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すぐにラインが返って来た。
『助かる!食べ物は好き嫌いはないから出せば何でも食べる!読書が好きで没頭するから程々でやめさせて睡眠時間はよく取らせるようにしてくれ!』
まるでペットの様な扱いだな。
その本人は、必要なものは全てカバンに詰め込んだ様で、布団を丸めて縛っている。
その様子を眺めつつ、今度は姉ちゃんに、麗奈が今日からうちに来るけど大丈夫?とラインを送ると、
『いいよ、じゃあ今日は別で寝るって蓮さんに伝えておくね』
とすぐに返って来た。
どうも身近の人達は理解が早いみたいだ。
布団を縛り終わったのか、スマホと俺の顔の間に麗奈のスマホが差し込まれた。
『準備完了です、行きましょう(`・∀・´)』
と書いてあり、俺が頷くとスマホをしまって、旅行カバンを手にしている。
仕方ない、布団くらい運んでやるか。
「じゃあ行こうか」
布団を肩に担ぐと、枕も手渡された。
スマホで字を打つから
『お姉さんの匂いどう?君、ムッツリだから嬉しいでしょ(*'▽'*)』
いいいいい匂いだと思うがそのまま言ったらただの変態だ…無視だ無視。
「ほら、いくぞ?」
麗奈を連れだって外に出る。
麗奈が鍵を閉めるのを待って2人で階段を降りる。
『琥珀はお風呂入れてくれたけど、君もお風呂入れてくれるの?』
はい?失礼だけど頭沸いてんすか?
無言で琥珀さんに、麗奈ってお風呂も琥珀さんに入れてもらってるんです?とメッセージを送った。
そして帰ってきたメッセージを確認すると、そのまま麗奈に画面を見せる。
その画面には『いくら顔が可愛いからって通報するぞ変態野郎』と書かれている。
『(๑´ڡ`๑)てへぺロ♡』
本人も無表情で舌を出しているがシュールだ。
「これ以上俺を困らせる様なら家に帰す!」
『お姉さん君のことからかい過ぎちゃった(⌒-⌒; )ごめんね(>人<;)』
「わかればよし、どうしてもだったら姉ちゃんと入ってくれ」
『そっか!お姉さんも居るんだもんね、お姉さんもしっかりしないとね(^_-)洗濯機なら任せて!料理も教えて!』
意外と向上心はあるのかもしれないな。
寄生先として、だけで慕われてるわけじゃないのな。
「おう、俺にもそんな出来るわけじゃないけど教えるよ」
麗奈がトラウマを克服して、笑える様になって、好きな人が出来て…いつか離れて暮らす時が来るだろう。
その時までは、俺がみんなにしてもらった様に、俺が麗奈を支えていこう。
『ありがとうね(*゜▽゜*)』
「おう、ほらあそこが俺の家だよ」
『おっきな家だね(о´∀`о)』
門の前に誰かが立っている、姉ちゃんだ。
「おかえり悠太、貴女が麗奈ちゃん?」
『わー!君のお姉さん瓜二つで綺麗だねえ!(*´꒳`*)秋山麗奈です、本当にお世話になってもいいんですか?ご迷惑じゃないですか?(>人<;)』
俺に対する態度と全然違うじゃねえか、猫被ってやがる。
姉ちゃんも綺麗と言われて満更でもなさそうだ。
「麗奈ちゃんもすごく綺麗だね、いいのよー、部屋も余ってるし、新しい家族だと思ってね」
『ありがとうございます、お姉ちゃん(о´∀`о)』
「悠太、何この可愛い生き物!たまらないわ!」
すごいな、完全に姉ちゃんは麗奈を気に入ったようだ。
「近所迷惑になるから中に入ろうぜ」
2人を置いて門をくぐる。
「そうね、麗奈ちゃん、入りましょ」
中へ入り、麗奈の部屋に案内するため、3人で2階に上がる。
「今日からこの部屋が麗奈ちゃんの部屋よー隣が悠太、反対側が私の部屋、寝室はその隣よ」
葉月姉ちゃんの部屋ではなく、俺の隣の部屋だ。
『私の家より広い(*´∇`*)寝室?』
まさかバカ姉、麗奈も一緒に寝かせるつもりか?それなら自分の部屋で寝る様にできるチャンス?
「そうよ、私達家族は一緒に寝るルールよ、麗奈ちゃんもどう?」
『喜んで(о´∀`о)やったね、お姉さん達に挟まれて君は両手に華だね』
どうせ無駄になりそうだけど説得だけはしておくか。
「倫理的に良くないだろ、姉ちゃんだけでもギリギリアウトだと思ってるのに、婚前の男女が同じ布団で寝るなんて駄目だ」
「麗奈ちゃんももう家族なんだから問題ないわよ?」
『そうそう、もう姉妹なんだから(o^^o)』
ナチュラルに妹扱いするな。
「家族でも、俺ももう高校生だから駄目です」
「それなら仕方ないわね」
初めて意見が通った!?流石に姉ちゃんもわかってくれたか!
「付いてるから問題があるのよね、ちょん切っちゃいましょう」
「いやー、今日から姉ちゃん達と一緒に寝るのかーボク楽しみだなぁ!」
ちくしょう……俺に人権は無いのか…
取り敢えず部屋の案内もしたので、3人でリビングのソファーに腰掛けている。
姉ちゃんと麗奈で隣を取り合った末に2人で座らせ、俺は対面に座っている。
「でも麗奈、俺と寝るなんて大丈夫なのか?」
『自分でも不思議だけど君だけは大丈夫(゜∀゜)見た目が男性には見えないからなのかな?』
今回に限っては、このコンプレックスの塊である女顔に生まれてよかったのかもしれないな。
俺だって出来れば雪兄みたいなイケメンに生まれたかった…。
『だからかな、初めて仲良くなった男の子だから距離感わからなくなっちゃってついついからかい過ぎちゃう_:(´ཀ`」 ∠):』
「いいのよ、もっと振り回してあげて、この子ほっとくと夜遊びして、喧嘩ばかりして手のつけようがなくなっちゃうんだから」
こっちに来る時に、そういった行動はしないと心に誓ったけど耳の痛い話だ。
『だから昨日私を助けられたんだね(*'▽'*)』
「昨日?」
姉ちゃんが訝しげな表情をしている。
やべぇ、何て言い訳しよう。
『昨日私…公園で変な人に襲われそうになって…もう駄目だって思った時にこの子が飛んできてボッコボコにしてくれたんですよ(*゜▽゜*)』
「ふむふむ」
『やり過ぎだとは思ったけど、救われたので怒らないであげてください(>人<;)』
ゴクリと息を飲み、次の姉ちゃんの言葉を待つ。
姉ちゃんは少し考えているようだ。
「怒らないわよ、よくやったわね、悠太、やり過ぎはよくないけど、立派よ」
「目の前であんなことされて、しかもあの公園だ、葉月姉ちゃんとダブって見えたんだよ」
「それでも、麗奈ちゃんを守れたのだから胸を張りなさい。そうね今後、その拳は誰かを守る時だけ振りかざしなさい」
今なら、姉ちゃんの言いたい事は分かってるつもりだ、俺の武術は葉月姉ちゃんに教わったものだ。
「これ以上、葉月姉ちゃんに顔向け出来ない事はしないよ…」
と言うと姉ちゃんがニッコリ微笑んで俺の頭を撫でた。
何故か麗奈も同様に頭を撫でている、まあいっか。
「それじゃあ順番にお風呂入って来なさい、これ以上遅くなると明日辛いわよ?」
姉ちゃんに言われて時計を確認すると、ジャスト23時、良い子は寝る時間だ。
「姉ちゃん、麗奈をお風呂に案内してやってくれよ、俺洗い物するから」
「わかったわ、麗奈ちゃんこっちよ」
姉ちゃんが麗奈の肩を抱いて風呂に向かっていった。
先に入らなかったのはもちろん、麗奈のお風呂乱入を避ける為だ。
本気で女の子されてる気がするからな、自衛大事。