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その反応が可愛いからですね、はい。

麗奈や涼夏、唯を揶揄うとガチになり、美鈴を揶揄うとただの暴力事件に発展し、沙織さんを揶揄うと百倍返しに合う、神田さんは未知数、分類的には麗奈達と同じだと思う。


この中でいい反応を返してくれるのは、琥珀さんだけなのだ。


「琥珀さんが可愛いからっすよ」


「なっ!また揶揄ったな!!」

右手を勢いよく振り上げ、溜めを作っている。流石にこれを喰らったら俺は一溜りもないだろう。気絶している沙織さんの隣に並ぶのは嫌だ。


なので、俺にできることといったら条件反射で敢えて、間合いに入り、琥珀さんに飛び付いて拳を受けないようにする事だけだった。


「……お、おい、少年」

やってしまった、これはやってしまった、今この瞬間を凌ぎ切ったとしよう。

少しの前を置いて次の瞬間にはボッコボコにされると思い、目を閉じて衝撃に備える。



がいつまで経っても俺を地に沈める一撃はやってこない。

恐る恐る目を開けると耳まで真っ赤にした琥珀さんが弱々しくも険しい表情で俺から目を逸らしていた。


「つ、次は無いからな!」

「すみませんでした」

言い切るとそれっきりプイっと顔を背けてしまったので俺も謝って子供の飲み物を飲んだ。

甘いはずのジュースなのに味がしねえ。



そんなこんなで楽しい夕食も終盤に差し掛かった頃、鉄拳制裁を受けて顔を晴らした雪兄がリビングの奥にある部屋から、ケーキを出してきた。

ここに集まった人数で割っても一人分がそれなりにありそうなそのケーキの大きさだ。

白いクリームが塗られ、上にはこれでもかと言うほど色とりどりのフルーツが乗せられたそれは、今の俺には胸焼けがしそうだ。


ちくしょう、エビフライを食べすぎた、誕生日だから普通ケーキもあるよな。


欲張りすぎた自分を呪いつつ、元の席に戻り司会役の姉ちゃんとその傍に立つ涼夏に視線を向ける。

食えなかったらあいつに食ってもらおう。


「今日は私の為に集まってくれてありがとう!!!こんなに盛大に祝って貰うことなんて初めてで嬉しいよ……!!」


涼夏が屈託の無い笑顔で笑う。

感極まって泣いてしまいそうで、全く正反対な筈のこっちに戻ってきた時に見た泣きそうで作り笑いをする涼夏の表情がダブって見えた。


「今年は始まってもう半年になるけど、悠くんが帰ってきて、みんなと出会えて、毎日が、本当に、楽しくて」


言葉を切った。徐々に涼夏の瞳がうるうるとし始め、それでも今は泣かまいと必死に涙を堪えようと目元に力が入っている。


「こんな、幸せ、な毎日、がずっと、続い、てくれたら、いいなって、思ってる……ずずっごめんね、嬉しくて涙が出てきちゃった」

途切れ途切れで言う涼夏の瞳から大粒の涙が溢れて、柔らかそうなほっぺたを伝って床に落ちた。


「だから!もう居なくならないでね!悠くん!」

涙で濡れた顔をガッと腕で拭って力強さを感じさせる瞳で真っ直ぐに俺を見て言った。


名指しかよ、心配するな。

少なくとも、この居心地の良い環境から逃げ出す気は毛頭無い。

逃げ出したらバチが当たるって物だ。


「そうよ!!次やったらぶっ殺すわよ!」

「私も麗奈を泣かしたらぶっ殺すぞ少年!!」

今物騒な事を言ったのは美鈴と琥珀さんだ。

厄介保護者の、お陰で感動の場面が台無しだ。


「ぶっ殺すって貴方達ね……でも、自分だけで突っ走るようなら、私も容赦はしないわね?悠太くん、心に刻んで置いてくれると嬉しいわ」


「うん。お姉様からも悠太くんの事お願いって言われてるから。勝手な行動するなら。ぶっ殺しはしないけど。手足は覚悟して、ね?」


「そうだぞ!お前は周りを頼っても良いんだからな!俺を助けてくれたお前が悲しいと俺も悲しい!笑いたい時は一緒に笑いたい!」


俺、感謝を押し付けるつもりはないけど一応お前達を助けた筈なんだけど……純粋に好意をぶつけてくる海が本当にいい奴に見える。


『みんな涼夏ちゃんの誕生日会ってこと忘れてない?:(;゛゜'ω゜'):でもそうだね。お姉さんとの約束を破るようなら、お姉さんも君を許さないからね』




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