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自宅に戻るために外に出ると、スマホが震えた。
ポケットから出して画面を見てみるとラインの通知に麗奈の名前が表示されていた。
なんだろう。ロック画面を解除して内容を確認する。
『助けて』
「っ!!!!」
再び麗奈の家に向け走り出した。
女性の一人暮らしだ、何かあってからでは遅い。
麗奈の家まで、3分もしないうちに辿り着き、息が上がり苦しい胸を押さえつつ、インターフォンを鳴らす。
ガチャン!勢いよく扉が開き、無表情の麗奈が飛び出し、飛びついてきた。
そしてスマホに文字を打ち込み、見せてきたスマホに書かれていたのは…
『ゴキブリが出たのー!(´;ω;`)琥珀に言っても来てくれないし!』
なんじゃそりゃあ。
安堵に、その場に崩れ落ちる。
心配して損した気分だ。
きっと琥珀さんもこう言った体験を良くしているのだろう。
「いきなり主語のない助けてはやめろ、麗奈の身に何かあったんじゃないかって気が気じゃなかった」
『だって!ゴキブリが出たんだもん!(´;Д;`)』
「だってじゃねえよ。本当に困った時誰も来てくれなくなるぞ?」
『ごめんなさい(>人<;)』
「取り敢えず離れてくれ…その、当たる…」
『君も男の子なんだね、興奮した?(//∇//)』
この先輩1人にしておいたら駄目だ、防犯の点においても、煽りについても、教育の必要がある。
確かに私生活も心配だし、姉ちゃんに甘える形にはなるが、うちで預かろう。
まあまずは
姉ちゃん達に連絡だな、何も言わずに飛び出してきたから心配してるかもしれない。
スマホから姉ちゃんを探し電話をかけると、ワンコール経たず通話がつながった。
「どこでなにしてるの?」
これは怒ってるな。間違えたら殺される奴だ。
「姉ちゃんわりぃ、麗奈から助けてってラインが入って、来てみたらゴキブリだったわ、終わらせてすぐ帰ります」
「ゴキブリだったら仕方ないわ、あいつら怖いもの…悠太、容赦はいらないわっ、徹底的にやりなさい」
「お、おう、じゃあまた後でな」
通話を切った。
早く終わらせて帰ろう。
「麗奈、奴は俺に任せろ」
ゴキブリ退治だ。
玄関に置いてあったスリッパを手に取って忍足で麗奈の部屋に入ると、正面の壁に黒い点のようなものを見つけた。
奴は、俺にお前は殺せない。と言わんばかりに歩みを止め、壁に張り付いて存在感を放っている。
全身全霊だ、一瞬で仕留めてやる。
「しねええええ!」
すっぱーん!
俺の目の前に現れた時点で、お前の死は確定した…。
もちろん一撃で仕留めた。
葉月姉ちゃんに鍛えられた体術をフルに発揮してな。
ティッシュを何枚か手に取って、ゴキブリを包み、ゴミ箱に捨てた。
来世は別の生き物に生まれ変わって幸せに暮らせよ。
「麗奈、もう大丈夫だ」
『ありがとう!( ;∀;)君が来てくれなかったらお風呂で寝るところだったよ(´∀`*)』
「大袈裟な…そうだ麗奈、話がある」
どうせ来たんだ、あの話をしておこう。
「姉ちゃんから許可が出たんだ、良かったらうちで一緒に暮らさないか?」
『いいの!?ご迷惑じゃない!?(°▽°)』
「あぁ、部屋は余ってるからいつでも来てくれ」
と言うや否や麗奈が押し入れの中からでかい旅行カバンを取り出し、衣服などを詰めている。
いつでもとは言ったけど、そう言うのって準備がいるんじゃないのか?
琥珀さんが朝来て居なかったら心配するだろうし。
でも言っても聞かないだろうな。
「…はぁ」
呆れながらスマホを取り出し、
琥珀さんの大事な親友はうちで預かりますっと打ち込んで琥珀さんにラインを送る。