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ん、朝か。目を開くと、目隠し用の薄いカーテンから朝日が差し込む、今朝も暖かいな。


きっと隣で寝ている麗奈が原因だ。

男としての尊厳を失い傷心になった俺に、そろそろ帰りますっと、告げて山本さんが帰った後

宿泊用のベッドを用意されていたのに、一緒に寝ると言って聞かない麗奈に、もう好きにしろ、と見放すように言ったのだが何を勘違いしたのか

『いいの?(゜∀゜)じゃあ寝よー(*゜▽゜*)』と無理やりベッドに入って来た。


幸い、俺の片足を折る原因を作った事に罪悪感を感じた山本さんの計らいで、元の部屋よりワンランク上の病室に移され、ベッドが大きいので二人で寝るのには困らなかったので放置して寝た。


「今何時だ?」

時計を確認すると5時、ここから自宅までは20分くらいだろう。


麗奈は昨日は風呂も入っていないので、学校に行くまでにシャワーも浴びないといけないので起こす事にした。

隣でスヤスヤと眠る麗奈の肩を揺する。


「起きろ、朝だぞ」

昨日と同じくパチリとすんなり目を開け、スマホを取り出した。


『まだ5時だよ(o^^o)もう少し寝よう(*'▽'*)』

正直5時で、どうせ入院も二週間ほど伸びたので、どうせなら二度寝をしたいのはやまやまだ。


だが、寝たら最後、隣のやつも学校をサボって一緒に寝続けるだろう。

そして看護師さんに起こされ、怒られる未来が見える。

「何を言ってやがる、風呂も入ってないだろ?」


『え?お姉さん臭う?臭い?』

「臭くないけど、学校に行く前にシャワー浴びないといけないだろ」

『ダメ、ちゃんと匂い嗅いで、臭い?』

と頭を近づけてくるので、仕方なく鼻を近づけて、スンスンと匂いを嗅ぐ。


「い、いい匂いだぞ…」

吃ったのはわざわざ匂いを嗅がされて気恥ずかしいからだ。


『良かったー!一人暮らしの時、お風呂入るの忘れたりするけど2日目の私はまだいい匂いなんだね(*´꒳`*)流石に3日目は琥珀に怒られたけど(´;ω;`)』


色んなことに無頓着でダメ人間なのは知っていたが風呂にも無頓着だったのか。

これは琥珀さんも苦労するわけだ。

「よし、じゃあ琥珀さんに怒られる前に家に帰ってシャワー浴びて学校に行きなさい」


『2日目だから黙ってれば大丈夫b今日も君のそばにいるよ(*'▽'*)』


「学校に行かないと琥珀さんに怒られるぞ」


『君が生きる意味を教えてくれるんでしょ?君が退院するまで学校には行かないで君のそばにいるよ?出席日数なら大丈夫、琥珀がちゃんと学校に連れて行ってくれてたから皆勤賞だし、成績も体育以外優秀だから多少の無理は聞いてくれるよ、それに君も人と関わるようになったから一人でいるのも寂しいでしょ?それに昨日の怖い思いもしたんだから、一人になると、実感しちゃうよ』


図星だ、この街に来てからの4日間は、ほとんど一人になることが無かったので、麗奈が帰ってしまったら、孤独や昨日の死や辱めを受けた恐怖が襲うだろうと少し不安ではいた。

昨日心配だとワガママを言ってここに泊まったのは麗奈の優しさだったんだな。


幼馴染にも、この年上のお姉さんにも本当に頭が上がらないな。


「姉ちゃん達は知ってるのか?」


『うん!言ってあるよ!みんなよろしく頼むって言ってたよ(o^^o)君って愛されてるね!』


姉ちゃん達が良いって言うなら隣に居てもらおう、その方が安心する。


被害者同士だからだろうか、傷の舐め合いって訳じゃないんだが、些か麗奈に依存している気がする、それじゃいけないんだろうけど…。


『暗い顔しないで?今はお互いに甘えた関係でいいんだよ』

確かに暗い顔にはなっていただろうけど心まで読まれているのか。

麗奈の甘い言葉が今はとても心地がいい。

このまま今の精神状態で麗奈の吸い込まれそうなほど綺麗な目を見続けていると、堕ちきって、全てにおいて麗奈に依存してしまう気がしまう。


「…ありがとう」

足が吊られて固定されているので顔だけを背けてお礼だけいって、押し黙っていると耳元に気配がして、麗奈の甘い吐息がかかる。

「…………ぃ……ぉ」

擦り切れて言葉とも言えない音が耳元で聞こえ、耳元の気配が離れていき。

スマホが眼前に差し出され、その画面には

『私こそありがとう』

と書かれていた。

その言葉に説明のつかない感情がぐっと込み上げてくるが、二度寝をする為、再び目を閉じる。


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