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おっさんの頬から血が垂れる。

「悠太くんを虐めるようなことがあれば……次は眉間を狙いますね」


一連の流れは沙織さんによる牽制だった……のだろう。多分。

話しを聞いて会いたがってたって聞いたからてっきり歓迎ムードだと思ってた。


「分かった。パパに悠太さんとお話しさせて」


山本組での序列が固まった瞬間だった。



――――――――――――――


客間へと通され、おっさんと向かい会い、テーブルを挟んで座っている。

距離と言う安心感は大事だ。だってこのおっさん明らか俺を敵認定してくるんだもん。


麗奈は山本さんに連れられて席を外している。

俺の隣を譲らないあいつが。珍しいこともあったもんだ。


なので、おっさんと2人きり。ちょっぴり嫌な汗が背中を伝う。

 沙織さんが居なくなった途端威圧感をだしやがって。やっぱさっきのは親の顔だったんだな。

調子に乗って胡座をかいて座ったけど座り直した方がいいのかなか?少し不安になってきた。


「そのままでいい。楽にしろ」


座り直そうと、腰を浮かせた俺におっさんは言った。


「うっす」


「では改めて、今日は来てくれてありがとう。私は山本大吾。沙織の父親で山本組の組長をやってる」


「春日悠太です」


「悠太くん。大和と灯さんは元気か?」

「元気だとおもいますけど……なんで親のこと知ってるんすか」


母ちゃんから一切連絡が無いからどうとも言えない。

あんだけ俺のことを溺愛してくれてたのに、家を出た途端一切の連絡が無い……今更ながら少し寂しくもある。


「大和と灯さんとは高校時代、同級生なんだ」


「親父と母ちゃんと同級生!?」


びっくりした。見た目じゃわかんねーもんだな。まあそっか、うちはどっちも実年齢より若く見えるから、実際はこんなもんか。


「何か言いたそうだな」


おっさんの顔が少し強ばる。

「いや、別に、老けてるとか思ってないっすよ、うちの両親が若く見えるだけかーって思っただけです」


「灯さんは昔から美人で有名だったからな、学校では知らない人間が居ないくらいだった」


姉ちゃんも母ちゃんにそっくりだからな。頷ける。


「貴様も灯さんにそっくりだ。大和の血をまるで感じない……いや、雰囲気は似てるか」


そりゃ俺と姉ちゃんは顔がそっくりだから自動的にそうなるよな。

この組長さんが俺に会いたかったのって、俺が母ちゃんの子供だからか?


後、何となく、親父のことを嫌ってそうだ。確証は無いが、親父の名前を口に出す時だけ、少し眉が下がってる。


「母ちゃんのこと、好きだったんすか?」


おっさんが目を見開く。


「ば、バカを言うな!!」

机から身を乗り出し、分かりやすく否定した。

この反応はビンゴだ。好きだったと言ってるようなもんだ。


「それ以上近づかないで貰って良いっすか?危険を感じるんで……」


母ちゃんにそっくりって言われた後で、母ちゃんに恋してたってなると、顔がそっくりな俺は、このおっさんの恋愛対象に入っていそうで怖い。


「ふざけるなー!!!!性格が違う!灯さんは貴様のように無礼な人間ではない!!!!」

更に身を乗り出し、おっさんが俺の胸ぐらを掴んだ。その時、客間の引き戸が、スーーっと開かれた。


「死にますか?逝きますか?飛びますか?」


「待て沙織!私はパパだぞ!っぐぅ!」


沙織さんが言いながらスタスタと入ってきて、言い訳途中のおっさんの手を銃底で叩いた。


「すぅ」

小さく息を吸う音が聞こえた。と次の瞬間右足を振り抜いた。


おっさんの巨体は畳へと叩き付けられ、沙織さんは続けざまに、おっさんの口の中におはじきを突っ込んだ。


映画でも見てるみたいだ。対応の速さ。感服です。


「ヒットマン系の映画でも見てるみたいっすね」

「ふふふ。かっこよかったですか〜?」

「……ええ」


「それにしても」

沙織さんはおっさんにゴミを見るような視線を向けた。


「悠太くんのこと知ってたんですねぇ」


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