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キス、しちまったんだよな……俺達。頬にキスされた事はあれど、唇なんて、いや姉ちゃん達にされたか。

でもあれは幼少期だからノーカウントだ。


「寝ぼけ様に俺の唇を奪うとはいい度胸だ」


「ご、ごめんねっ。悠くんが私のこと可愛いっていうから夢だと思って……!!!」


「俺だって可愛いと思ったら可愛いって言うぞ」

「私にそんなこと言ってくれた事ないじゃん!」


「そうか?」

「そうだよっ」

普段から思ってるから言わなかったのかもしれない。


「お前はいつも可愛いよ」

「んんーっ」

寝癖だらけの髪を梳かすように撫でてやると、ご機嫌な声を上げ、気持ちよさそうに頭を擦り寄せてきた。

ほら、こいつは猫だ。


「何で起こしにきてくれたの?いつもなら私が起こしに行く側なのに」

その質問に対する答えは考えていなかった……。どうする?


「んー、あー、沙織さんがうちに来てな。早朝から。お前と麗奈と俺の4人で出かけようってさ」

困った時の沙織さん頼り、いいよな、あの人なら上手く誤魔化してくれるだろ。


「そうなの?じゃあみんなもう待ってる?」

「どうだろ、麗奈がまだ着替えてるかも」

涼夏の頭から手を離して窓へと近づき、カーテンを開ける。

沙織さんと麗奈が丁度家から出てきたみたいだ。

「2人とも今丁度出てきたみたいだから、お前も着替えたら出てきてくれ」

「うん!わかったよー!楽しみだなっ何するんだろ!」

「さあ、俺も聞かされてないんだ」

何をする、何処へ行くとも決めてない、沙織さんから何か提案があったわけではないから嘘は言っていない。


男の俺がいるのにパジャマのボタンを外し始めた無防備な幼馴染を置いて、俺は部屋を後にした。


「あのさぁ、俺男だよ?目の前でいきなり脱ぎ始めるか?普通」

扉越しに涼夏に話しかける。

「んー、今更じゃない?昔はよくなっちゃんと葉月ちゃんと4人でお風呂に入ったよねー」


「小学生の頃の話だろうが!」

「でも、悠くんの身長は変わってないよねっ」

「それを言ったらお前の胸だって成長してねえじゃねえか」


それはそれは可哀想なくらいに。

「ひどいなー……お母さんはあんなおっきいのに、不平等だよねー。もしかして私はお母さんの本当の子供じゃ……」

およよ。とわざとらしい泣き真似が扉越しに聞こえてくる、安心しろ。

胸は知らんがお前のあざとさは確実に蓮さん譲りだ、後怪力も、笑った顔もそっくりだぞ。

「確かに、姉ちゃんが蓮さんの娘って言われた方が説得力あるかもな」

「あー、悠くんひどーい。女性の価値は胸じゃないんだよ?」

「確かに。じゃあ、人間性も胸も、顔だっていいうちの姉ちゃんは最強だな」

「久しぶりに悠くんのシスコン発言を聞いた気がするよ。確かになっちゃんと葉月ちゃんはレベルが高すぎるけどさぁっ!私にだって良いところはあると思います!」


「お前に悪いところなんてないだろ」


「悠くんはズルいよ。落として上げるなんて高等テクニックいつ覚えたの?涼夏ちゃんの気持ち昂っちゃうよ?」


「思ったことを素直に言っただけだ。お前ほど俺を上手くフォローしてくれる奴はいない。本当できた幼馴染だよ」

いつ何時だって、涼夏と麗奈だけは俺を裏切らない。そんな安心感がある。

他の奴らも裏切ったりしないことは分かってるけど、この2人は特別だ。


「そりゃあまあ、悠くんのしでかしそうな事なんて長年付き合いのある私には簡単にわかっちゃうからねっ」

なるほど、俺の事を理解してくれている事からくる安心感か。

だが、かと言ってそれに甘えすぎてはいけない。


「なんだそりゃ、俺はいつからサトラレになったんだか」


「ふふんっ麗奈さんにも言われたんでしょ。麗奈さんもよく悠くんの事見てるからねっ」


「麗奈はどこにでも着いてくるからな」

「約束だもんね。ねえ悠くん」

「なんだー?」

「私とも約束してくれる?」

扉越しに聞こえる涼夏の声は不安を孕んでいる気がする。

「おう、お前の頼みなら何でも言え、約束してやる」


「えっとね、もういなくならないでね?私こう見えて弱い所あるから。次はきっとね、耐えきれない」


「ばっか、もう居なくなるわけねえだろ?やっとここに帰ってきたんだからよ」


どうして突然そんなことを言い出したのか、扉越しの涼夏の声では何を考えているかまではわからない。

「それならいいよっ。私は安心です!それじゃーいこっか!」


勢いよく扉が開いて涼夏が部屋から飛び出してきた。

びっくりした、もう少し静かに扉を開けて貰えないものか。


「心臓に悪いから扉は優しく開けような。俺の心臓がもたねえよ」

「はい!次回から前向きに検討します!2人とも待ってるんだよね?早く行こっ」


曖昧な事を言う日本の政治家みたいなことを言って涼夏が俺の手を引っ張って歩き出す。

「お前、それ治す気がないやつだからな」

「細かいことは気にしなーい!ほら早くー!」

今日も元気いっぱいだな。俺の幼馴染は。


先程注意したばかりなのに、玄関ドアをバン!と音を立てて開け放つ。俺の話何もわかってないな、こいつは。


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