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まるで露出狂の戯言みたいな事を自信満々に言われましても……その言い分で納得する奴は頭がどうかしてる。早めに病院に行く事をオススメするね。
「堂々と恥を晒してどうすんすか」
「恥か。少年は葉月さんや菜月さんに似てるから絶世の美女と呼んでも過言では無いのだがなあ」
あの二人と顔が似てると言われて嬉しくないことはない。でも俺は男だ、どうせ言われるならカッコイイって言われたい。
『悠太は見た目は可愛いけど、中身はカッコイイよ(o´艸`)』
麗奈、お前のフォローが身に染みるぜ……。控えめに言って好……いかんいかん。
「……ありがとよ」
露骨に喜ぶと内心がバレてしまうかもしれないので、照れ隠しと共にそっとお礼の言葉を添えた。
「照れてる少年も可愛いぞ!」
今日の可愛い攻撃はなんだ。どいつもこいつも寄ってたかって可愛い可愛いって言いやがってストレスが溜まる一方だ。どこかにぶつけたい気分になってきた。
そうだ、ちょうど目の前にからかい甲斐のある人がいるじゃないか。
「琥珀さんは見た目も中身も可愛いっすけどね」
「かかか、可愛いってゆーなーー!!!」
感情が昂った琥珀さんが思い切り拳を引き、俺に目掛けストレートを放った。俺は涼しい顔をしてその拳を避けた。
「いやー可愛いっすね。マジ可愛い」
尚も茶化す俺。懇親の一撃を避けられた事で下を向き、拳をギリリと握りしめて羞恥に耐える琥珀さんは可愛い。
危なかったー!今の一撃を貰ってたら俺は間違いなくアンパンマン見たいな顔になっていただろう。
ぶおん!って音がなったぞ、ワンチャン昔読んだマンガみたいに顔面の半分が無くなるまである。
だが、やり過ぎも禁物だ、これくらいにしておこう。
今考えた事が現実になる恐れがある。
「わっ!なんだよ!!」
琥珀さんの動きを警戒していると、麗奈が急に掴みかかってきた。
『ねえ、お姉さんは?ねえ、可愛くないの?』
俺の胸ぐらを掴み、揺さぶり、鬼気迫る勢いな麗奈の瞳には一切の光が宿っていない。
無表情さも相まって、昔見た浮気しまくりの主人公をヒロインが惨殺するアニメを思い出した。
「可愛いに決まってるだろ。つーかお前がナンバーワン。お前以上に可愛い奴なんて見た事ない」
麗奈から感じる恐怖に慌てて取り繕うと、俺の胸ぐらを揺さぶっていた手は次第に止まり、気を良くしたのか俺の頭を撫で始めた。
『お姉さんが1番(*´ω`*)菜月を抜いて?』
「あぁ、姉ちゃんよりお前の方が可愛いぞ」
「……そんな、少年……私で遊んでいたのか」
今にも泣き出しそうな悲壮感漂う表情で俺を見つめ、握っていた拳をとき、俺に手を伸ばした。
「……ゃ」
その手を麗奈が払う。
あっ、やっちまった。これ収拾つかないやつじゃん。
「何故だ麗奈!私にも少しくらい少年を分けてくれたってイイジャナイカ」
ヤンデレが2人!?
『コレハワタシノ、コハクニハアゲナイ』
「ひぃ!」
短く悲鳴を上げたのは俺。
どこで選択肢を間違えたんだ俺は、思えば琥珀さんを可愛いと揶揄していたのはいつも麗奈の目の前だった気がする……。
「……2人とも落ちつけよ」
『君は下がっててお姉さんが守るから(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑』
麗奈が俺を背に隠して、琥珀さんに対峙する。お前は勇者で琥珀さんが魔王……俺がお姫様かよ!
「なんで私が悪役なんだ!」
『私から悠太を盗ろうとするから』
「何を言ってるんだ!麗奈共々私のものだ!!」
『それはない(๑ー̀ωー́)キリッ』
グサッと琥珀さんの心を切り裂く擬音が聞こえた気がするのは気のせいだろうか。
と言うか麗奈は前々から琥珀さんに対しての扱いが、ぞんざい過ぎる。
「あまり琥珀さんを虐めるなよ。可哀想だろ?」
『琥珀は強い子。これくらいの苦難では折れない』




