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86頁


おはじきの事には一切触れず空気を読まない発言をして、2人の間に割って入り、沙織さんの手からおはじきを取り上げた。


軽いながら確かに感じるズシっとした重さ……これはきっと本物。出来れば一生触りたくは無かったが仕方ない。


「悠太くん……そうですね!男の娘とわんちゃんの組み合わせなんて滅多にお目にかかれるものじゃありません!写真撮っておきましょう!」


「そうだよ!玩具で茶番なんかやってる場合じゃねえよ!俺の可愛い姿を写真に残してくれよ!ほら涼夏と麗奈も動物を抱っこして撮ろうぜ!!」

「へっ?玩具だったんですか……?」

「玩具に決まってるじゃないすか。この人達サバゲーが好きなんですよ。持ち歩くなって普段から注意してるんすけどねー」

「驚きましたよー!失礼ですがそちらの男性はとてもそっち系の人にしか見えないので!!」

飼育員さんが素っ頓狂な声を上げたので、適当な言い訳をして濁した。

悲しくも、子供に見える俺がしゃしゃり出たことで、飼育員さんは俺の言い分を信じてくれ、携帯をポケットに納めた。

飼育員さん、貴女が正解です。その人達は確かにその筋の人です。


「猫ちゃん連れて来たー!」

『私はウサギ(*゜▽゜*)』


「おう、じゃあ飼育員さん、申し訳ないっすけどカメラお願いしてもいいっすか?」

腕に力を入れて立ち上がろうとするものの、腰が少し浮いただけで再び、尻がぺたんと落ちた。

「はいっ……っとと……ごめんなさい立ち上がれません」


完全に腰を抜かしたか、命のやり取りがあった。と思っていたのだから無理もない。

俺が悪いわけじゃないが、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


「涼夏、飼育員さんを立たせて上げてくれ」

「わかったよ!猫ちゃん。ちょっと待っててねっ」


涼夏が猫を柵に戻してからお姉さんを肩を抱えて立たせた。


「あそこの椅子までお願いします」


「わかりましたーっ……うちの人達がごめんなさいっ」

今日。最終日という、動物達と残りの時間をしみじみ過ごしたかったであろう飼育員さん、本当にすみませんでした。

涼夏がお姉さんを椅子に座らせて戻ってきた。


「伏見、写真をお願いします〜」


まったくもって悪びれた様子のない困ったお姉さんが付き人に指示を出して自分のスマホを持たせた。

この人は多分。一回捕まった方が本人の為になるんじゃないか?少なくとも公共の場でおはじきを取り出すことは無くなると思う。


「わかりやした……お嬢」


沙織さんのスマホを受け取った伏見さんがあからさまに肩を落とすとトボトボと俺たちと距離をとってカメラを構えた。


写りたかったのか。なら俺と変わって欲しいものだ、きっと今日撮った写真は新たな黒歴史として俺の青春の1ページに残される事だろう。

言い出しっぺなので変わることは出来ないが。


腕に抱えた犬を見る。まあ、こんな可愛い犬と写真撮るのは悪くないか。涼夏も誕生日だし、写真の一枚くらいは我慢しよう。

「それじゃあ撮ります。お嬢は動物は抱えなくていいんで?」

伏見さんが沙織さんに問いかけた。

沙織さんが抱えて写真を撮るにふさわしい生き物……ペルシャ猫?ジャパニーズマフィア的に。あとはドーベルマンなんかも似合いそうだ。


「私の目の前には可愛い生き物が3人もいますからねえ〜」

そう言って俺達3人をまとめて抱きしめた。

「たしかに。お嬢。今良い笑顔してますよ」


今?引っかかる物言いだ。

「うるさいですよ〜。早く撮りなさい。始末しますよ〜」


「お嬢、伏見怖いです。それじゃあ撮りますよ、ハイ、チーズ」

パシャリ、と無機質な音が響き、撮影完了。

飼育員さんにお礼と謝罪を述べてその場を後にした。

最近行く先々で謝罪してる気がするのはあながち間違いじゃないと思う。





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