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「ないわ」「ないわね」「ヤクザとか血縁とか幼なじみの母親はちょっと」


 涼夏。唯。美鈴。の順番に冷めた様子で吐き捨てて、拳を握りしめ、自らの性癖をさらけ出した俺を放置して女子トークを始めるのだった。


 泣いていい?よね?お前らが始めた話だよね?


『嘘をつかなくても君の理想は分かってる。お姉さんだもんねჱ̒ ー̀֊ー́ )』

 自分を信じる気持ち、大事だよね。


「本当だったとしても私、成長するので心配しなくていいですよ」


 麗奈がこっそりスマホを見せてきて千秋が耳打ちしてきた。    

 慰めてくれるのはお前たちだけだよ。本当に。


 



 

 自爆という名の性癖暴露から少し時間が経って、高速のサービスエリアに寄ることになった。


 俺と麗奈、伏見さん以外はバスを降りてトイレ休憩に行った。

 これは僥倖。言うなら今しかない。


「麗奈。俺水着忘れちゃったからサービスエリアに無いか見に行きたいんだけど」

 サービスエリアに寄るって聞いた時は思わず感嘆の声を挙げそうになったね。比較的海に近いから店にあるんじゃねえかってさ。


 ここに無ければ死亡確定。みんなが戻ってくるまでがタイムリミットだ。

『君の水着?あるけど\(❁´∀`❁)ノ』


「え?水着なんか買ったっけ」


『こんな事もあろうかと、お姉さんが用意しておきましたよ(⌯ò▾ó⌯)フフン』


「マジか!お前が女神か」


 でも俺が知らないって事は麗奈が1人で買いに行ったんだよな。こいつが1人で出かけた日なんてあったっけ。常に一緒に居るから居ない日があれば覚えてるはずなんだけど。


 まあいっか。多分麗奈が姉ちゃんにお願いして買ってきてもらったとかそんなとこだろう。


『命拾いしたね。伏見を見るに君が忘れたらめちゃくちゃ怖いよ?』


「俺もそう思ってさ。気が気じゃなかったよ」


 なんと言う取り越し苦労だったのだろうか。やっぱ信じるべきは麗奈だわ!

 海に行くことだって一昨日決めたのに、その前に水着を用意してくれるんだから。もしかして、こいつも海に行きたかったのかもしれない。


『だから出発前から様子がおかしかったのね(^_^;)早く言ってくれれば良かったのに』


「姉ちゃんの機嫌を取ってくれるのに忙しかっただろ?」


『お姉さんも起こしたのに、君だけめっちゃ怒られてたもんね:( ;´꒳`;)』


「俺が主導だからしょうがねぇよ。朝4時はやりすぎた」


『お姉さんは余裕だよ(っ*´∀`*)っ』


「お前は寝覚めがいいからな。眠りが浅いのか?」


『スッキリしてるけどねー。少しの物音でも起きるんだ』


「すげえ。優秀な番犬だ」


『わんわん!ฅ(՞•ﻌ•՞)ฅ』


 麗奈は撫でて欲しいらしく、俺の手に頭を乗せてきた。

 可愛いじゃねえかよ。そういや動物診断みたいなみたいな奴をツイッターでやった時も犬だったっけ。涼夏が猫で俺が兎。2人ともピッタリとか抜かしやがった。

 

 兎、寂しいと死ぬんだってよ。でもあいつら本当は単独行動派だってことを俺は知ってるぞ。


 あの診断、今やったら変わるのかな。麗奈の頭を撫でながらそんなことを思っていた。


 うん。変わらず寂しいと死ぬのかも。現に、麗奈によって生かされてるというか、こいつに何かあったら俺は気が気じゃなくなる。


 麗奈も同じことを思ってくれてたら……嬉しい。

 思ってくれているからこそ、今日も助けてくれたのだろう。と納得しておく。


「そう言えばさ、俺水着でも上着が欲しいんだけど」

 

 水陸両用のパーカー的な?この顔貼り付けて上裸で歩き回ってると、人の目を集めるから嫌なんだよね。

 昔はジロジロガンつけやがってとか思って喧嘩してたけど今なら分かる。この顔の所為だ。

 多分、夜遊びしてた時、めちゃくちゃ喧嘩売られるなー。俺から滲み出る強者のオーラが〜とか痛い事考えてた時もあった。


 今なら分かる。ありゃただのナンパだ。いきなり掴み掛かられたこともあった。ありゃ性犯罪者だ。


 俺ってば知らず知らずの内に世直ししてたんだな。


『上着も用意してあるよ。カッコイイやつ( ー̀֊ー́ )』


 麗奈のコーデは間違いないから、やつがカッコイイと言うならカッコイイのだろう。


「ありがと。助かるわ」


『例え君の裸を見るのが男でも、お姉さんは嫌だからね(。'-')(。,_,)ウンウン』


 独占欲ってやつだな。裸なんて見せたことは無いけれど。


「パーカーとか男らしいと思えないから、本当は嫌だけどな。この顔、鏡を見れば葉月姉ちゃんに会えるけど、温泉とか海とか夏の行事にゃ本当に不向きだわ」

 

『本当によく似てるね。菜月とは少し違うけど、葉月とは本当に瓜二つだよ』


 菜月姉ちゃんの待ち受けと、俺の顔を交互に見比べて麗奈は言った。


「菜月姉ちゃんはどっちかって言うと母ちゃんに似たんだよ。目尻の下がり具合いとか瓜二つだぞ。性格も温和だしな」


『じゃあ葉月と君は大和に似たの?』


「いや、俺は葉月似だ。間違いない。気持ちの悪いことを言わないでくれ」


 確かに親父もどっちかって言うと女顔に見えなくもない。だけど認めたくない。目元がそっくりとか言われたら吐いちゃいそうだ。


『まだまだ溝は深いみたいだね( ノ∀`)タハー』


「麗奈は……母ちゃんが目の前に現れたらどうする?」


『絶対に許さないよꉂꉂ(>ᗜ<*)あの人の所為でお父さんは死んだから』


 文章とは違って麗奈は冷たい目をしている。なんでそんなことを聞くのと言いたそうな瞳。

 今まで俺の中で、親父はそのレベルの存在だった。

 それが今までごめんと言われただけで許せるほど俺も大人にはなりきれてない。


「悪い。ごめん」


 それでも、麗奈の母と親父の、悪さの度合いは麗奈の母の方がダントツで悪い。

 麗奈に考えの浅さを謝った。


『謝る事はないよ。悠太のお父さんを許せない気持ちはわかるから、でも』


「でも、なんだ?」


『大和はいつか私のお父さんにもなるかもしれないから。仲良くなれるといいな』


 天に召されそうなほど舞い上がっちまったようで、現実に帰ってきた頃にはもうバスは出発していた。

 性癖暴露のおかげか、涼夏たちは1列開けて座ってやがる。変わらず、千秋と麗奈が隣に座っているから別にいいもん。悲しくなんかないもん。

 と変わったことと言えば「少年!昨日の私の活躍はどうだった!?見てくれた!?」琥珀さんが、こちらに加わった事だろう。


 出発直後は招いてくれた沙織さんの近くに座っていたが、大人組はアルコールの摂取を始めて、騒ぎ始めたからこちらに逃げてきたようだ。


 琥珀さんの昨日の活躍。

「空中で銃弾を避けて胴回し蹴りをフェイントにしてからの失神パンチ。かっこよかったっすよ」


「え、何ですかそれ。化け物?」


「何を言うか!私は人間だ!まだ空は飛べない!」


 蓮さんの特大ジャンプは正に飛翔と呼ぶに近しかったけど、舞空術ではない。

 千秋の疑問は真っ当だよ。俺もそう思った、と言うかそのまま言ったし。


「誰か空を飛んだのですか!?」


 キラキラした目を琥珀さんに向ける千秋。そうだよな、小学生だもんな。空は飛べない。かめはめ波や、螺旋丸は撃てないって気付くにはもう少し時間が掛かるよね。

 俺も小学生の頃練習したよ。螺旋丸が撃てるって信じて毎日水風船を片手にチャクラを練ってたなー。

 

 ある日、悠太くん当時10歳は、いつものように螺旋丸の練習をしていた。家族に隠れてこっそり裏庭でやってたのに、葉月姉ちゃんに見つかった。

 この時点で、普通の姉妹や兄弟なら、死ぬほどからかわれて現実を知ることになる。


 だけどうちの姉ちゃんは違った。


 『お姉ちゃんは螺旋丸使えるよ。水風船貸して』

 

 俺の目の前で水風船を割って見せたのだ。

 今なら握力と爪で割ったんだと理解できるが、10歳の悠太くんは敬愛する姉を疑うことも無く信じ込んでしまった。

 そしてうちの姉ちゃんは螺旋丸を打てると、学校で自慢してしまい、涼夏に馬鹿にされた。

 

 だから千秋には同じ轍を踏ませたくない。


「千秋。人間は空を飛べないんだぞ」


「ドヤ顔で何を当たり前の事を言ってるんですか?」


 可愛くないやつ。ドヤ顔なんてしてないもん。

 

「それがな?蓮さんは飛んだんだよ。飛翔と言ったらしっくりくるかな。3メートルはあったかな、倉庫の窓に向かって飛翔したんだ」

 琥珀さんが俺のフォローを入れてくれた。

 でも琥珀さんあれは大ジャンプですよ。

 

 だが、琥珀さんの話しには目をキラキラさせて耳を傾ける千秋であった。

 


 

 

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