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「あぁ、しないよ」

「偉いっ、流石私の弟だね」

 隣に座る姉ちゃんが頭を撫でてきた。

 昨日に引き続き、子供扱いをするのはやめて欲しい。


 姉ちゃんとの間には四年間の空白があるから仕方ないか。


「そろそろ着替えてきたら?私の部屋使っていいから」

 涼夏がちょっと不貞腐れ気味に言ってくる。

 そうだな、学校に行くならそろそろ着替えて出発しないと間に合わなくなる。


 席から立ち上がりリビングを出ようと歩き出そうとする。その前に

「ありがとう涼夏、部屋借りるな」

「ふにゃあ!」

 涼夏の頭を撫でて置いた。


 一階のリビングを挟んで反対側にある、涼夏の部屋に入ると、懐かしさを感じると共に、昨日抱きしめられた時にかおってきた、涼夏の甘い匂いを思い出す。

あいつ胸無いけど、抱きしめられた時、良い匂いしたし、柔らかかったな……。

いかんいかん、無心だ、無心にならねば。

と思いながらもベットの上に置いてある物に気がついた。

学校の女生徒用の制服だ。


ごくりと息を呑む。

変態的な意味では決してない。断じてそうではない。これを着ると葉月姉ちゃんに似るんだよな……。


魔がさしたんだ。

姿見の前に立ち、手に取った上着を体の前に当てる。

おお、葉月姉ちゃんだ。


がチャリと人生の終わりを告げる音が聞こえ、バン!と冥界の扉が開け放たれた。


「悠くーん!お母さんがネクタイわす…お邪魔しましたー!」


涼夏は信じられない物を見たように、目をぱちくりさせた。

そしてネクタイを投げつけると、勢いよく扉を閉めて去って行った…

あああ、いや、匂いを嗅いでいたとかではないし、説明すればわかってくれるだろう。

そう思いながらも涙が溢れそうな俺だった……。



言い訳、考えておこう。


――――――――


 着替えを終わらせ、リビングに戻る。

 リビングでは涼夏は赤面した顔を俯かせて立っていた。

 カバンを持っている。俺を待って登校しようとしていたのだろう。



「涼夏が顔真っ赤にして戻ってきたけど、何かしたの?」

 知っていたら確実にいじってくるであろう姉に、黙っていてくれた事を感謝しつつも、せっかく黙っていてくれたんだ。


「裸を見られただけだ……」


 平然と嘘をつく、これなら不可抗力で通るだろ。

「えー!涼夏だけずるい!」

 どうしてそうなった?

「私だって弟の成長確認してないのに!最後に一緒にお風呂入った時の四年前で止まっているのに!」


 普通はそうだ、いや、むしろ12歳で姉とお風呂(強制)はおかしい。


「決めました!今日は一緒にお風呂に入るからね!約束だからね!」


 などと馬鹿な事を言う姉には付き合いきれん。

「おい、涼夏、馬鹿姉はほっといてもう行こうぜ、遅刻しちまう、蓮さん行ってきます」


「ふええ!」


 赤面して俯いたまま涼夏の手を握った。涼夏は焦った声をあげたが構わずリビングを出る。


「まだ話は終わってないよ!ちゃんと約束しなさーい!」

「行ってらっしゃい、車に気をつけてね」

わーすか騒いでる姉ちゃんとは対照的に、優しく送り出してくれた蓮さんに感謝しながら家を出た。





「ゆ、悠くん、手…」

「わ、わりい」

 家から握りっぱなしだった手を慌てて離す。

 今はまだ出会っていないが、同じ高校の奴に見られたら勘違いされちまうもんな。

 まあ、こいつも女の子って事だ。昔は俺が手を引かれて連れ回されてたのに。


「ううん、謝ることないよ…」


 家を出てからも様子のおかしな涼夏は、続けてボソボソと聞こえないくらいの声量で何かを呟いている。

「後ね、さっきの可愛かったよ…」

違う、そうじゃない。

「あれは違う!姉ちゃんに似てるって言われて魔がさしたんだ!」

「そっか…女の子になりたかった訳じゃないんだね…?」

「着ることすら拒否してただろうが!」

「あははー!安心したよ!悠×雪が成立しちゃうんじゃないかって不安だったんだー!」


 山本さんか!?山本さんが悪いのか!!

 出会って一日しか経ってないのに俺も涼夏も毒されたもんだ……。


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