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ユサユサ、と誰かに肩を揺さぶられて、眠りから覚める。

寝ぼけ眼を擦り、誰かを確認すると、涼夏がベッドに腰掛け、麗奈が俺を起こしてくれたようだ。

その奥には病室の壁に体重を預けている琥珀さんがいる。

「バカ悠くんおはよう」

「少年おはよう、派手にやらかしたらしいな」

『痛い?平気?(´;ω;`)』

三者三様に心配をかけたみたいだな。

「おはようございます、涼夏、悪かった、またお前に心配かけちまった」


「大丈夫って言ったのに、俺に任せろって言ったのに、こんな大怪我して、本当に馬鹿だよ…でも静香を助けてくれてありがとうね」

涼夏が頭を撫でてくる。

「あぁ…」

拒否することなくそれを受け入れる。


「本当は美鈴と唯ちゃんも来たかったみたい何だけどね、悠くんの怪我の状態もわからなかったから今日は3人できたの」

美鈴と唯も心配してくれたのか…。

「だから、悠くんは1人じゃないから…みんな心配するからもう、無謀な事はやめてね」

「わかった」

返事を返すと、俺の頭から手を離し、涼夏がニッコリと微笑んでいる。

1人じゃない…か、その通りだ。

みんな知り合って日が浅いのに、こんなにも心配してくれる。

もう命を無駄にする事はやめよう。


『そうだよ(´;ω;`)生きたいって思わせてくれるって約束したでしょ?(ノ_<)』


「そうだな!麗奈のお世話係を1人でやるのは荷が重いからな!勝手に死ぬのは許さん!」


「もうしないっす、約束します」


「それなら良い!!ところで少年、昼休みに話したかった事なんだが、2人とも少し席を外してくれるか?」

約束していたことすら忘れてた、何の話なんだろう。

「じゃあ飲み物買ってくるね!行こ!麗奈さん!」

琥珀さんに言われ、2人が病室から一旦出て行った。

途端に病室が静まり返り、重たい空気が流れ始める。

空気の発生源は琥珀さんだ。

さっきまで明るかったのに、今は真剣な表情をして真っ直ぐこちらを見つめている。


「昼に話そうと思っていた事は誤解だったからもう良いんだ」

「昨日の事ですか?」

ラインのやり取りで誤解を与えたままにしていた事を思い出した。

誤解が解けたと言う事は麗奈から話を聞いたんだな。


「ああ、変態などと罵ってすまなかった」


「気にしないでください、あれは誤解しても仕方ないっす」

軽く頭を下げる琥珀さんに、俺は片手をパーにして軽く前に出す。

「ありがとう少年、では本題なんだが、私は涼夏からヤクザとしか聞いてなくてな、単刀直入に聞く。君をやったのはどこの誰だ?」

キッと琥珀さんの視線が鋭くなり、俺が冷や汗をかいてしまうほどに殺意が漏れ出て、肌がピリ付くほどの緊張感が溢れる。

「ヤクザの近松組の人間っす、でも組の娘さんが友達で…きっちりケジメを付けてくれました」

「そうか、麗奈がやっと見つけた男友達だったのに、それを奪われそうになったんだ、敵討ちにでも行こうと思ったんだがな」

発想が物騒だな、俺も人のことを言えないけど。

「ヤクザ相手っすよ、怖くないんですか?」

「私は相手がヤクザだろうとなんだろうと、身内を傷つける奴は許さないぞ、君もそうだったんだろう?」


「そうですね、静香や海とは知り合って一日ですけど、いなくなったら涼夏が悲しみます…だからカチコミに行きました」

「そこに恐怖はあったか?」


「正直に言うとなかったっす、負けるとも思ってなかったので」


「そうだろう?私と少年は思考回路が良く似てるな、守りたい物の為には命を投げ打てる、だから麗奈を任せようと思ったのかもな!」

あっはっは!と豪快に笑う琥珀さん。

戦闘力を目の当たりにしてないから真意はわからないけど、きっとそう言ったエピソードが多数存在するんだろうな、後で麗奈に聞いてみよう。

「まあ、少年がやったのは無謀だ、勝ちにはプロセスがある……まあ、無いに越したことは無いが、鉄火場が起こりそうなら私を連れていけ。役に立つぞ」

どんだけ修羅場慣れしてようと、俺から見たら琥珀さんも女性だ。

葉月姉ちゃんの教えに乗っ取って連れて行くわけにはいかない。

「琥珀さんも可愛い女の子っすから、ダメっすよ」

え?顔が赤くなってる…やべぇ、何か怒らせちまったかな…。

「わ、私が可愛いだって!?揶揄うなよ!もう帰る!精々安静にしてろ愚か者!!」

焦ったように病室から出て行った。

本当に琥珀さんの言った通り、強かったら俺…次会った時血祭りにあげられるんじゃないか…?


琥珀さんが出て行ってから少しして、涼夏と麗奈が飲み物をもって帰ってきた。

「悠くんはオレンジジュースだよね!はいっ」


「ありがとうな」

涼夏がペットボトルの蓋を開けて、差し出してくれたので、それを受け取る。

子供っぽいかも知れないが俺はオレンジジュースが昔から好きだ。

葉月姉ちゃんと菜月姉ちゃんも好きだったからなんだけどな。

昔よく3人で缶のオレンジジュースを分けて飲んだっけ。

『琥珀がすごい形相で飛び出して行ったけど何かしたの?(⌒-⌒; )』


これは俺退院しても、もう一度ここに帰ってきそうだな…。

あらかじめ予約しておくか?

「いや、突然怒りだして出て行ったんだ」

失礼だけど本当に怒ってる理由がわからないんだよな。

琥珀さんは揶揄われていると思ってるんだけど、女の子なのは事実だしなあ。


『君が気づいて無いだけで何か言っちゃったのかも…なんて言ったか覚えてる?(ㆀ˘・з・˘)』


麗奈なら琥珀さんの事よく知ってそうだから話しの内容も伏せなくていいか。


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