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83頁


まさか高校生の俺が本気でそんなことを言っているはずがないと鷹を括っているのだろう。

半信半疑でビビってはいるが、まだ余裕そうだ。


「切腹ならこれで充分ですよね」


伏見さんは刃渡り30cmくらいの短刀を懐から取り出すと、俺に手渡してくれた。

それをまずは内藤の目の前に置くと、出来るだけ狂気を押し出しニッコリ笑った。


「まずは社長のお前が手本を見せてやらないとな!後のもんに示しがつかねえよな!大丈夫、その後こいつら全員ちゃんと切腹させっから!地獄に行ってもお前らは仲良く一緒!女性に乱暴して落ちる地獄は確か衆合地獄って言うんだっけか……刀でできた林の上で誘う女性に群がるがたどり着けない……女好きなお前らにはぴったりの地獄だな!」


内藤の肩を叩きながら言ってやると、ようやく自分の命が俺の一声に握られていると悟ったみたいだ。

口々に詫びの言葉を口にし始めた。都合が良すぎる。それがまた俺を苛立たせる。


「あのさぁ、おっさんらがレイプした神田さんや他の女性は助けてって言わなかったの?これだけ言えばわかるよな?問答無用なんだよ」


静まり返った一同を見下しながら内藤が動き出すのを待つ。社長が終われば次は自分の番だ。部下たちはぶつぶつと恨み言だったり、後悔の念だったりを口にしている。


内藤が短刀を手に取ろうと、震える手を伸ばした。

「ああ、片手が折れてるんだったよな」


鞘から抜き取ってやり、内藤の手にしっかりと握らせた。

こいつが切腹をするなんてこれっぽっちも思ってやいない。そんな度胸があったら金で雇った部下を周りにつけて俺と麗奈を誘拐しようとはしねえ。


ゆっくりと、時間をかけ、自分の腹の前に短刀の切っ先を持っていき、内藤の手は止まった。


俺が期待してるのはむしろ、その先の――――


「お前さえいなければぁぁあ!!!!」


これだ。


「贅肉だらけで遅せぇよ」


「……っぐぁあっ」

内藤は1度は自分に向けた短刀の切っ先を、不意をついたつもりで俺に向け、突進してきた。

読めている攻撃ほどわかりやすいものは無い。冷静に手を蹴りつけ短刀を内藤の手から弾き落とす。

そのまま顔を蹴りつけ仰向けに寝かると、股間を思い切り踏みつけた。確実に潰れるよう全体重を乗せて。

更に内藤のでっぷりした腹に跨ると顔を思い切り殴りつけた。


「ちょっとは度胸見せてくれるのかと思ったけど、思った通りだったわ。残念だよ。でも最初に言った通り今死んだ方がマシだったと思うくらいの生き地獄を味わって貰うから、そのつもりで……な!!!」

左で殴る。右で殴る。殴る殴る殴る殴る殴る。神田さんの分。麗奈の分。全てをぶつけるように気が済むまで。


「少年!もうやめろ!相手は無抵抗だろうが!」

琥珀さんだ。負けを認めたら終わり。それはスポーツの世界であって喧嘩の世界では違う。

負けを認めようが、敵意を削ぎ、復讐の芽を潰しておかないとこいつらはきっと懲りない。


ギラりと睨みを利かせ、周りを一瞥する。部下達は心底肝を冷やした様子で青い顔をして俯いている。頃合か。


内藤から手を離して立ち上がる。

「いいか。二度と日本の土は踏まねえと思うけど、復讐なんて考えねえ方が身のためだぞ。俺は俺の大切な人に危害を加えられそうになったら迷わず殺す。奪われるくらいなら奪う」


全員が動きを止め、静まり返った。

姉ちゃんも親父も、蓮さんも雪兄も、琥珀さんも、姉ちゃんの事を知ってる人は全員。



自分が優位だからと言って弱者を痛ぶり、奪い、見下して愉悦に浸る。

俺はあの時の犯人の目をしっかり今でもはっきり覚えてる、丁度ここに俺が来た時のこいつらの目と同じ

気色の悪ぃ目だ。誰もが畏怖して成敗できないと言うなら、俺がやってやる。


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