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――――――――――――――

それはそれは重たい一撃を頭部に貰っただけで済んだ俺の顔は腫れてはいなかった。

大きなタンコブを作ることになったが、見ただけでは分からない程度なので女装に影響はなかったようだ。


涼夏の服で着飾され、アクセサリーとかその類のものを勝手に付けられ、年上のお姉さん2人にオモチャにされ、無事、制服由奈ちゃんが爆誕していた。


つまりは俺が寝てる間に文字通り女にされていた。言葉のチョイスに悪意はある。

こいつらは鬼だ、悪魔だ、寝ている内に裸にされたなんて恐怖でしかないぞ…………。


ちくしょう。俺の男としての尊厳はどこへいった?思えばこの街に帰ってきたあの時からそんなものは存在していなかった気がする。


「いつまで不貞腐れてるのさー」

学校指定のジャージに身を包んだ涼夏が声を掛けてきた。

「蹴られて気絶してるうちに服を脱がされてたらお前はどうする?」

「私ならそんな不届き者の手は切り落としちゃうね」

「ほう……じゃあ腕を出してもらっていいか?切り落としてやる」

「きゃーこわーい!美鈴たっけてー!」

分かりやすく。そしてあざとく。泣き真似を披露。自分の肩を自分で抱きしめた涼夏は小走りで美鈴に泣きついた。

美鈴は涼夏を優しく抱きしめ俺を睨んでいる。

泣きたいのはこっちの方だっての、俺もここで泣き真似してやろうか。

「ん?なんだよ」


麗奈が俺の顔を見つめている。じーっと穴が開きそうなほど。それから麗奈は腕を広げた。

「お前も敵だからな?間違ってもお前に泣きついたりしねえよ」


俺には分かる。こいつと琥珀さんと涼夏が、ウッキウキで俺を脱がして着替えさせたことを。憶測だが、これまでの経験上わかる。

恐らく、内心はウキウキしながら「可哀想よーやめてあげなさい」とか口では止めることを言いつつも「……下着も着替えさせたらどうかしら?」とか言って協力したのが唯だと予想する。

美鈴は知らん。涼夏スキーだから協力したんじゃね?


『お姉さんはいつでも……君の味方だよ?(/ω\)』

もっと違う場面で聞きたかったぜ。そのセリフ。

「お前も涼夏も……みんな許さないからな。フン」

腕を組んで怒っているぞと鼻を鳴らし、顔を背けた。

「あの子野蛮ねー。任せなさい涼夏……私が手篭めにしてきてあげるわ」


めそめそ泣き真似をしている涼夏の肩に手を添え、決意をしたように握り拳を作った。

そしてセクハラジジイのような下卑た笑みを浮かべると、手をワキワキしながら近づいてきた。


「やめろ!お前には涼夏が居るだろ、そいつなら好きにしていいから俺には近づくな」


麗奈を盾にして後ろに隠れ、変態に幼なじみを売るクズな俺。俺だって我が身が可愛い、見た目の話じゃなくて比喩だが。


「ふふふふふふ!由奈ちゃんを堕として、涼夏と3人で…………ふふふふ」

駄目だ、トリップしてて聞こえちゃいねえ。

だが俺には俺の身を守ってくれる鉄壁の年上お姉さんが居る。俺が欲しけりゃ、こいつを倒してから

「わ、なんだよ麗奈!」


信頼している味方からのまさかの裏切りだ。麗奈に首根っこを掴まれて変態の前に出された。

「あら、唯一の味方も失ったようね」


頬を紅潮させ、妖艶に舌なめずりをして俺を見下ろす美鈴に、俺は決して鼓動を高鳴らせてなどいない。

これはトキメキじゃない。間違いなく恐怖だ。


『お姉さんは敵なんでしょ?』

「あんなのただの冗談だろ!?」

『冗談でも、敵って言った君をお姉さんは許さない(o´艸`)』


万事休すか。俺は変態の王に食われる運命だったのか……。

援軍は見込めそうにない、前門にオープンな変態、後門にむっつりな変態、俺に逃げる術は……ない。

「……くっ。殺せ」


恨み混じりに美鈴を見上げて言った。俺は百合は好きだがお前のような変態には屈しない。



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