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65頁


 それから、連れていかれた男達を麗奈と一緒に見送った。

 この海で強引なナンパをしようという不届き者に対する見せしめだ。

 その効果は抜群で、ジロジロと俺たち二人を見ていた視線が消えた。


 俺の役目を山本さんちの人達がひきうけてくれる。なんて楽なんだ。


 いやでも、出来ることならば、俺もあっちに混ざりてぇ。


『泳ぐ?』


「いんや、泳がねえ」


 万が一にもパレオが取れたら嫌なもん晒すことになるだろうが。


『むぅ。楽しみにしてたのに』


「お前の言うことは一理ある。俺の顔を隠すなら、女の格好をするのが1番自然だけどさ。でも、ビキニにパレオじゃ下を隠すには心許ないだろ?」


『悠太のは可愛いから大丈夫だと思ったのに( ・᷄ὢ・᷅ )』


「……」

 俺の高いプライドは砕け散ったとさ。

 そうだよね。悠太くんのお子さんの通常状態はそれはそれは可愛らしい見た目してるもんね。でも、それを好きな女の子に言われたらね。立ち直れないと思うの。


 

 あー、どうにでもなれ。

「……俺、泳げねえんだ」


 この際だ。すべて洗いざらい話しちまおう。


『知ってる。だからお姉さんが泳ぎ方を教えてあげるよ(`・ω・´)ふんすっ!』

「お、おう。知ってたのか」


『涼夏から聞いた。だからこっそり泳げるように特訓してあげようと思った』


「でも教えるったってお前、海の中じゃスマホ使えないのに、どうやって教えてくれるんだ?」


 麗奈が口をぽかんと開けて、固まった。


 声を持たない自分の弱点を、理解していなかったようだ。

 麗奈はその場に膝を折って、指で砂をいじくり始めてしまった。


「お、俺さ。バタ足ならできるから、手を持っててくれねえか?練習したら直ぐ泳げるようになると思うんだよな!」


 『お姉さんに任せて(๑•̀ㅂ•́)و✧』


 現金なこった。お姉さんの機嫌取りは大変だ。


 つうかマジでこれを着て泳ぐのか。俺。みんなも流石にドン引きだと思うんだけど。

「おっまたせー!悠くんの愛しの涼夏ちゃんだよー!」


「待たせてごめんなさいね涼夏の着替えが遅くて」


「ふふふふふ。すこーしお肉の乗った涼夏も可愛いわね」


「よう少年!私の水着はどうだ!」


 涼夏と、唯と、美鈴と、琥珀さんの登場だ。

 え、俺女性用の水着を着てるんだけど、なんで誰も触れないの?見えてるよな?臭い物には蓋ってやつ?


「うっす!似合ってるっすよ」


 琥珀さんは真っ赤なビキニで男らしく仁王立ち。筋肉もモリモリ!では無く、うっすら筋肉質っぽくも見えるが、健康的な体躯だ。うん、なんかイメージ通り。


「少年も似合ってるぞ!」


 あぁ、良かった。俺の水着見えてるんだよね。良くないけど。

「美鈴!悠くんの前で言わないでよ!」

「なんで?ぷにぷにで可愛いのに」

「わー!わー!」


 俺の幼馴染はどうやらすこーしばかり太ったらしい。

 食生活を考えると太らない事が奇跡だったのだけども。


「あら、私の水着は褒めてくれないのかしら?」


 唯は白のオフショルダービキニに下はショートパンツ見たいな水着を着て、肩と手と足しか外界に晒さず清楚に纏まっている。

 こいつの事だからもっとセクシーな水着を着てくると思った。


「セクシーなのも似合いそうだけどお淑やかで可愛いな」


「まあ。女子にも色々あるのよ」


 唯は視線をぷにぷにの涼夏に向けて、遠い目をした。

 この話題を掘り下げれば、俺の命は無いだろう。


「貴方こそ、ビキニ似合ってるわね」


「うるせぇやい。麗奈に騙されたんだよ」


『騙してないよ。完璧な作戦だよ』


「そうね。山本さんとか菜月さんもいるのだから、その水着を着ていた方が目立たなくていいと思うのだけれど」


「わかるのが悔しいんだよ」


「……少年?私もちゃんと褒めて欲しいのだが」


 照れ顔で、人差し指で俺の肩をツンツンしながら琥珀さんが言ってきた。何この人可愛い。


 

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