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「なるほどねえ、それで幼なじみから頼まれちゃったわけだ」

「いや、俺の意思だよ」

「へえー。ヒーローみたいだね。誰でも助けちゃうの?」

「俺にも込み入った事情があってな……自分の手の届く範囲は助けたいと思ってる」

俺が言い切ると、女の子は、はにかみながらくつくつと笑いを押し殺した声を上げた。

「君、早死するタイプでしょ」

「どうだろうな。少なくとも今は生きたいと思ってるが」

麗奈の笑顔を見るまでは死ねないね。


「ふむふむ。なるほど。君はそういうタイプなんだーっ」

続けて女の子はよいしょと言って立ち上がった。

「君のお友達もそろそろ来るでしょ?邪魔になっちゃいそうだからいくね」

「あ、あぁ」

聞きたいことは全部聞いたって言わんばかりの手のひら返しだな。これだと俺の手の内を明かしただけな気がする。


「おばあちゃんには黙っといてあげるから。頑張ってね!」

そう言って女の子は俺に背を向けて足早に去っていった。

おばあちゃん?思い当たる節は一人しかいないけど……もしかして理事長の孫?そんなまさかぁ、言われたら俺終わりじゃん!

いや、助けたんだから感謝はされても文句言われる筋合いはねえぞ。


……うわぁ、名前明かし損じゃんか、俺。あいつの名前も結局聞き忘れた。



女の子が居なくなって10分くらい経っただろうか。

座って男を見張ってるけど起きる様子は一切ない。死んでねえよなこれ……。

かと言って起こす訳にも行かず。俺も満足には動けないから放っておくことしか出来ない。


位置情報を見る時に現在地を確認したが、みんなを撒いた場所から大体徒歩で30分くらい離れてるから、少なく見積ってもあと10分くらいはかかるはず。

あいつらが俺の居たとこと真逆の方向を探していたとしたらもう少しかかる。


あれ?ここでこいつが目を覚ましたら俺やばくね?

そう思った瞬間、モゾっと男の体が動いた気がした。

目を覚ますなよ?流石に殺しはしたくねえ……。

一応大きめの石を持っておくか。もし起きようもんならこいつで……!


「…………ぅう」

男が呻き声を上げた。起きるな、起きるな、頼むから俺の手は汚させないでくれ。

も、もうすぐ魔王こと琥珀さんが来るからそれまで寝てろ。

男の肩がビクッと動いたが、それ以降目立った行動は無かった。


『じー( ⚭-⚭)』

「んあ?」

男の動きに注視していると、目の前にいきなりスマホが差し込まれた。麗奈の仕業だ。

麗奈のしなやかな指が動くとスマホの文字が消え、続けて文字が打ち込まれた。

『君、約束』

ぶちぎ麗奈と言ったところか……。

「約束を忘れた訳じゃねえよ……ちょっと道に迷ったら出くわしたんだ」

言い終わり後ろを振り向いた。麗奈と目が合う。余程急いで来たんだな……麗奈の頬は赤く染っており、息も切れていて、額からは汗が流れている。


『嘘。君が最初から別行動しようとしてたのお姉さんは分かってた』

見抜かれてたか、罪を重ねる前に謝るか。

「……ごめん。でも見つけたらちゃんと呼ぼうと思ってた」

『うるさい。言い訳するな。心配かけて。この馬鹿』

「ごめんなさい」

『よろしい。続きは家に帰ってからね。もうすぐ皆来るから』

「うん」


麗奈をここまで怒らせたのは、静香と海を助けた時以来か。あの時は謝りまくって許してもらったけど今回はどうだろうか。心配かけてごめん。

『これ。水』

麗奈がペットボトルをカバンから取り出しキャップを開けて俺に差し出して来た。

「ありがとな……熱中症になりかけてたから助かる」

麗奈に礼を言って水を受け取ろうと手を伸ばすが、俺の生殺与奪の権を握っている麗奈は水を俺から遠ざけた。


「おいっ」

スンスン、麗奈は俺の体に顔を近ずけると、匂いを嗅いだ。

「汗臭いだけだろ」

『女の匂いがする。誰かを助けたって言ってたけど……だれ?』

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