表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/667

42頁


無言の時間が流れる。

麗奈のスマホをいじるタップ音と息遣いがよく聞こえる。

なんで帰らなかったんだろう、

こうして元気なんだから心配する必要はないんだが…。

涼夏に海の事を聞くの忘れたな、あいつは無事なんだろうか。

俺みたいに骨折してなければ良いけど。

考え事をしながら手持ち無沙汰になり、無意識に昔よく姉ちゃんにしていたように俺の腹あたりで前のめりになってスマホをいじっている麗奈の頭を撫でていた。

麗奈が首を傾げこちらを見ている。

「わ、わりい、姉ちゃんに昔よくさせられていたんだ…」


『いいよ、もっと撫でて』

なら遠慮なく撫でさせてもらうか。

色んな事に無頓着で髪のケアもろくにやってなさそうなイメージを麗奈に持っていたが、艶がかっていてサラサラだ。

撫で心地は最高だな。

しばらく撫でていると目を細めて、気持ち良さそうにしている。

涼夏は無事に家に着いたのだろうか。

身の回りでトラブル続きだったから心配だな。

そんな俺の様子を察したのか麗奈がスマホの画面を見せてくる。

『一回涼夏ちゃんを送って行った方がよかったかな?(⌒-⌒; )心配だよね』

確かに涼夏の事は心配だけど、麗奈を更に遅い時間に一人で病院に戻って来させる方が危険だ、いざと言う時に声が出せないから助けも呼べないからな。

それに涼夏は運動神経が良いから大丈夫だろう。

……でも心配だから一応ラインを送っておくか。

『無事に着いたか?』

送信っと、これであいつがスマホを見たら返信が来るだろ。


「あいつなら大丈夫だよ、それよりも琥珀さんがめちゃくちゃ強いって言ってたけど本当?」

単純な興味だ。

もちろん荒事に琥珀さんを巻き込む気は毛頭ない。

だがあの人の性格なら呼ばなくても事を知ったら助けに来てしまいそうな気がする。

今回の事件が尾を引いて破門されたヤクザが復讐しにくる可能性のゼロでは無い。

助けに来た琥珀さんが足手纏いになったと仮定すると、

人を1人守りながらもう一度あのヤクザと戦うことになる。

そうなったら今度は確実に殺される。

だから、参考までに麗奈聞いてみることにした。


『琥珀はすごいよ、私って生い立ちもこんなだし、話せないから一年生の時クラスメイトの男女4人からいじめられてたの…けど、ある日それが琥珀に見つかってね、瞬殺しちゃった』


「あの人すげえな」

男女4人か、確かに一般的には強い。

けど相手は一般人ではなくヤクザだ、やり合うと死が纏わりつく。

『でね、その4人の中に暴走族の下っ端が居て、チーム総出でお礼参りに来たんだけど、たった一人で全滅させちゃった』

「え?ご、5人くらいだったのか?そのチーム」


『ううん、30人くらいだよ、琥珀も私も見た目が良いから集まっちゃったみたい』


………………末恐ろしいな。

女性1人、ましてや一塊の女子高生が30人の男を全滅させるなんてどう考えても有り得ないだろう。

「琥珀さんて、武道とか何かやってるの?」


『剣道と空手をやってたんだって、君のお姉さんと同じやつ(*゜▽゜*)空手の組手では勝てなかったらしいけど、剣道の試合では君のお姉さんに勝ったこともあるって琥珀から聞いたよ(o^^o)』


「あー!思い出した!!」


あの完璧人間で負けなしだった葉月姉ちゃんが剣道の試合で一度だけ負けた事がある。

同じ道場の片山琥珀…あの人だ。

確か姉ちゃんに憧れて空手と剣道を始めて、体は小さいながらもたった一年で頭角を表し、姉ちゃん以外には負けなしだったんだよな。


身長や髪の長さも当時と違いすぎてわからなかった、けどあの赤毛には見覚えがある。


ちなみに俺は空手も剣道もあの人に勝った事は無い。

でもなんで昨日俺に言ってくれなかったんだろ。


『だから琥珀にとって君は弟弟子になるのかな?』

俺が先に始めていたことは悔しいので黙っておこう。


「なるほど、だから自分より弱い奴に可愛い女の子って言われて怒ったのか、次会った時に謝ろう」


頭を撫でられていた麗奈が、俺の手から離れ、両手を広げてやれやれとため息をつき、首を横に振る

『君は女心をもっとお勉強したほうがいい(ㆀ˘・з・˘)』


どうやら違ったようだ。

女性に囲まれて育った俺が女心をわかっていないだと…?

そんな筈は無いんだけどな…まあでも、昔は雪兄に憧れていた部分があるので仕方ないか。


「麗奈が教えてくれるから平気だろ」


スマホをベッドの上に置き、口パクで『あほ』とだけいって、また頭を近づけてきた、顔はそっぽを向いている。

「どうした?」

と聞くとベッドに置いたスマホをもう一度手に取って文字を打ち込んでこちらに向けてくる。

『ほら、女心がわかってない、黙って頭撫でて』

猫みたいな奴だな、まあいいか。

そっぽを向いたままの麗奈の頭を撫でる、きっと無表情だけど、内心は喜んでるんだろうな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ