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それなのに。それなのに……神も。身内も俺を笑うんだ。ちくしょう。


 乾いた笑いが口から漏れた。


「神がいたなら俺がこの手で葬り去ってやる」


「手を挙げてなぁに厨二病みたいなこと言ってるんですかぁ〜?」


 お盆に湯呑みと茶こしを乗せた沙織さんが戻ってきた。


 なんてタイミングで現れるんだこの人は。

 殺せ。人思いに殺ってくれ。


『悠太は男の娘である事に感謝を感じてるところだよ』


 こいつは何を言ってるんだ。


「笑えよお前ら。俺はただ、男らしくなりたかっただけなんだよ。体は女見てえだし顔も姉ちゃんそっくりだし。認めたくないから現実から目を背けてた道化の俺を笑えよ」


「悠太くんは充分男らしいと思いますけどねぇ〜」


 机に湯呑みを置きながら、女神(さおりさん)は言った。


『君は見た目以上に中身、かっこいいよd('∀'*)』


 ……麗奈ぁ。


「そうだね。私を助けてくれた時。かっこよかったよ」


 ……お前名前なんだっけ。


「かっこよくあろうとしなくても、悠太くんは出会った時からかっこよかったですよ〜。だから余計にからかいたくなるんです。ほら私は好きな子ほどいじめたくなるので〜。はい。お茶どうぞ〜」


 

 今なら盃を交わしても良いと思ったけどやめておこう。


 危ない危ない。

 

「あざっす。でもあまりいじめられると、自信なくなるっす」


 口から零して、沙織さんに入れてもらった茶を受け取り、口をつける。


 荒んだ心を癒すようにゆっくりと。


 ……あぁ、あったけぇ。


「弄りすぎましたかねえ〜。すみません」


『お姉さんもごめんね:( ;´꒳`;)』


「いや、良いんだ。姉ちゃんとそっくりなのは嫌じゃない」


 むしろ光栄な事じゃないか?綺麗で最強だった姉ちゃん達とそっくりなのは。


 そうだ。何をウジウジとずっと悩んでいたんだ俺は。


「可愛いは最強つまりそういうことだろ」


 つまり俺って最強……。


「変な方向にズレてってないですかぁ?」


『』


「可愛いって認めた方が生きやすいって気づいたんじゃないです?」


 3人が俺を見ながらコソコソと話し合ってる。

 生きやすい。そうだな。確かに生きやすそうだ。


「さて。そろそろ話し聞かせてくれよナンパ女」


「ナンパ女って何よ」


「あぁ、わりい。心の中でそう呼んでたんだ」


「ぶっちゃけすぎよ。私の名前は咲良だから。次ナンパ女って呼んだらぶっ飛ばすわよ」


「苗字は?」


「工藤よ。おばあちゃんと同じ」


「じゃあ工藤。話を聞かせてくれ」


「なんで私だけ苗字なのよ。他の人はみんな名前で呼んでるのに」


「みんなって…………立花は立花だぞ」


「お願い!あの先生と同じは嫌!」


 そんな拒絶してやるなよ。先生だって生きてるんだぞ。


「お前と仲良くなると理事長に情報が筒抜けになるからヤダよ」


「えーー!おばあちゃんには何も告げ口しないから!何でも協力もするし!だからお願い!先生と同じは嫌なのー!」


「ナンパ女。これでいいだろ」


「え?酷くない?ねえ麗奈先輩。酷いですよねぇ」


 ワタワタと騒がしく麗奈に助けを求める。

 お前さっきまで麗奈のこと秋山先輩って呼んでただろ。


『悠太。工藤が可哀想だよ』

 

「麗奈先輩まで!?えっと沙織さんでしたっけ……助けてくださぁいーーー」


「悠太くん。ナンパ女さんが可哀想ですよぉ」


 ニコニコしながら言葉のナイフを突き立てた沙織さんに美波は固まった。

 優しそうに見えるよなその人。なんなら俺たちの中で1番やべえやつだぞ。


 理事長の孫って事でずーっと俺の優位に立ってたから、少しいい気味だ。立ってたか?いや立ってた。うん。立ってた。


「んで、俺たちに何でも協力するって言った咲良は何の情報をくれるんだ?」


 わざとらしく言ってみたら、咲良は表情を歪めた。

 ん?何でも協力するって言ったよね?

 かといって協力してもらうことなんてほぼないけどな。

 

「え、エッチな事はダメなんだからね」


 自分で自分の体を抱きしめながら、咲良は言った。


「興味ねーっての。早く教えてくれ」


「……それはそれで傷つくんだけど!私ってそれなりに可愛いよね、多分」


 

 

 

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