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100頁


じっと全てを見透かすような瞳で麗奈が俺の事を見ている。

全てを見透かす、というのは俺が思っただけであり、その瞳はいつも通り無機質で、喜怒哀楽の感情も見えない。


麗奈から目を逸らす。多分考えていることはもう読まれているのだろう。普段から俺の感情の変化に聡い麗奈の事だ、多分見抜いた上で今、頭の中で言葉を選んでいるのかもしれない。


左手でスマホを持ち、器用に片手で打ち込んでいく。


『3人で渡そっか(*゜▽゜*)お姉さんの文章、君に読み上げて貰って涼夏に伝えてもらいたいな』


「そうね。あの子の演説にも似た愛の告白で涼夏も疲弊するだろうし。私達は纏まって渡しましょ?」


あの子と呼ばれた美鈴はまだ涼夏に向かって愛をぶつけている。

ニコニコしながら聞いていた涼夏の表情にいつの間にか倦怠感というか、もうお腹いっぱいと言った感じに引き攣った笑いに変わっていた。


この演説を録音しておけば今度からあいつを食べ放題以外の外食に連れて行く時役立ちそうだな。


自分の知らないところで、涼夏の暴飲暴食を止めるのに一役かってくれるなんて。本人に言ったら怒られそうだから言わないけど。


こんなくだらない事を考えるまでに思考力が戻ってきたのはきっと、2人に握られた手のおかげだ。


「そうする」


ポツリと呟く。

楽しい時間は過ぎるのが早いとはよく言ったもので、壁掛け時計に表示された時刻は既に20時を指している。


「みんな帰るの遅くなっちまうからな。唯は今日どうするんだ?帰るなら送って行くけど」


唯はみんなとは逆方向に住んでいるから家に帰るとなると一人で帰ることになる。夜道の一人歩きは危険だから、送ってやるに越した事はない。


雪兄も飲んでるから運転は出来ないから俺が送って行くしかないよな。


それを言うと琥珀さんと美鈴も心配の範疇に入らないとおかしいのだが、あの2人は絡んだ方が後悔するスペックを持ってるから問題ない。


「今日は帰るわ。制服も持ってきていないし、でも送りは平気よ。両親が迎えにきてくれるの」


「親が迎えにきてくれるんなら安心だな」


「ええ、それに……いいえ、これはやめておくわ。両親もお世話になってる由奈さんに会いたがっているのだけど。会ってくれる?」


軽口を叩こうとして言い淀んだ。

唯にしては珍しく失言をしそうだったようでマズった、と口に手を当てて言葉を一旦止めた。


「いいけど……この格好のままか……」


自分から由奈役を買って出たんだから仕方ねえけど、騙した相手に合うのは気が引ける……。


「代役を立てようとしても無駄よ。麗奈さんは声が出せないし、由奈のハスキーな声、お母さん気に入っちゃったみたいで是非会いたがってたわ」


『諦めてそのまま会うしかないね(°▽°)お姉さんも一緒に居てあげるから大丈夫だよ(*'▽'*)』


「大丈夫に説得力がねえよ……。あの声作るの割と労力が掛かるんだよなぁ」


『君ならそのままでも可愛い声してるよ、お姉さん君の声好き\(//∇//)\』


俺は声まで女の子よりなのか……。確かに親父や、同世代の男と比べて声が高いって自覚はある。

そういや変声期になると、喉が痛くなるとかって聞いたこともあるけどそう言うのもなかったような。


「正直に答えてくれ……俺は、男の声をしてるよな……?」

顔も女、声も女となると、貧乳女子は、幼馴染にいるから、後はもう下半身を露出させるくらいでしか自分の性別を披露できねえ……。


「悠太くんの声はナチュラルに女の子よ。私はほら、助けてもらった時に知っていたけど、涼夏の前情報が無ければ私以外は騙されてだと思うわよ?」


『お姉さんはほら、言わなくてもわかるよね(*´∇`*)』

2人、どころか初対面の人間に女と間違われるのは誰にも共通して言える。単純に顔だけじゃなかったのか……ショックだ。

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