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 いつもならノータイムでお姉さんのって言う癖に。何故かムッとしてしまう。

「俺は今のところ誰とも付き合う気ないっすよ」


「あはは、今のところは、な」


 うんうんと意味ありげに頷いて、琥珀さんは満足気に前を向いた。


「悠太はモテモテだねえ、麗奈ちゃん、涼夏、琥珀ちゃんと千秋ちゃん、沙織も悠太のこと好きだもんねー」

 姉ちゃん。麗奈は違うと思うぞ。

 それと実は唯と神田さんにも言い寄られているのは言わないでおこう。別に侍らせてるとかそう言う訳じゃない。本気の告白をされたら断るつもりでもいる。


「男なら纏めてみんな養うとでも言ってみたらどうだ?そしたら万事解決だぞ?」

 

「ハーレム王にはなれねえっすよ。不誠実じゃねえすか?」


 一夫多妻一妻多夫。それも1つの愛の形で否定はしないけど。

 

 俺だったらやだよ。麗奈が他の男をいっぱい引き連れてるんだろ?絶対に嫌だ。


「全員がいいって言えば良いんじゃないか?みんなが納得したならありだと私は思う。君みたいな英雄色の強い男なんて1人の女性じゃ満足出来ないんじゃないか?」


「いや、俺は別に1人で大丈夫っす」


 琥珀さんと、千秋も言ってたっけか。半分ことか俺は望んじゃいない。


『君はお姉さんのだもんね(*´艸`)』


 なるほど?俺が靡くわけないと思って、このやり取りを放っていたわけか。意地が悪い。

 本当は俺の好意に気づいてるのでは?と麗奈の顔を見る。

 考えの読めない、いつもの無表情に戻っていた。

 

「んー!これなら上手く少年を乗せれると思ったのにー!……まあ、気が変わったならいつでも私に言ってくれ。私は2番目でも3番目でも構わない。君が愛してくれるならな」


「お姉ちゃんも2番目でもいいよー?」


「姉弟は結婚できねえっての」


 結婚しようと思ってた頃はある。相手は葉月姉ちゃんだけども、むしろ葉月姉ちゃんによる洗脳まがいの婚約を結ばされていた。

 事ある事に「お姉ちゃんと結婚するよね」と聞かれた幼き頃の少年悠太くんは「する!」と元気に屈託のない笑顔を姉ちゃんに向けて返事をしていた。

 あの頃は純粋だったんだ。

 姉ちゃんが死ぬまで姉弟では結婚出来ないって事を知らずに過ごしていた。恐らくその情報だけは俺が耳にしないように葉月姉ちゃんが手を打っていたのだろう。


「あらー、昔は結婚するって言ってくれたじゃーん。プロポーズも悠太からしてくれたのに……葉月ちゃんと違って2番目の奥さんだけど」


 ガっと左側から肩を掴まれた。その手の主は目を細めてゴミを見るように俺を見ている。

「違う!それは葉月姉ちゃんと結婚するなら菜月姉ちゃんを1人にしたくなくて言っただけだ!」


「……お姉ちゃん。あの日の婚姻届持ってるのになぁ」


 更に掴まれた肩がきりりと痛む。麗奈さん、あなたそんなに握力強くなかったっすよね。


『今から打つ文章を読み上げなさい。さもないと』


 さもないとなんだと言うんだ。完全にブチ切れてる麗奈なんて初めてだ。怖くて聞けないよ。

 琥珀さんも黙っちゃったし。


 麗奈を刺激しないように、恐らく顔が引き攣っているだろう俺は、こくこくと頷いた。


『今から市役所に寄るように菜月に言いなさい』


「ね、姉ちゃん!市役所寄ってくんねえかな!」


「良いけどあの婚姻届って悠太が作ったものだから提出してもダメだよー。まだ法律でも姉弟の結婚は認められてないしー」


 ガっと麗奈が助手席の椅子を蹴りあげた。


『別件で用があるって伝えなさい』


「いや、そうじゃなくてな!別件で用があるんだ!」


「んー。今日は日曜日だから市役所もやってないよー」


『なんて日だ!一刻も早く帰りたい!』


 麗奈がダン!と助手席を殴った。


「麗奈ちゃん!何があったか分からないけどお姉ちゃんの車に八つ当たりしないでぇ」


『君の姉上と君が悪いのだよ』


 最後に力なくスマホに打った文章を俺に見せてきて、麗奈は力なく座席に寄りかかり、外を眺め始めた。


「姉ちゃんと葉月姉ちゃんが悪いらしい。理由は俺にも分からん」


 俺もそれだけ姉ちゃんに告げた。

 困惑する姉ちゃんを他所に、麗奈と外の景色を眺めていた。

 


 

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