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105頁


丁度その時、リビングの扉が豪快に開かれて涼夏と麗奈と唯の三人が入ってきた。

なんとまあ間の悪い、この後に言われる事はわかってる。


「悠くん!!私と唯じゃ飽き足らず実のお姉ちゃんまで毒牙に掛けようとしてるの!?」

ほらな、やっぱそうなる。

そう言ったものをまったくと言って良いほど信用してはいないが、今日の占いがあったとしたら俺は大凶だ、間違いない。


「よく見なさい。涼夏、どう見ても慰めてるだけでしょう?」


唯……お前は良いやつだ、麗奈が声を出して話せない分冷静な視点で奴を宥められるのはお前だけだ、是非うちに住んでもらって俺の用心棒をして貰いたい。


いや、麗奈が悪いと言うわけではない、麗奈が文字を打ち込み終わる前に奴がズカズカと歩いて来て、俺の弁明も聞かず、俺を痛めつけるだけだ。


「そっか!菜月お姉ちゃんどうしたの?何か辛い事があったの?」


「悠太の顔を大拭きで拭いちゃったの、それで、私はダメなお姉ちゃんだなーって」


「なっちゃんは天然だからねっ、私も撫でちゃおう。おーよしよし」

涼夏が姉ちゃんの頭を撫で始めた。仲間外れ感を感じたのか麗奈も近寄って来て無言で姉ちゃんの頭を撫でる。まるで大型の動物をみんなで撫でているようだ。


「んーっ」

姉ちゃんは嬉しくなったのか、声にならない声を上げて喜んでる。

年下の高校生に慰められてるんだけど良いのかそれで。


「元気出たか?」

十数秒ほど撫でたところで手を止めて姉ちゃんに問い掛けた。

姉ちゃんも満更で無い様子で頷いたので、姉ちゃんから離れた。


そして、変人3人を見る。

雪兄は白い歯を光らせてウインクを、キザったらしい感じを出してるけどお前はただの勘違い野郎だからな、覚えとけ。


沙織さんは鼻を押さえてニヤニヤしている、手の隙間から赤い液体がタラタラと垂れているのは放っておこう。もうツッコミ気力すら失せた。


神田さんは俺に向かって後ろ姿を見せて中腰になっている、姉ちゃんと同じ事をしろと言いたいんだろうけど沙織さんに加担した謂わば共犯のアンタに誰がするか。中腰のまま居続けて腰を痛めとけ。


「唯。迎えはまだか?」

「もう外まで来てるわ。だから呼びに来たのだけどあまりにも和やかな雰囲気を出すから言いそびれていたわ」


「そうか、両親も明日も仕事だろうし、あまり待たせても悪いから行くか」

「私も行く。大事な唯ちゃんをお預かりしてるんだから、悠太の保護者として挨拶くらいしておかないとね」


「じゃあ俺も」「私も〜」「この流れなら私も」

「アンタらはここに居てくれ。頼むから」

外にまでついてこられて変な事をされたら溜まったもんじゃない。

3人についてこないように釘を刺してリビングを出た。


すぐに素が出て男だとバレてしまい、場合によっては唯が両親に怒られてしまう。

婚前の若い娘が男のいる家に泊まるなんて普通なら非常識だからな。


薄着のまま外に出ると、雨も降っていないにも関わらず、湿気を帯びた生温さが肌に纏わりつく。


髪が顔に張り付く鬱陶しさに髪を掻き上げながら門の方へ視線を向けた。


そのまま大人になった唯と言っても過言では無い綺麗な女性と、優しそうな出立ちでそれでいて頼りになりそうでダンディーな男性が特に何をしているわけでもないが、雰囲気で分かる。仲睦まじそうに立っていた。


「こんばんは、いつもうちの唯がお世話になっております」


女性が頭を下げ、続くようにして男性も頭を下げる。


「そんなかしこまらないでください。唯ちゃんが来てくれてうちも賑やかになって助かってます」

姉ちゃんが俺たちより一歩前に出て先に挨拶した。


「あら、これは随分と若くてお綺麗なお母さんだね」

男性が言うと、女性はキッと男性を睨みつけてほっぺたをつねり上げた。


「痛いぞ母さん。勿論母さんの方が綺麗に決まっているだろう。俺は母さん一筋25年。母さんしか見えて居ないぞ」




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