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78頁


このまま動物園に入場しようものなら日曜休日のファミリーやカップルで溢れ返っている動物園を阿鼻叫喚の地獄に染め上げる自信がある。

つまり吐く、絶対吐く。

動物園に着くなり我先にと車を降りて駐車場の地面に手をつく。

「俺に構わず……先に行け」

『ここは私達に任せ……』

「…………ぅぷっ」

文字を書きながら女性が外でしてはいけない顔になっている、そりゃ気持ち悪い中文字なんて打ったらそうもなるだろ。


「そんなっ悠くん達を置いて先にはいけないよ……!生きて動物園に行くんだよ」


3人で死亡フラグを着実に重ねていく。できるなら置いて行って欲しいのは本当だ。

このまま寝そべって地面と一体化したい……。

て言うか、涼夏はなんで平然としていられるのか。


「伏見と涼夏ちゃんを2人にすると誘拐にしか見えないですし〜2人をここに残しておいてナンパをされてもいけませんし〜、少し落ち着くまで待ちましょうか〜」



「悠太さん。背中摩りやしょうか」

「いえ……大丈夫っす」

今日……この人やけに距離が近いな。


「伏見。水を買ってきてあげてください」

「わかりやしたお嬢」


助かります。水を飲めば少しは落ち着くだろう。

「悠くん麗奈さん大丈夫?」


涼夏が心配そうに俺の顔を覗き込み話しかけてきた。

いやはや、折角涼夏の誕生日に出かけてきたのに申し訳が立たないけど、本人が忘れているのが救いだ。


「大丈夫だ……もうすぐ落ち着くと思う」


「水買ってきやした!悠太さん、麗奈さんどうぞ!」

流石伏見さん、仕事が早い。

大きな手でオモチャを摘むようにしてペットボトルのキャップを外すと俺に水を手渡してくれたので、それを喉を鳴らして一気に飲み下す。

「あーっ、生き返ったー!」

水というのは偉大な物だ、喉まで込み上がってきていたものが引っ込んでいった。

まだ多少の気持ち悪さはあるもののこれなら動物園を回っても平気そうだ。

「………………んくっぷはっ」

麗奈も同様の様子で、少しばかり顔色が戻っている。


「麗奈、行けそうか?」

『うん(*゜▽゜*)』

顔文字だけで見ると元気に見えるのは不思議だ。

「2人とも本当に大丈夫ですか〜?もしあれなら無理せずもう少し休んでもいいんですよ〜」

『大丈夫(*゜▽゜*)時間は有限だよ!いこっ』


麗奈の言う通り、夕方にはみんなが準備を終えている筈なので戻らないといけないからな。

時刻は10時手前。これ以上ここで時間を無駄にするのは惜しい。


「行こうぜ。ライオンが俺を待ってる」


幼馴染と同じくらい動物園を楽しみにしているのは、内緒だ。

「調子悪くなったらすぐに言ってくださいね〜」


入口に向け歩き出した俺に沙織さんが声を穏やかに言った。


駐車場を抜け、そのまた長い通路を抜けるとデカいゲートが見えてきた。

ゲートにはシンプルに動物園とだけ書かれている、普通地名だったりが入るだろうに、大丈夫か?この動物園。

ゲートはそれぞれ4つに別れていて4組までなら同時に対応できるようだが……日曜日だというのに行列はない。

そもそもゲートが4つあるにも関わらず受付の係員も1人おっさんが立っているだけだ。

駐車場もがら空きだったもんな……。



「当動物園にお越しいただきありがとうございます。高校生から大人1人800円、中学生は600円の入場料をいただいてます」


このおっさん、今俺を見て中学生って言いやがったな。


「じゃあ大人が5人で4000円ですね」

「高校生!?そりゃ失礼した!ハッハッハ!小さくて可愛らしいお嬢ちゃんだから、おじさんてっきり中学生かと思ったよ!」

人を見た目で判断する不躾なおっさんに出来るだけ不機嫌に、吐き捨てるように言ってやると、フランクな口調で慌てて訂正してきたものの更に地雷を踏んできやがった。











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