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ううむ。腕、組んでもらえばよかったか?勿体ないことをした気がする。
でも、素肌が密着するなんて恥ずかしすぎる。しかも布1枚を挟んで胸も当たる……なんて事は無いか。
いつも通り考えを読まれているようだ。
麗奈の大きなお目目が、俺を責めるように睨んでいる。
お前の持ち味は尻だろ。パレオに隠れて見えないけど。
視線は弱まった。会話せずに通じ合うなんて、俺達以心伝心。
『パレオの中。見たい?』
以心伝心だろ。言わせようとするなよ。恥ずかしい癖に、ポーカーフェイスだけど、耳が真っ赤だぞ。多分俺も。
「エッチなのはいけないと思います」
言ってやった。理性的で紳士な男。春日悠太。へへ。
みんなの所に戻ると、もうBBQが始まっていた。
大人組、姉ちゃんと、神田さんと、蓮さん、沙織さんはもう酒も入っているようで、1席に纏まって盛り上がっている。
正直助かる。酔っぱらいの相手は疲れるから、1番離れた席に行けばからまれるこ絡まれることも無いだろ。
だから、俺達に気付いた姉ちゃんからのSOSの視線は無視することとする。
姉ちゃん飲めないからなー。それでも大人組に混ざるなんて、いつの間にか姉ちゃんも大人になったもんだ。
さて、出来れば雪兄の近くを陣取りたいけど、雪兄と静華が一緒に焼いてる鉄板の前には腹を空かせた涼夏、それを見守る美鈴が居るから無理だ。
次に伏見さん。は、熱くて如何わしい視線を感じるからやだ。大人組もそこにいるし。
視線に関しては後で山本さんにチクってやろう。
となると、最後に残ったのは木村さんと羽鳥さんの鉄板の近くだ。
メンバーは唯と、琥珀さんと、千秋。うん。ここが1番安全だ。
「あ!悠太くんだー!お姉さん達のところにきなさーい」
俺を呼ぶ蓮さんの声を無視して、千秋の隣に腰掛ける。
「よう、邪魔するぞ」
「蓮さんが呼んでますけど?」
「良いんだ。気になるなら千秋が代わりに行ってくれ」
あの輪の中で揉みくちゃにされる千秋の姿が目に浮かぶ。それは俺も同じで、胸の大きな女性に揉みくちゃにされるのは悪いことではないが些かここに来るまでの間に、美鈴や涼夏からの評価は低くなっている。
不本意にも揉みくちゃにされれば、今度こそ鼻の下を伸ばしてるなどとイチャモンを付けられて嫌われてしまうだろう。
良い友人関係を築く為に、それだけは避けなくてはならない。
「嫌です。窒息死は嫌です」
渋い顔をした。
「だろ?触らぬ蓮さんに祟りなし。腹減り涼夏も然り。俺は静かに飯が食いてえ」
「あら、大きい胸の女性は嫌いかしら?」
と腕を寄せて胸を強調する唯。
『悠太はお尻の大きな女の子が好みだもんね(`・ω・´)フンスッ!』
スマホを取り出して、唯に張り合う麗奈。
「何回その話題を繰り返すんだよ。みんな違ってみんないい。飯食わせろ」
「そうですよ2人とも。悠太はロリコンだから」
「それだけは、俺の社会的評判の為に反論させてもらうぞ。つーか。1番リラックス出来そうな席を選んだんだから大人しく飯を食わせてくれよ」
俺はバーベキューを楽しむ。
この時の為に朝から何も食べてないから、腹減って死にそうだ。
「そうだぞ2人とも。少年はこの後私と鍛錬をするんだから、腹ごしらえをさせてやらないと……砂浜で2人きり、手とり足とり……ふへへ」
やけに静かだと思ったけど、そんな事を画策していたのね。
「琥珀さん。今日は慰安旅行っす。鍛錬は明後日にしましょう」
何気に明日も休むと宣言してみた。モクモクと漂う煙にのって、肉が焼ける臭いがする。
「そうですよ。海に来てまで鍛錬なんて野暮ってものですよ。悠太、口を開けてください。」
「あむ」
千秋が箸でつまんだ肉を差し出してきたので、それを食らう。なんとも気の利くガキだ。
これめちゃくちゃ良い肉だろ。めっちゃうめぇ!炭火焼きがミソなのか?
「麗奈お姉ちゃんも、あーん」
「……ぁ。むぐむぐ」
麗奈も食らう。微笑ましい。
関節キスじゃねえか!って今更か。
「でも、毎日の鍛錬がいざと言う時役に立つんだぞー」
備えあれば憂いなし。だけど
「琥珀さんには毎回大立ち回りしてもらってるんすから、旅行を楽しんでくださいよ」




