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「麗奈さんばかり悠太くんの隣に座ってズルいんですよ〜。うりうり〜」


私怨混じりの戯言だ。沙織さんは麗奈の脇腹を擽る。


今日の沙織さんは本当に子供っぽい。

でもそいつ、擽り効かないよ。


擽り合って大爆笑した方が負けってゲームを挑まれた事があった。ノって後悔したぜ、直立不動で見下ろされたんだもん。


『擽りなんてしょうもない攻撃はお姉さんには効かないよ((( ̄へ ̄井) フンッ!!迷惑だから大人しく座りなさい』


「擽りも効かないなんて、麗奈さんは最強ですねぇ」


『( *¯ ꒳¯*)フフンでしょでしょー』


「美人ですし、あ、隣座ってもいいですか〜?」


『お姉さん美人(*´ω`*)いいよ。悠太つめて』


雲行きが怪しくなってきた気がするが、麗奈に言われた通り、奥へ移った。


「普通なら喋れないってハンデも、麗奈さんの強みですよねぇ。クールでミステリアスな所もかっこいいですよ〜」


『お姉さんがクールでミステリアス?』


初対面の人間なら、間違いなくその評価は正しい。

俺も最初はそんなイメージを持った。そのイメージもすぐにぶち壊されたわけだが。


「ですよ〜。スタイルも抜群で本当高嶺の花って言葉がよく似合いますねぇ」


麗奈の眉がピクリと動いた。

『スタイル?( ๑º言º)』


ナンパ失敗か?麗奈は貧乳だから沙織さんにスタイルが良いって言われても、麗奈が当て付けにしか感じないのは無理もない。


でも、スタイルが良いってのは俺も同感だ。

全体的に見てバランスが良い。俺は別に巨乳好きでもないからな。


「全体のバランスって言うんですかねぇ、麗奈さんのスタイルは神がかってますよ〜。私はほら、身長がありませんから」


自分を下げつつ麗奈をよいしょする沙織さん。

煽てられた麗奈は、とても気を良くしたようで、掠れ気味の蚊の鳴くような声で、さおり、と呟いた。


とは言っても声は出ないから、空気の音だ。


「だから悠太くんの隣に座らせてください」


狙いはそれか。

上機嫌だった麗奈が固まる。きっと心の中で、友情と自分の欲望、どちらを取るか葛藤しているのだろう。

もっとも、それは仮初(かりそめ)の友情だ。


チョロいって言葉はそのまま麗奈にお返ししよう。

お前は確実に俺よりちょろい。



『私の( ๑º言º)』

散々迷った末、麗奈が返したのは、一言のみだった。


「んー、だめ……ですかぁ?」


上目遣い。潤んだ瞳。不安げに下がる眉。男性の理性を一瞬にして消しさる必殺技だ。


頼まれた男は絶対断れない。中身を知らなきゃ、いや、中身を知ってても破壊力は抜群……だけど麗奈は女性だ。同性にその技が効くわけが

『……駄目。じゃない。少しだけなら』


あったようだ。

麗奈が一旦席を立ち、晴れて沙織さんが真ん中の席を手にした。

ファミレスの席に3人横並びって意外と狭い。


「さっきから自分は関係ないってツラしてますけど、遂においつめましたよ〜」


手をワキワキすんな。麗奈が守ってくれるからほっといても平気だろ。

『悠太に変な事したら追い出す٩(๑`^´๑)۶コラ』


沙織さんの凶行を止めようと、麗奈が肩を掴んだ。


「ふふんっ、座ってしまえばこちらのものですよー!」


だが、構わず沙織さんは俺のスカートに手を伸ばしてきた。

「それ以上……手を伸ばしたら逮捕っすよ」


裾を掴んだところで告げた。

ぶっちゃけ下着を見られたところでダメージはない。

だけど格好が格好なので嫌だ。捲られたら全力で被害者ぶってやる。


「逮捕が怖くてヤクザを名乗れますかー!!」


鼻血を垂らし、勢い任せに、沙織さんは欲望の赴くがままに、スカートをバサッと捲りあげた。

通りすがりのサラリーマンの目線が俺に向く。大丈夫。腰をズラしたから立ってる人からは見えない。


「麗奈さん……目を塞がないでくださいよ〜」




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