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――――――――――――――――――――



園内に設置された自販機の前で、歩き回った事に寄って得られた心地の良い疲労感に体を苛まれつつ、自動販売機で買ったジュースに口をつける。


結果として、楽しめたんじゃないかと思う。うん

キリンを見てはしゃぐ涼夏は可愛かったし、無表情な顔で瞳だけ輝かせつつ、動物を見る麗奈も新鮮だった。

俺自身も日本では普段お目にかかれないクマや狼といった動物を見てはしゃぎすぎたまである。


願うならばもう一度来たい。今度はみんなで、と願っても叶わないんだよな。


「すみませんね悠太くん、麗奈さん」

涼夏が手洗いに行った隙を見計らっていたのだろう、沙織さんが神妙な顔で謝ってきた。

「何か謝るような事あったか?」

『うん、お姉さんも楽しかったけど(*⁰▿⁰*)』


「いえ、涼夏ちゃんに楽しんでもらいたかったのに、私の思い出の場所に連れてきてしまって〜」


それこそ気にすることではないと思う、一時はどうなるものかと思ったが、あいつも結果的に見れば楽しそうにしてたので、終わりよければ全て良しだ。


「気にしなくていい。むしろ昨日の夜連絡していきなり呼んで、いきなり行き先を振ったのにここまで連れてきて貰ってありがたい」


『涼夏ちゃんも楽しそうにしてたし、お姉さんも楽しかった(о´∀`о)』

涼夏は気を使うのが上手いが、楽しく無い時は顔に出やすい、さっきの動物の営みを見た時みたいにあからさまな笑顔を貼っつけるか無表情になる。

だから、麗奈から見ても楽しそうだったならば、間違い無い。


「麗奈がそう言うなら間違いないな、と言う事だ沙織さん。俺も、なんだその、楽しかった……ぞ」


しどろもどろになっちまった。

俺たちがそういうと、山本さんはホッと息を吐き出し、胸に手を当てて安堵した表情を浮かべた。


「私も君達とここに来れてよかったです〜良い思い出になりました」

言いながら野暮ったい眼鏡を外した。その先に現れたのはいつもの沙織さんには似つかわしくない満面の笑みは、綺麗な顔と、アンバランスなギャップがあって非常に良い。


『顔が赤くなってる。やっぱり眼鏡がいいの?』


俺は眼鏡フェチというやつなのだろうか、でも誰だってこんな美人に笑みを浮かべられたら照れてしまうはずだ。


眼鏡をかけた姉ちゃん達を想像してみる。うん、俺は眼鏡フェチで良いや。


「眼鏡もいい、それだけだ。決して眼鏡だけがいいわけじゃない」

何の言い訳だろうか、俺にもわからない。

『年上の綺麗なお姉さんで、笑顔が素敵な人がいいの?』


「年上の綺麗なお姉さんも、笑顔が素敵な人もいい。それだけだ」

『敬語のお姉さんがいいんですか?』

恋愛に興味無さそうなのに、今日はやけに食いついてくるな。

「敬語のお姉さんもいい。それだけだ」



「あの〜2人でそんなに私の事を褒めてくれるのは嬉しいんですけど……少し恥ずかしいです〜」


麗奈との茶番じみたやり取りを続けていると、目の前で自分の事を褒めちぎられた沙織さんがくねくねと体を揺らして恥ずかしさを表現していた。


「………………っ」

不覚だ、不覚を取った……!

耳まで熱いぞ、何を載せられているんだ俺は。

麗奈の顔を見ると少しだけ上を向いてドヤ顔を放っている、無表情なのが俺の羞恥心をさらに加速させた。


そしてスマホを器用に手のひらと中指薬指小指で持ったまま、麗奈の定番となった人差し指で口角を押し上げて、俺に見せつけるようにして、笑顔の練習。


『悠太くん。私の笑顔はどうですか?』


その場に沈黙が走る、三者三様、笑顔(作り笑い)の麗奈、グラサンで隠れてはいるが眉が上がっていてニヤつき顔の伏見さん、今にも昇天しそうな感じに恍惚とした表情を浮かべる沙織さん。


この追い詰められた状況で俺にできた事は

「可愛いな、流石俺の娘だ。うんうん」

父親面をして麗奈の頭を撫でる事だけだった。


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