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麗奈と涼夏の言うことに気分を良くした俺は、教室に向かうと、昨日とは違う俺を見てて貰う為、2人を教室の外に待機させると勇み足で教室へと入った。


直ぐにこちらをニヤニヤとナメクジのようなねっとりとした視線で見ている橋本と目が合う。

俺が少しだけ顔を伏せると奴は何人かの仲間とヒソヒソ話をしながら笑った。

他にも小声で話し、こちらを見てニヤニヤしている面々はちらほら見える。


全員を相手取る必要は無い、飽くまでいちばん声のでかいヤツの心をおればいい。


俺が顔を上げた時、橋本の表情は驚愕のものに変わった。


大方この辺で俺が崩れ落ちるのを期待していたのだろう。そんな奴の期待を裏切って俺は奴の元へと歩き出した。事件以前、元気だった頃のように気分は不思議と高揚している。

はてさて、俺としては俺を取り戻せたようで中田を含めこいつにも頭を下げて感謝をしたいくらいだけど、それとこれとは話は別だ。


橋本の肩を叩いて袋に詰めたごみを奴の顔の前に持っていき微笑みかける。


「よぉ、橋本くん。プレゼントありがとうな。すごく嬉しくて小躍りしちまったよ」


頭を掴み。顔面にビニール袋をグリグリと押し付けた。

「これは俺からのお礼だ。ありがたく受け取ってくれ」

「ぶっ!うわ!やめ!」

「「お、おいやめろよ」」

もがき苦しむ奴にビニール袋を押し付け続けていると取り巻き2人が我に返り、俺を羽交い締めにして止めてきた。

ちくしょう、筋力不足か。退院当初と違ってこれでも大分戻ったんだけどなぁ。


「舐めやがって……!」

橋本が立ち上がり、拳を振り上げた。

「やれよ。覚悟があるならな」

俺の言葉にビタっと動きを止めた。


「お前も、そこの2人も、やりたきゃやれよ。その代わり徹底的にな?中途半端にしたら次は先制攻撃でボッコボコにしてやるからそのつもりでな」


結局、こいつらも自分より弱い相手を虐めることでしか楽しみを得られないのだろう。

こんな奴らには絶対屈しないと言う気持ちを込め、真っ直ぐと橋本の目を見て言った。俺の言葉を受けた橋本の振り上げた拳に迷いが見える。


「なんだ、なんの覚悟も無しに人を殴ろうとしてたのか……しょうもない」


「こ、この!」

逆上した橋本の拳が俺の頬に刺さった。

「迷いのある拳なんか痛くねえよ」


「ひ、ひぃ」

橋本の拳を受け、それでも目を逸らさない俺を見て奴は小さな悲鳴をあげた。


「俺の何が気に食わねえのか、興味もねえし聞こうとも思わねえけど。人の心の傷に土足で踏み込んだらどうなるかその身を持って体験するか?」


俺を羽交い締めにしたまま呆気に取られて力が緩んだ2人を振り払い拳をパキパキと鳴らす。

それすらも、橋本から見たら俺が強く見えているのだろう。

羽交い締めにした絶好の状態で放った自分の拳を受けて平然とされた上で、その拘束すら解かれちゃあそう見えるのも無理はない。

「ご、ごめんなさい。もうしません!もうしませんから!!!」


「本当か?次やったらこのゴミお前らに全部食わすけど、約束出来る?」

「約束します!二度としません!!!」


根性の足りないヤツらだ。これくらいでビビるなら最初から調子に乗って俺に牙を向けず大人しくしておいて欲しい。


「お前らみたいに人の心の傷に土足で踏み込むような心の汚れたやつらには罰も必要じゃないか?」


周りを見渡すと、昨日俺の噂を真に受け、こいつらと同じようにヒソヒソ話をしていた奴ら数人が顔を下に向けている。


「罰……ですか?」

「そうだよ。罪には罰が必要だって俺の姉ちゃんも言ってた事だし。俺何か間違ってる?」


橋本と2人が顔を真っ青にして俯いた。

「……なにも……間違ってません」


「じゃあ。心の汚れたお前達にはこれから1ヶ月毎朝早く来て学校のトイレの掃除でもしてもらおうか」


「「やりますやります!!」」


まあ、これくらいで心が綺麗になる訳がないとは思っている。


「もちろん。1階から3階まで、教員用のトイレも全部だぞ?後で立花先生にも話を通して置くけど、一日でもサボってたら……分かってるよな?」


「「「ごくり」」」

俺の言葉に3人が息を飲み、頷いた。


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