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「男の娘の冷たい蔑みの目!そして本心とは裏腹に嫌いと言ってしまうツンデレ!堪らんっすわぁ!ぐふふ!」

ダメージを与えるつもりで言ったのに、逆に喜ばせてしまったようだ。

通常時も状態異常みたいなもので、怒ると怖いしこの人が1番無敵なんじゃないか?

琥珀さんと大怪獣決戦をしたらどちらが勝つんだろ。


こう言う人は無視するに限る。


「トイレの世話なら間に合ってるんで、他に用事がないなら帰ってください」

そう告げるとだらしなく緩んだ顔が昨日のように引き締まり真剣な表情を浮かべている。

やべえ、キレさせてしまったか?


「用事って程の話しでもないのですが、昨日の後始末の話です、復讐も考えられないくらいちゃんと教育して海外に飛ばしたので二度と目の前に現れないから安心してください」


どうやら杞憂だったみたいだ。

教育や海外の話は詳しく聞かない方が良さそうだな、むしろ聞きたくない、昨日の形相からするに絶対穏やかじゃないだろ。

「うっす」


「それと、こちらは今回の慰謝料です、お納めください」

床に置いていたアタッシュケースを両手で持ち、スッと丁寧に差し出してくる。

片手が使えない俺の為に、ロックを外し、ガチャリと開かれたアタッシュケースには隙間なく帯付きの現金がこれでもかと言うほど詰められていた。


ごくりと喉を鳴らす、親父が資産家だけど、こんな大金は見た事がない。

「こんなに受け取れないっすよ、病院代だけで大丈夫です」

と返すと同時にガチャっと病室の扉が開き部屋の外で待機していたであろう、黒服が1人病室に入ってきた。

「てめぇごらぁ!お嬢の金が受け取れねえってのかぁ!!」

黒服がはちきれんばかりに筋肉隆々でサングラスをかけているので表情は確認できないが、こめかみには青筋を浮かべている男が今にも俺に襲いかかりそうな感じに構えている。

その脇を麗奈が通り過ぎ、俺の元へと戻ってきて男性が怖いのか震える手で俺の手をギュッと握った。

何この状況、麗奈も怖いなら遠くで事が過ぎるのを待ってればよかったのに。

『君はお姉さんが守るからね、取り敢えず琥珀呼ぶ?』

早速大怪獣決戦が実現してしまいそうだ、それだけは止めなくては…。

当の山本さん本人は慰謝料の受け取りを拒否されるとは思っていなかったのか、呆けている。

そんな俺たちに向かって肩を怒らせながらツカツカと男性がベッドに向かって歩いてくる。


本格的にヤバい、急いで山本さんの肩を叩くが

「てめぇ!お嬢に気安く触れやがってぇ!」

却ってヤクザの怒りを増長させてしまった。

殺気を撒き散らしながら山本さんの前を過ぎ、俺の目の前までヤクザが迫る。

「外で待てって簡単な言いつけすら守れないのかい?」

麗奈が俺に覆い被さるように庇ってくれるのを片手で避けながらも、もうダメだと思った次の瞬間…ばっちーん!と炸裂音の様な音が病室内に響き渡り、ヤクザの顔が勢いよく弾け飛んだ。

我に帰った山本さんがヤクザの肩を掴み、向き直らせて強烈なビンタを打ち込んだのだった。


「すみませんお嬢…ですがこいつがお嬢に失礼な態度を!」


ばっちーん!!!二発目が炸裂し、ヤクザのサングラスが吹っ飛ぶ。

「外に出てなさい、殺すわよ」


ようやく落ち着いてくれたのか、すみません、と一言謝り出て行った。


た、た、助かったー!今度ばかりは死ぬかと思った。

「着いてこないよう言ったんだけど心配だからと着いてくるのをやめなくて…麗奈ちゃんも居るから外で待機させていたのだけどごめんなさい」


「い、いえ、俺も失礼なこと言ってすみませんでした!」

あんなのが外で待ってるなら、次失礼な事を言ったら殺られる…直感で悟った俺も非礼を詫びる。

「いいんです、悠太くんと麗奈さんは友達なので…それよりもこのお金受け取っていただけませんか?大怪我をさせてしまってこちらも引き下がれないので…」


『わお!すごいお金!Σ(・□・;)』


「友達だからこそ、こんな大金は受け取れないですよ。さっきも言った通り治療費だけで大丈夫です」


「ですが…」


この人と友達で居るならこんな大金は受け取っちゃダメだ。

いくら身内の不始末とは言え、そもそも山本さんが怪我をさせた本人ではないので、お金を受け取る気は端っからないのだが…。


「お金なんか貰わなくても、俺たちは友達ですよ」

と言うとやっと諦めてくれたのか…おずおずとアタッシュケースを下げてくれた。


「ごめんなさい、昔から不始末を起こすとお金で解決してきたのを見てきたので…」

申し訳なさそうに頭を下げる。

生きてきた環境が違えば自分の中の常識と相手の常識も違う。

この人もこの人なりに世間とのズレを抱えて悩んでいるんだろうな。


「頭を上げてください、ほんと俺は気にしてないので……ていうかこのやり取り昨日もやりましたよ」

俺に言われて昨日の事を思い出しておかしくなったのか、山本さんがクスクスと笑い始める。

この人も暴走しないで普通にしてたら好印象なのにな。

『怖かったねε-(´∀`; )』

「あぁ、昨日の今日だ、生きた心地がしなかったよ」



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