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目の前に置かれた鏡を見ながら、慣れた手付きで俺の髪を梳かしていく。
それからポニテ、ツインテ、三つ編み、などなど色んな髪型にして遊んでいる。
「たのしいか?」
鏡越しに麗奈がこくんと頷く。
ならいっか。
髪は切らない方がいいかも。
お次はハーフアップ……この髪型は葉月姉ちゃんが良くやってたな。
鏡に映る麗奈がスマホに打ち込み、見せてくる。
『これ似合ってるね(°▽°)とても可愛い\(//∇//)\』
さすが麗奈、知り合って初日だが、わかってるな。
この髪型の葉月姉ちゃんはそれはそれは可愛かった。
麗奈と髪いじりで、やいのやいのしていると、インターフォンが鳴った。
麗奈は無言で俺の頭を軽く撫で、玄関へと歩いていった。
料理して無さそうだし、宅配か?
「麗奈!ちゃんとインターフォンを見て相手を確認しなさいって言ってるだろ?はい、今日の分」
口調は男らしいが女性の声が聞こえてくる。
もしかして、親友さん?
「確かに来るのは私だけだけど……見た目が良いんだからストーカーだったらどうするんだ!?あれ?男物の靴?」
お母さんみたいな人だな。麗奈にも涼夏みたいな人が居たんだ。少し安心した。
「麗奈のお眼鏡にかなうなんて相当だな、紹介しなさいよ」
2人分の足音が聞こえタッパを抱えた麗奈と高身長で赤い髪をポニーテールにした女性が、ワクワクした様子で入ってきた。
今日は初対面だらけだ。
「初めましてーってあれ?女の子じゃない!ワクワクして損した!って君には失礼か。私は片山琥珀、この生活力皆無の親友の面倒を見ている」
「俺、春日悠太って言います、麗奈とは友達になったばかりです」
驚愕の表情をしている。
「えー!男の子!?嘘だ!?私より可愛いじゃないか!不公平だ!」
今度は怒り出した。麗奈とは真逆でコロコロ表情が変わる人だな。
『ねー、可愛いよね!そうだ、琥珀お化粧してあげたら?』
「確かに、化粧をしたら、ここからどう化けるのか気になるな!」
「それだけは勘弁してくれ!男としての尊厳が!」
『駄目なの?さっきなんでもしてくれるって(ToT)』
俺に出来ることなら、としか言った記憶はないが……。
「あー、麗奈を泣かせたーいけないんだー」
棒読みで言ってくるが、麗奈は無表情だ。それに微塵も涙など流してない。
なんだ?心で泣いているとでも言っているのか?ドラマみたいだな!
『……お願い(>人<;)』
俺って多分押しに弱いんだな、年上のお姉さん2人に好き勝手改造された。
『可愛い!好き!可愛い!(((o(*゜▽゜*)o)))♡』
「少し手を加えただけなのに…我ながらなんて、モンスターを生み出してしまったの…?一目惚れさせて、告白させたら付いてるなんて……」
人のことを悲しい化け物みたいに言うな。
鏡に写った自分の顔をマジマジと見る。
「……姉ちゃん」
そこには完璧美少女が写っていた。
これが、私?
なんてな。
「なるほど、その可愛さなら麗奈が拒否する事なく話せるのもわかる。男女と言うよりは、雰囲気似てるし姉妹って感じね」
それだけでは無いが、おおっぴらに言うことでは無いだろう。
『この子と私は事件の被害者なの』
「言うんかい!」
『……琥珀はお姉さんの親友だから、もう君の親友でしょ?(・・?)なら言っちゃった方がいいと思って、嫌だった?( ̄▽ ̄;)』
「別に嫌じゃねえけど、驚いただけだ」
その理論が通るなら俺には親友だらけになりそうだ。
「そうだぞ。麗奈の親友の私だから、少年、君は私の親友だ!」
俺が間違ってるのか?
「うっす、よろしくお願いします」
この人たちには反論は通じ無さそうなので黙って流されておこう。
雪兄の流されて良いってこう言うことか。
「まあ、でも、少年、君も、辛かったな」
「そうすっね…正直まだ前を向けていないと言うか、前を向きはじめというか…」
「それなら良い!麗奈のこともよろしくな!」
「うっす」
「そうだ!時に少年!家事スキルはどうだ?」
「人並みっす」