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山本さんの掛け声によって始まった二大コンビのメイク。

時間がないからかおふざけ無しでテキパキと進んでいくので、俺は巨匠の成すがまま受け入れる。



そして仕上がったのは、定番となりつつある完璧美少女由奈ちゃん。

今日は髪をハーフアップにされていて、より生前の葉月姉ちゃんに近い。


「おお〜、久しぶりの悠太くんの女装……可愛いですねええ!!!!」

ガッと身を乗り出して叫ぶ山本さんに、過去の妄想暴走モードの数々を思い出して身の危険を感じて身構える。

「どうしてそんな怯えた表情してるんですか〜」


『沙織さんがいつも悠太に飛びつくからだよ(^◇^;)』

「やだな〜一回も成功した事ないじゃないですか〜いつも麗奈ちゃんに叩き落とされますし。私も学びますよ〜」


この人の口から学びと言う言葉が出るとは、絶句だ。

「あ、悠太くん失礼なこと考えてますね〜?やっぱり、もいじゃいましょうか」


「ひぃっ!」

スーッと沙織さんの手が斜め下に伸びてきたので、慌てて下腹部を手で隠し、後ずさるが、追うように沙織さんもついて来て、部屋の隅っこへと確実に追い込まれた。

「も、もう行った方がいいんじゃない?涼夏が起きてきちゃうぞ?」

琥珀さんが俺たちの間に割り込んで入った。

「このやり取りもう何回目ですかね〜。いい加減行きますか」


沙織さんの手が引っ込んだのを見て、ホッと胸を撫で下ろす。今度こそ本当にもがれるかと思った……。

「そうだな。俺が涼夏を起こしてくるから、麗奈着替えてこいよ」

いつも部屋着として着ているTシャツ、ハーフパンツ姿の麗奈を指差した。

俺の服装を気にしている場合か、沙織さんは落ち着いた感じの服装で今日も決まっているし、琥珀さんは買い出し班なので関係ないが、動きやすそうで、それでいてオシャレに着飾っている。


「麗奈ちゃんの場合そのまま外に出ても華がありそうなのが、同じ女性として悔しいですけどね〜」


麗奈がピースサインで勝ち誇った。ムカつくけど沙織さんの言う通りだ、でもこの人だって負けていない。

普段はヤボったいメガネで隠れていて見えない綺麗な顔を俺は知っている。

というか、俺の周りの女性は姉ちゃんを筆頭に基本的に顔面偏差値が高い。


「沙織さんも充分綺麗っすよ。そんじゃ、行ってくる」


『お姉さんは?お姉さんは?』

「少年、私の顔はどうだ?」


部屋を出ようとしたところを両サイドから取り押さえられた。

「2人も綺麗だな、琥珀さんは少し可愛いが入るけど」

簡素に告げると2人の手が離れたので、遠慮なく涼夏を起こしに行かせてもらうとしよう。

これ以上放っておくとあいつが先に起きてしまう。


「そうだ、少年」

琥珀さんから声が掛かったので振り向く。

「これどうする?」

琥珀さんが見せて来たのはひしゃげて曲がったドアノブ。


「あげます」

とだけ言って部屋を後にした。

メイクのお礼だ、つーかそんなもんいらん。


そんなわけでやってきたお隣さんちの2階、この扉の先で幼馴染の女の子が寝ている、だからといって胸が高まるわけでも、悪い考えが浮かぶわけでもない。

昔からの付き合いで起こし起こされは良くあった、今さらこんなことで躊躇したり戸惑ったりする仲でもない。


なので、遠慮なく扉を開けて中に入ると、窓際に置かれたシングルベッドの上で、腹を出して寝入っている幼馴染と対面した。

捲れ上がったパジャマが、限界まで捲り上がっていて胸まで見えてしまいそうだ、ゴクリ。思わず固唾を飲んでしまった。


流石にこれは予想外。成長していないとは言え、とは言えこいつは女の子。

女の子の胸に興味が無い男子など居ないのだ。

でもどうせ見るなら、いや、やめておこう。


起きた時に誤解のないように、パジャマの捲れを直してやり、涼夏の肩を叩くと、あどけなさの残る幼馴染の目元がピクリと反応した。


「起きろ。戦争の時間だぞ」


「んんっ」

寝覚めが早い方だと思っていたが、まだ起きる気配はない。

完全なる言い損だ、何が戦争の時間だ、恥ずかしくなってきたぞ。


「おーい涼夏起きろ」

釈然としない俺は八つ当たり気味に肩を揺すった。


「んんん……?ゆぅ、くん?」

眠りから覚め、薄目を開けて俺を認識したようだ。

ぼーっと俺の顔を見つめて瞬きを続けている。

「おはよう涼夏、遊びに行くぞ」


小学生以来の誘い方だ、懐かしさすら感じるよ。

「えへへ、ゆうくんだぁ」

まだ寝ぼけているのか、ふにゃりと整った顔を緩めて涼夏は微笑んだ。

「可愛いな」

俺が呟くと涼夏が俺を抱き寄せた。

そして涼夏の顔が近づいてきたかと思うと、俺の唇に、自分の唇を重ねた。なにすんだこいつ。

「お、おい!なにすんだ」

「ふぇ?……夢じゃないの?」


「夢なわけあるか!現実だ!」

寝ぼけたままの幼馴染に現実を突きつけると、涼夏の大きな目がぱちくりと瞬きを繰り返し始め、柔らかそうなほっぺたが真っ赤に染まった。


「にゃ!あ!にゃ!」

涼夏ちゃんご乱心。落ち着いたふりをしているが俺の心臓もバクバクと8ビートのような速さで鼓動を刻んでいる。



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― 新着の感想 ―
[一言] 読みに来るの久しぶりだから、せっかくなので涼夏ちゃん起こしに来るところから見直していくことにしたよおおおっ!! 悠太くんのこの、ぱっと綺麗って言えるのほんと好き(*´艸`) そしてちゅーが、…
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