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101頁


最近自分の性別に自信がなくなってきた……俺の男要素と言えばもう、下半身に付いている自分の分身だけ。


今の俺にはこいつでさえ、余計なものがついているとさえ錯覚してしまう。

いや、俺が男だと思えば俺は男なんだ。俺は女じゃない。





甘いというよりは情熱的で、始めは一定の距離を保ったまま続けられていたが、いつの間にか涼夏を抱きしめて語っている。

「――――と言うことでこれからもよろしくね。愛しているわ」


長々と続けられた美鈴の演説は、多分途中何回も挟まれていたであろう愛している、から始まり、愛しているで終わった。


涼夏が笑顔でお礼を言うが、少し疲れの色が見え隠れしている。


原因の2割を美鈴として、残りは遊び疲れって事にしておこう。

姉ちゃんから名前を呼ばれる前に手を離して置くか、手を繋いでみんなの前に立つなんて厚顔無恥な事俺にはできない。


「もう大丈夫だ。手を離してくれ」


俺が言うと察してくれたのか2人も素直に手を離した、手のひらに残る暖かさが少し名残惜しい気もする。


「美鈴ちゃん、ありがとう!じゃあ次は唯ちゃん、お願いね」


唯の後ろについて涼夏の前へ歩いて行く。

「菜月さん、時間も遅くなってきたし涼夏も疲れてるでしょうから私達3人一緒に渡そうと思うのだけどよろしいかしら?」


「わっ!もうこんな時間!みんな明日もあるからお願いするねぇ」


俺を真ん中にして唯と麗奈が隣に立つと咳払いを一つ、声を合わせて「誕生日おめでとう」と言って涼夏にプレゼントを渡す。


三人分一斉に渡されたプレゼントを両手に抱えて涼夏がニコっと微笑んだ。


「ありがとう!えっへへ、開けるの楽しみだなぁ!特に悠くんは昔っからセンス無いからねーっ」

声を出して笑う涼夏に少し気恥ずかしくなった俺は、ポリポリと頬を掻いた。


「うっせえよ……なんだ、その、さっき言った通り俺はもうどこにも行かないから心配すんな」


「うん」


「これはお前と俺の約束だ。約束は守るためにあるんだぜ?」


『お姉さんの受け売りだね(o^^o)君が同じように捉えてくれるなら嬉しいよ』


「ふふっ、悠くんらしいけどまだ悠くんらしくないなーって思ったら麗奈さんの受け売りなんだねっ!でも……嬉しいよ」


今の俺にはまだ、自分の言葉だけで涼夏を安心させてやれる程傷は癒えていない。そう言いたいのだろう。

エスパータイプと言っても過言では無い幼馴染と同居人はいつでも俺の薄っぺらな心を見透かしてくる。


「……まぁ、かっこ悪いけど俺自身の言葉は、そのうちな」


それだけ告げるとさらに気恥ずかしさが押し寄せ、ぐっと口を継ぐんだ。

なんつうか、頰が熱い。姉ちゃんも涼夏もニヤニヤすんなよ、鬱陶しい。


「悠くんは……今も昔も。かっこいいよ、私はずっと悠くんの後ろ姿を見てきたけど悠くんはヒーローだよ」


「そうね。私も涼夏の言う通りだと思うわよ。悠太くんはあの時から私のヒーローね」


「えっ!?唯も悠くんに助けてもらったの!?初耳なんだけど!教えて教えて!」


なんだ唯のやつ涼夏に話していなかったのか。

「ふふっ、これは彼と私だけの思い出だから、涼夏には内緒よ。ちなみに再会したのは偶然。涼夏の幼馴染が悠太くんだっただけよ」

唯が意地悪そうに口を歪ませ口元で人差し指を立てた。


「むー!!!唯のいじわるぅ!」

友達である唯に秘密を作られた事を不満に感じたのか、涼夏は頬を膨らませた。

普段なら身振り手振りで不満を表現するが、両手にプレゼントを抱えている為じっと耐えている。


「そんなに怒らなくても良いじゃない。可愛い顔が台無しよ?」

「……だって私は唯に色々話したのに唯は教えてくれないんだもーん」


「まあまあ、2人とも。折角俺たちまとまったのに終わるのが遅くなるぞ?」


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