30頁
30
俺が密かに好意を寄せる自称、年上の綺麗なお姉さんに弄られる毎日、これが思春期の中学生、高校生だったら色々拗らせてるところだぞ。
だが俺はそう簡単には堕ちない。断言出来る。何故なら、俺には美人で優しい姉ちゃんが2人も居るから年上のお姉さんに対する免疫は、幼い頃より鍛え上げられている。
そこに恋という要素が加わるからドギマギしてしまうんだ。
だが、男性恐怖症の麗奈に淡い俺の恋心を伝えるのはタブーだ。
こいつの俺を見る目は時々?いや、割と頻繁に不純だが、俺の力になりたいって純粋な気持ちで傍に居てくれる……のだから、俺もその気持ちに応え、この恋心を抑えなくてはならない。
「可愛いんじゃねえか?」
俺は気持ちを隠すようにぶっきらぼうに答えた。これでも頑張った方だ。
『ふふふ、君は素直じゃないなー(*´ω`*)』
「……ていうか、聞かなくても答えはわかるだろ。聞く必要ねえじゃん」
『女の子はいつでも可愛いって言って貰いたいものだよ(o´艸`)乙女心が分からないなんて君は残念な子だ( ๑´࿀`๑)=3』
その言ってもらいたい対象って、ただしイケメンに限るんじゃないのか?
口にしたくはないが、姉ちゃんに似てる俺はどちらかと言うと可愛い部類に入るから、そんな俺から可愛いと言われてもノーカウントだと思うんだが……。
まあ、麗奈が誰にでも可愛いと持て囃される事に快楽を覚えるタイプであれば俺に可愛いと言われたいのも頷ける。
『お姉さんは誰にでも可愛いって言ってもらいたい訳じゃないよ(/ω\)』
…………心を読まれた。
「心を読むなよ」
『君の考えてる事なんてまるっとお見通しだよm9(^Д^)』
麗奈は某ドラマのように俺を指を指しながら、スマホを突きつけてきた。
もっと可愛い顔文字はなかったのかよ。その顔文字じゃ俺を煽ってるようにしか思えない。
「涼夏にも言われたことあるけど……俺って考えてる事全部顔に出てるのか?」
もしかしてこの気持ちもバレてたりしているのだろうか。
『顔というか、君の事はわかるよ。何となくだけど』
「じゃあ、今俺が考えてること……わかるか?」
『麗奈可愛い。大好き。愛してる。めちゃくちゃにしたい。女装プレイでめちゃくちゃにもされたい』
「そこまで変なこと考えてねえよ」
麗奈の額にチョップ。痛くないくらいの軽いチョップ。麗奈は大袈裟に額を抑えて恨めしく俺を見つめている。
可愛い。大好き。の所までは当たってて内心ぶっちゃけ焦ったが後半から嘘の大行列だったから大丈夫。気持ちまでは見抜かれていない……はず。
『女の子に暴力振るうなんて酷いよ。゜(゜´ω`゜)゜。』
「大嘘並べ立ててんじゃねえよ。ま、まあ、俺もお前の考えてることくらい、まるっとお見通しだけどな」
『ほんとかなぁ?当ててみて』
「悠太可愛い」
『正解。麗奈検定合格(*'▽'*)♪』
「逆に言うとそれくらいしか考えてないだろ……」
『( ๑º言º)』
麗奈はスマホの画面にロックを掛け、ポケットにしまうと俺を正面から抱きしめた。
抱きしめた手を背中でクロスさせ、俺の脇腹へと手を伸ばしてきた。
「あっ、あっはっ。ひゃめ、あははは!」
擽られ、笑いたくもないのにくすぐったさに声を上げ笑ってしまう。俺の体は敏感だ。くすぐりにめっぽう弱い。
「おとっ……あはっ、おきちゃぁ!あはははは!!」
折角失神させたのに起こしてしまったら元も子もない。身を捩って抵抗するが、麗奈のロックは硬く逃げられそうにない。こうなったら目には目を歯には歯を、くすぐりには擽りを。
俺も麗奈の脇腹を擽った。反応はない。化け物かよ。
「あっはっも、やめ!あっ」
ヤバい、誰かこいつを止めてくれ、笑いすぎて……死んでしまう。
「……気絶した敵を前に何を2人でイチャイチャしてるんだ」




