

家族を失って、俺に同じ目をしていると言った悲しみを背負った目で。

『いくらこんな物臭な性格で、家事スキルが無くて、何もできないお姉さんでも女の子なんだよ?君がいくら女の子みたいな顔してて、同じ事件の被害者で、ナンパから助けてくれた人でも、私は男性恐怖症なんだよ?』

麗奈の必死の訴えに押し黙ってしまう

『家に誘った時も、表情は変わらないから普通にしてたけど少し怖かったよ、でも君は約束してくれた……だから私も安心できた。だから君も安心して』

今朝してくれたように口を耳もとに寄せ

「…………ぃっ……ょ……に……ょ」

擦り切れた声で思いを伝えてくれた。

今度こそ感情のダムが完全に決壊し、子供のように嗚咽をあげ泣き出してしまった。

そんな俺を麗奈は優しく抱きしめて、声にならない声で大丈夫だよ、大丈夫だよと慰めてくれた。





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