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「おし、じゃあこれにてホームルームは終わりだ。ガキども、今日も一日問題は起こさないように頼むぞー」

何事もなくホームルームは進み、終わらせた立花は二日酔いで引き立った顔のまま出て行った。

どうしてあれが、教師になれたのかわからないな。

そして今はホームルームと一限目の準備時間だ。

この次に起こる事はわかる、ホームルームから好奇の視線が数人からこちらに向いていたのを感じていた。

委員長、女子、男子の3人がこちらにやってきた。


「春日くん初めまして、クラス委員長の佐藤唯さとうゆいよ、一年間よろしくね」

「よ!俺は浅井海あさいうみだ!気軽に海って呼んでくれ、よろしくな!」

「宝井静香です、涼夏ちゃんの幼馴染だよね、よろしく」

「あぁ、よろしく」

それぞれが自己紹介をしてくれたので挨拶を返す。

「えへへ、みんな私の友達なんだー、悠くんも仲良くしてね!」

隣の涼夏も話に混ざる。

なるほど、だから話しかけてきたのか…そういえば佐々木はどうした?

チラッと後ろを振り返ると、遠くの方で出遅れて、入ってこれなかった佐々木が先程と変わらずこちらを睨んでいる。

「春日くん、ちょっと耳貸してくれないかしら」

その様子を見た委員長が耳打ちしてくる。

「春日くん、涼夏と仲がいい美鈴には気をつけなさい」

吐息が耳に当たってくすぐったい。

「えー!内緒話なのー!私にも教えてよー」

「涼夏は良いんだよ、こっちおいで、お菓子あるよ」

「わーい!静香ちゃん大好きー!」

「お、俺にもくれよー!」

涼夏も顔を近づけてくるが、事情を知っているのか宝井さんと海が涼夏を自席に連れて行ってくれた。

「あの子ね、涼夏の事、恋愛的な意味で好きなのよ」

なるほど、それなら幼馴染で距離が近い俺に敵意を向けてくるのは頷ける。


「事情はわかった、それなら俺はどうしたらいい?」

今度は俺が委員長に耳打ちをする。

「涼夏と3人でいる時は出来るだけ、涼夏を挟んで話すこと、手の届く範囲に入っちゃいけないわ。2人で対面した時は直ぐに逃げること、私と静香がいたら助けてあげるけど、いなかったら逃げなさい」


猛獣並みの扱いを受ける佐々木に、更に身の危険を感じた。

これ、涼夏が風邪で休む日があったら一日中生命の危機じゃねえか…。

それに俺ってどこに行っても女性に守られるのね。

まあ、昔から姉ちゃん達に女性には手をあげてはいけない、と教わっていたから助けてくれる分には助かるんだが…。

涼夏の友達だからせっかくなら険悪な仲にならずに穏便に済ます方法を考えたい。


「なんとか知り合いくらいの距離感になる方法はないか?」

「簡単では無いわね、それこそ認められるか、涼夏に対して恋愛感情が無いって伝えるくらいしか…」

それだと涼夏が傷つくから駄目だ。

何かいい方法はないかと思案していると、委員長が、何かを思い付いたように、パーにした手をポンっとグーにした手で叩いた。

その後で手をチョキにして2本の指を開いたり閉じたりしながら

「顔も可愛いのだから、いっそ性転換して見るとかどうかしら、殺られずに済むわよ」

下腹部がヒュンとした。

「むしろ涼夏と一緒にターゲットになりそうなんだが?」

「それも否めないわね、でも殺られるよりは愛でられる方がいいのではないかしら」

良いわけないだろ。

「俺は、男としての尊厳を守りたいです」

「なら、逃げ延びるしかないわね…そろそろ授業が始まるわ、また休み時間にでも話しましょ」

「あぁ、ありがとう」

お礼を言うと、委員長は後ろを振り返り手をヒラヒラとさせながら自席へと帰って行った。

それから程なくして授業の開始を知らせるチャイムがなり、宝井さんに貰ったお菓子を小さなお口いっぱいに頬張った涼夏が戻ってきた、両手いっぱいにお菓子を抱えて。

流石チビ怪獣、朝ごはん足りなかったのか?

「んぐっ、これ悠くんにもあげる!おいしーよ!」

と差し出された、お菓子はチョコレート、そんなに食べて授業中に鼻血を垂らしたりしないか心配だ。

「おう、ありがとう」


「えへへ、後で何のお話ししてたか、こっそり教えてね」


と耳打ちしてくる幼馴染の吐息に混ざるチョコレートの香りに生々しさを感じつつ、どうしたものかと悩む俺だった。

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