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 はー、やっと帰ってきた。昨日ぶりの我が家だ。


 俺は今リビングのソファーに1人腰掛けて明日の予定に考えを巡らせていた。

 本来は直ぐにでもベッドにダイブを決めたいが、同居人の麗奈がシャワーを浴びている。

 それを待って俺もシャワーを浴びるつもりだ。


 うん。寝るならサッパリしてから気持ち良く眠りたい。


 みんなとは明日の予定とその他諸々を決めて解散した。

 温泉行きは決定で、朝7時にうち集合。今回はお友達全員をご招待してくれるみたいなので大所帯になりそうだ。

 社会人組の蓮さんと姉ちゃんと神田さんも参加する。2人は帰るなり、明日休む為の引き継ぎをしに会社へと出かけて行った。


 社長と秘書がいきなり休む会社って大丈夫なのか?まあデカい会社だから数日くらい居なくても優秀で気合いの入った社員さんが何とかしてくれるのだろう。

 なんせ蓮さんの会社だもんな。会社での役職が総長、副総長、特攻隊長と暴走族寄りになっていてもおかしくは無い。

 むしろ幹部が全員紅蓮のメンバーで構成されていたりして。


 姉ちゃんはなんて呼ばれてるんだろ。副社長が副総長。でも秘書って常に社長のそばにいるもんだから副総長が妥当。

 悩む。アポ取りとか窓口にもなるから特攻隊長もあり。


 帰ってきたら特攻隊長って呼んでみっか。慌てふためく姉ちゃんの姿が目に浮かぶ、面白そうだ


 妄想の域を出ない憶測にくつくつと笑いがこぼれる。

 

 後、俺以外全員女性なのは避けたい。俺以外にも気苦労をする仲間が欲しいので海と雪兄には絶対に来てもらおう。

 


 行先は静岡は伊豆の方。海と山の幸、そして絶景のロケーションで温泉を味わえる絶好の温泉旅館らしい。

 今から楽しみである。金を使わせるのは申し訳ないが、貸切風呂を借りてくれるなら目線も気にせずゆっくり足を伸ばして風呂に浸かることが出来る。

 

 いいな。最高だな。海に行きたいという千秋のお願いも叶えられて一石二鳥だ。

 ついでにみんなと仲良くなれればいいな。


 今日が8月の10日。明日1日で打ち解けられなくても夏休みも半月以上残ってる。

 


 そんな願いを込めつつ立ち上がる。

 リビングからキッチンへと移動して、食器棚からコップをふたつ取り出した。


 ひとつは俺の分。もうひとつは麗奈の分。冷蔵庫から麦茶を取り出してコップへと注ぐ。

 注いでいるうちにガチャりとドアノブが回り、リビングの扉が開かれて湯上りで頬を赤くした麗奈が入ってきた。


 そろそろ出てくる頃だと思ったよ。


 コップに口をつけて麦茶を一気に飲み干す。

 

「あー!うめぇ!麗奈の分もあるから早く服きてこいよ」


 別に全裸な訳では無い。全裸だったら俺も麦茶を吹き出してもっと焦ってる。


 ただ、ブカブカのTシャツ1枚。下着も着用してるかわからない。

 そんな姿で出てこられると、麗奈の綺麗でスラッとした長い足が何とも艶めかしく見えてしまう。


『服なら着てるよ:( ;´꒳`;)下着も着けてる。黒だよ(*´艸`)』


 こういう所。やっぱ男として見られてないみたいだ。

 


「き、聞いてねえよ!もうこれ飲んで黙れ!」


 コップを乱暴に押し付けた。


『怒らないでよう(*σ・ω・。)σツンツン』


 顔文字通り頬をつんつんしてきやがる。


「怒ってねえよ」


 麗奈の手を振り払いリビングを出ようとズカズカ歩いていく。

「お前は女で、俺はこんな顔してるけど男だ。あまりそう言うこと言うなよ」

 とだけ言ってリビングを後にした。

 からかっているのか本当に女の子扱いなのか。後者だな、多分。

 できるだけ女性として意識しないように気をつけてるのに。


「はぁ」


 洗面所に入ってため息を吐く。麗奈なりのコミュニケーションなのに、怒り気味だった事への情けなさから来たものだ。

 

 「好き。って言えたらどんなに楽か」

 

 上着を洗濯機に投げ捨てながら、ぽつりと呟く。

 気持ちを伝えれば、胸のつっかえも楽になるけれど無理だ。

 俺には関係を壊してまで思いを告げる勇気も無ければ、我慢をする事に対しての耐性も弱くなってる気がする。


 

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