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 ――そして良い子だけどちょっぴり悪い事を覚えた君は、お姉ちゃんが死んで、もしかしたらお姉ちゃんの遺品を全部燃やしてしまうかもしれない。

 でも、それは狂おしい程にお姉ちゃんの事が好きで好きで仕方がない君のやる事です。誰かは許してくれないかもしれませんが、春日葉月こと君のお姉ちゃんは許しましょう。

 それが君の愛だから、死んでしまった私への罰です。


 代わりに私は、君だけに、この手紙と木刀を残します。

 誰にも死んだ後の事なんてお願い出来ないので、雪人君にこの業を少しだけ背負ってもらおうと思い託しました。

 この手紙は私の死後、悠太が本当に立ち直れた時に渡してもらう事になってます。

 直接伝えられなくてごめんなさい。


 2枚目にはこの手紙を書くに至った経緯を記しておきます。

 覚悟が出来たら読んでね。ま!当に出来てるよね。私の弟だし。


 最後に。

 この手紙が悠太の手に渡ることがないと良いな。愛してる。誰より、世界で一番。

 だから、幸せにしてもらって。

 君を守れた事に後悔は無い。




「……っぁぁあああ」


 ぼろぼろと溢れてくる涙を止められず、声を上げてしまった。

 麗奈が俺を抱きしめて子供をあやす様に頭を撫でてくれる。


 姉ちゃんの遺書。俺にだけ残してくれた遺書。

 自分が死ぬかもって分かっていて、辛かっただろうに、悲しかっただろうに、それでもと俺に罪悪感や、不安を残さないように1文字1文字丁寧に書かれた俺のためだけの優しい手紙。


 姉ちゃんの暖かい気持ちがこの手紙を通して流れてくるようで中々涙が止まってくれない。


 でも、泣いてる場合じゃない。麗奈にひとつ言わなきゃいけないことがある。

 拒絶されることになるかもしれない。もう抱きしめて貰えないかもしれない。

 頭のいい麗奈の事だ。もう気づいてるとは思う。


 麗奈の肩に手を置き、優しく押して体を離した。


「……ゅーぁ」


 麗奈が掠れ声で俺の名前を呼ぶ。表情は微かに崩れていて、俺を心配してくれているのが伝わってくる。


「麗奈……ごめん。真姫ちゃんは……真姫ちゃんは巻き込まれただけなんだ」


 犯人は無差別に俺達を襲ったわけじゃない。姉ちゃんの手紙を貰った時点でこの事に朧気に気付いていた。

 じゃなきゃ姉ちゃんが死を覚悟しているはずがない。


 真姫ちゃんを殺したのは犯人。だけど、俺達があの日あの場所に居なければ真姫ちゃんが死ぬことは無かった。

 あの日の事が起きなければ、麗奈の父親が自殺することは無かった。母親も男を作って出ていくことなんてしなかっただろう。


「全ての元凶は俺が、あの日公園で遊びたいと姉ちゃんにねだったから」


 そう結論づけると麗奈には恨まれても仕方ない。


『お馬鹿』


 麗奈に頭をペチンとはたかれた。

 

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