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「約束してないのに当日誘いに来て、私に予定があったらどうしてたんですかー?」

車を走らせて数分、和気藹々と談笑していた涼夏ぎ、ふと疑問に思ったのか、至極当然の事を聞いてきた。

これの言い訳も、沙織さんに任せておけばいいだろ。


「悠太くんに伝えてあったんですけどねぇ〜聞いてなかったですか?」

さっきのしっぺ返しだ、ニヒルな笑みを浮かべて俺を見ている。

ちくしょう、涼夏も疑いの眼差しを向けてきやがる。


「悠くん?ちゃんと言わないとダメだよ?」

俺の肩に手を置くと、子供を諭す母親みたいに言った。

怒られなかっただけマシだが、こいつに子供扱いをされるのだけは身長を弄られるのと同じくらい納得いかない。


「悪かった。気をつける」

それでも、折角沙織さんが機転を利かせて、涼夏なんの疑いも持たせる事なく連れ出せたんだ。

耐えろ俺。耐え忍ぶのだ。


「わかったならよし!」


「そうだ、言わなかったついでにもう一つ言っておくことがあるんだけどいいか?」


「んんん、どしたの?」

「内藤のこの騒動が終わったらさ……俺、蓮さんに仕事を教えて貰えないか頼んでみようと思う」


唐突な発言に全員の視線が俺に集まる、まるで信じられないものを見る感じだ。

いや伏見さんは危ないから前見て運転して!前方からトラックが迫ってきている。

「伏見さん前!前!右寄ってってますよ!」

「あ、ああ、すみません若頭!」

伏見さんがハンドルを左に切り替えし、なんとか正面衝突は免れた。

あぶねえ……血の気が引いたぞ……。

「なんでいきなり死亡フラグを立てるような言い回しで言うのさ!みんなびっくりしちゃったじゃん!」


「死亡フラグでは……いや、死亡フラグか。蓮さんだもんな」

普段おっとりしていても怒ると元ヤンが出てくるもんな。

あまりに失敗を重ねたら見せしめとして会社の入り口に全裸で磔にされそうだ。


「蓮さんてそんなに怖いんですか〜?あんなに優しいのに」

まごう事なく貴女同じタイプです。

「蓮さんがキレると誰も手がつけらんなくなる。紅蓮って暴走族聞いたことない?蓮さんはそこの初代総長だったらしいんだ……」

暴走族の数自体が減少している今、この手の話しは、どこの誰さん、と言っても通じない事の方が多い。


「紅蓮!?森でクマに襲われそうな子供を助けようとして熊と素手でタイマン張ったって伝説の!!??」


そう話題に出すと必ずと言って良いほど出てくるのが、こう言った気狂いじみた伝説だ。

素手で熊とタイマンだの、一人で暴走族を潰して回っただの、バイクで転倒した仲間を助ける為にダンプを体で止めただの。

口に出して説明する方の気が触れてないか心配されるレベル。


「それはそれは逞しいお母様をお持ちで……本当に人間ですか?」


同類と評されてもおかしくない人間は、この馬鹿げた御伽話を素直に受け入れたようだ。

涼夏はしらーっと目線を窓の外に向けて、「たはーっ」とわざとらしく息を吐いて、口を開いた。


「お母さんが人間じゃなかったら私も人間じゃないですよっ失礼な!」


俺を担いで大人を追いかけて、尚且つ追いついてしまうこいつを人間と呼んでいいのか、怪しいところではある。

そもそも、沙織さんと美鈴と琥珀さんは涼夏同様、人間か疑わしい……だってみんな俺より力が強いんだもん……。


『みんな凄いねっ、私も強くならないと(๑>◡<๑)』

どうしてそうなった、麗奈にまで戦闘民族になられたら俺の立つ瀬がなくなるじゃねえか。


「お前はそのままで居てくれ」

自分の欲望の赴くがまま、暴走する麗奈に無理矢理脱がされる可哀想な俺の姿が目に浮かぶよ。


『君は今のままの私がいいの?』

「ああ、そもそも一般人なんだから強くなる必要がないだろ」

コクリと麗奈が頷く。日本に住んでる限り、よっぽどのことが無ければ肉体を鍛え上げたり技を磨いたりなんてしなくても安全に暮らせる。

……筈なのだが、この街の治安はどうなってるんだ?行く先々でトラブルが起こっている気がする。


「そうですよーっ、麗奈さんと私は悠くんが守ってくれますから!ねーっ」


「おう。お前ら2人は俺が全力で守ってやるよ」


「私も何かあったら守ってくれますか〜?」


貴女には屈強な男と言っても過言ではない伏見さんと言う付き人がいるでしょう。

冗談で言っている顔ではなさそうだ、どんなに強くても女性は守られたいって、葉月姉ちゃんも言ってたから、沙織さんもきっとそうなのだろう、きっと、恐らく。

「まあ、沙織さんが勝てないってなると俺でも怪しいけど。なんとかするよ」


「ふふっ、期待してますね〜」


「お嬢、着きました」

話しを続けている間にファミレスへと到着した。

朝のこの時間帯は駐車場の車も空いているので店内も混んではなさそう。


いち早く歩いて行った伏見さんが店の押し扉を開け、5人で店内に入ると、予想通り店内はガラガラ。

目で見える範囲で、老夫婦がちらほらと見える程度、これなら静かに飯が食えそうだ。

「いらっしゃいませっ!、お客様何名様ですか!?」

8時前の早朝から元気の良い店員さんだ。

「5人です」


「こちらへどうぞー」

伏見さんが人数を伝え店員さんの案内に従って席に向かった……のだが、誰も席につかない。なんだこれ。


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