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82頁


 ちくしょう。敵が琥珀さんだけだと思ってた時点で俺の負けだったという訳か。油断したぜ。


 後ろ手に回され、拘束される準備が整ってしまった。

 なら、こうしよう。


「分かった。降参だ」


 もう抵抗しようにも出来ないのだが、勝ち誇るふたりに白旗を上げた。


「だけど。もし俺の自由を強制的に奪われるならば……俺は今日1日。いや、明日家に帰るまで、2人と口聞かない。姉ちゃんとイチャイチャする」


 ぷいっと顔を背ける。


「こ、このシスコンめぇ」


 へへ、褒められると嬉しいぜ。


「少年!なんて言うことを言うんだ!れ、麗奈!」


 琥珀さんの関心が俺から麗奈へ。

 何が起きた。とは思うものの俺を気を引く為の罠かもしれない。だから頑として俺は顔を背け続ける。


「少年!大変だ!麗奈が!」


 これはただ事じゃない。


 組み伏せられ、後ろ手にされていた手を解かれたので、麗奈の方を向く。


 琥珀さんにガクガク肩を揺さぶられているが、身を開いたまま何の反応も見せないで、されるがままになっている。

 

「座ったまま気絶をしてやがる」


「少年にベッタリの麗奈に口を聞かないなどと言ったらそうなるに決まっているだろう!」


 ……ええ。俺のせい?

 俺、拘束するならって帰るまで口を聞かないって言っただけだよね。


「まだ自覚無しか!逆に考えるんだ。自分が麗奈に口聞かないって言われたらどう思うんだ」


 なるほど、シチュエーションから考えてみよう。

 俺が麗奈から口を聞かないって言われるシチュエーション……こいつ何したら嫌がるんだ。

 ここまで命懸けの行動を取る以外で怒らせたこともない。嫌がる事をしたこともない。


「麗奈。起きて」


 肩をトントンする。麗奈の目がギョロりと動き、目線があった。


「凄い!私が声をかけても意識を取り戻さなかったのに少年の一声で起きた!」


「お前何されたら嫌なの?」


 麗奈が首を捻る。しばらく黙り込み、腕を組んで考えるポーズを取ってから、スマホに文章を打ち込んでみせてきた。


『き、君がお父さんは嫌⁄(⁄ ⁄•⁄ω⁄•⁄ ⁄)⁄テレテレ』








 


 ――――――――――――――――――


 俺の肩を琥珀さんが叩いていた。

 はっ!気絶していた!?


「良かった。目を覚ました」


「俺、気を失う前の記憶が無いんすけど……でもなんかめちゃくちゃショックなことを言われた気がして、モヤモヤする」


「気にするな少年。ただの気持ちの行き違い。突然ツンデレをやった麗奈にはお仕置しておいた」


 琥珀さんに言われ視線を回すと、部屋の隅っこで壁の方を向いた麗奈がしくしく泣きながら膝の上に荷物を乗せた状態で正座していた。


「いやいや、何を言ったか知らないけどお仕置石抱き!?」


「私が麗奈にそんな事させるわけないだろう!?」


「じゃあなんでうちの子が泣いてるんですか!……うぅ、娘って言った瞬間頭が」

「思い出すな!少年!埒が明かないぞ!」


 琥珀さんが何を言いたいのか意味がわからない。

 麗奈に直接聞こう。起き上がって部屋の隅っこへと近づき、麗奈に声をかけた。


「何があった」


 本当に、麗奈がこんなに思い詰めるなんて滅多にない。


『お姉さんは選択を間違えてしまった。君に嫌がらせをして、更に傷つけた。だから反省中です』

 と泣きながら説明されても主語がないからわからん。

 なんのこと?嫌がらせ……水着のことしか思い浮かばないんだけど。


「水着の事は気にしてねえから。女装なんて今更だ」


 麗奈の頭に手を乗せ、優しく撫でる。


『覚えてないの?』


「他になんかあったか?気絶する前の出来事とか思い出せないんだが」


『ならいい。思い出さなくていい。お姉さんは反省中なので今日は君と一緒に寝てあげられませんが、無視だけはやめてください』


「お、おう。一人で寝てもいいなんて珍しいな。無視なんてしねーよ」

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