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「ねえゆーたー暑いですーアイス食べたい」

薄着の千秋が右隣でぐったりとソファーに横たわり、俺の右足に頭を預けている。

『お姉さんもアイス食べたい:(;゛゜'ω゜'):さすがにエアコン壊れると暑いね』


同じく薄着の……こいつはいつも通りか。麗奈が左隣に座り、俺の肩に体重を預けてぐったりしている。


確かに暑い。暑いというより熱い。お前らがくっついてるからだ!と叫びたい。だけど叫ぶと尚更暑いから、そんな気力すら湧いてこない。



今朝方、暑さを感じて起きてみたら、まず寝室のエアコンが、うんともすんとも言わなくなった事から一日が始まった。



そして補講初日の今日は昼まで補講を受け、一旦帰ってくると、雪兄から遠出しなきゃ行けなくなったから急遽千秋を預かって欲しいと頼まれたのが昼過ぎ。

姉ちゃんから、今日は帰れない。と連絡が来たのもその頃だった。


千秋を連れて誘拐犯の捜査に行くわけにも行かず、涼夏に断りに行くと、

「気にしないでっ!私たちで犯人見つけちゃうから!」

と快く快諾してくれたので、それに甘え自宅で千秋、麗奈とのんびりしていたら、リビングの、エアコンまでもが壊れた。


姉ちゃんはいない。お隣の涼夏もいない。雪兄もいない。寝室のエアコンも、リビングのエアコンもご臨終。

外には誘拐犯がいる可能性がある。


詰みだ。俺たち詰んでるよな。


こんな事になったのは俺たちが住む時に、エアコンを最新の物に取り替えて居なかった、親父のせいだ。


ちくしょう親父め……10年以上経ったエアコンだぞ。いつ壊れてもおかしくないだろ……いや。俺たちは時代の最先端に頼りすぎていたのかもしれない。


「暑いな……窓開けてるのに熱風しか入ってこねえ」


『君と出会うまでエアコンの無い生活をしてきたけど……もう無理だね、お姉さんもう戻れないよぅ……』


「悠太と麗奈さんって最近出会ったんですか?」

千秋が食いついてきた。目を輝かせ、俺の膝から身を起こして。

年頃の女の子だからやっぱそう言うのは気になるのか。


「こっちに戻ってきてすぐだから4ヶ月になるのか。思ったより短いんだな」


思い返して見るとまだそんなもんか。思い出の濃度が濃すぎて一年以上一緒にいる感覚になる。


「へぇー。なんか仲良さそうだったので、ずーっと一緒なのかと思いました」


「ずっと一緒と言われたら……否定できないな。足を折って入院した時もずっと傍にいたぞ」


「ずっと?麗奈さん学校はどうしてたんですか?」

『お姉さんは優等生だから1ヶ月休んだくらいじゃ先生に怒られないよ(/ω\)』


「怒られない代わりに留年確定になってるじゃねえか」

『そのお陰で君と一緒に居られるんだから君も嬉しいでしょ?(o´艸`)』


「……まぁな」


「悠太がデレましたよ。麗奈さん!悠太がデレましたよ」


「うるせえよ。俺はいつも素直だ」


『悠太は素直とは程遠いよ(;´・ω・)』


千秋も変な夢さえなければ、普通の女の子なのだろう。

色んな事に興味を持って、普通に笑って、泣いて。



夢……夢!?

「千秋!その……夢は最近どうなんだ?」


見つけたかもしれねえ。今回の事件を解決する糸口。


「最近は見てないよ……どして?」


千秋は悲しげに暗い顔を落とし、拳を握った。

この能力が原因で住むところを失ったわけだから嫌なのも分かる。


「お前が夢を見ない限り。今回の事件……被害者はまだ死んでないって事だよな!?」


「あ、そうかも!」

今回の件だけじゃない。

こいつの夢に上手く介入出来れば、犯罪を減らす事も出来るかもしれない。恐るべし……千秋。


嫌な物をいい物に出来たら、こいつの心も少しは救ってやれるか?


「千秋……お前すごいよ。可愛くて有能とか最強じゃん」

「……え?告白ですか?ロリコンなんですか?」


ばっかそんなこと言うと!


恐る恐る麗奈の方を振り返る……俺の肩に頭を預けたまま、チラッと目が合った。


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